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7th Oct 2019 from TwitLonger

刑法総論/ 過失(10ヶ)


◇明文なき過失犯処罰。結果的加重犯における重い結果
刑法判例24/ 明文なき過失犯処罰につき,関連法令や立法趣旨等からその意図が看守できる場合,判例は,法規の実効性確保等の観点から肯定。/責任主義から,結果的加重犯の成立を認めるのに,基本犯と重い結果との間の因果関係だけでなく,重い結果の発生に過失(予見可能性)が必要かにつき,判例は因果関係あれば足るする。
[『判例プラクティス 刑法Ⅰ』112 頁(順に,最決昭 57・4・2,最判昭 32・2・26)参照]

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◇過失犯の構造,構成要件要素(構成要件該当性),責任要素(有責性)
刑法85/ 783/ #過失は不注意_すなわち注意義務違反。過失犯の注意義務は,結果予見義務と結果回避義務とからなる。#結果予見義務違反は予見可能性あることが前提,故意犯の故意に対応
(責任要素)。過失犯の構成要件該当性は_結果回避義務違反および結果回避可能性を前提とする(故意犯の構成要件該当性もそれらが前提)。
[山口『刑法総論』3 版 246 頁参照。
山口説,旧過失論の立場からも,過失犯の構成要件該当性について検討を要する固有の問題,すなわち,結果回避義務違反の点(この点で,危険の引受け,ないし,許された危険の法理が問題となるようである)が問題となる。この結果回避義務は,故意犯の構成要件該当性を認めるために同様に必要な前提要件といえるが,過失犯の構成要件該当性の認定と異なり,許された危険の法理
は論じられない。]

◇過失犯の成立要件
[・過失犯の構成要件要素(TB): 実質的な危険があり,それが許された危険でなく,かつ結果回避可能性があることを前提とする,結果回避義務違反(実行行為),結果の発生,回避義務違反行為と結果との間の因果関係。
・過失犯の責任要素(S):結果予見義務違反=不注意=過失。
(前提たる予見可能性は,原則,高度な予見可能性を要するが,例外的にある程度まで緩やかなものまで認めざるをえない(自動車事故など類型的に予見可能性が認められる事案,管理過失の事案など)。
構成要件該当事実に関する具体的な予見可能性。ただ,その細部に至るまでの予見可能性は
必要なく,構成要件的結果および結果発生に至る因果関係の基本的部分の予見可能性で足りる。
構成要件たる因果関係の認識・予見可能性を要するが,行為者に認識・予見可能だった因果経過と実際の因果経過とが違っても,構成要件としての因果関係存在の点で両者が符合し,かつ, 結果の具体的予見(予見の具体性)を担保しうる因果経過の基本的部分の予見可能性があればよい。)
私なりに理解した,平野説および山口説による(旧過失論),過失犯の基本的な構造です。過失犯において,違法性阻却事由(Rw)はどのように問題となるのかは,よくわかりません。]

刑法102/ 800/ 過失犯の要件:実質的な危険あり,それが許された危険でなく,結果回避可能性あることを前提とする,#結果回避義務違反(TB)。過失,すなわち,#結果予見義務違反という不注意あること(S)。TB 該当事実に関する具体的な予見可能性要。細部に至るまでは必要なく,結果・因果関係の基本的部分の予見可能性で足る。
[平野『刑法概説』85 頁-87 頁,山口『刑法総論』3 版 246 頁,247 頁,『判例プラクティス 刑法 Ⅰ』112 頁(大阪高判平 3・3・22),参照。
山口説は,平野説(旧過失論)をより詳しく説明したものだと思う。また,実務の過失の理解と必ずしも対立するものではない(山口同書 245 頁 L12 参照)。]

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◇過失犯の結果回避義務と不作為犯の作為義務
刑法188/ 988/ 違法性に関わる義務たる,過失犯の結果回避義務,不作為犯の作為義務の発生根拠は,#ともに結果原因の支配(危険限の支配,脆弱性の支配)であり,過失犯では,作為犯と不作為犯との区別に特に意味はない。行為の危険性を TB 的結果が生じることが通常ありえない程度にまで減少させることが,結果回避義務の内容。
[山口『刑法総論』3 版 248 頁参照]

◇過失犯の因果関係
刑法189/ 989/ 結果回避義務を尽くさず結果発生した場合も,#危険性を減少させる義務としての結果回避義務を履行したとしても_結果発生を回避できなかったときは(あれなければこれなしとはいえない),結果発生は結果回避義務違反に基づくとはいえず(因果関係なし),結果惹起を理由とする処罰不可,過失犯の TB 該当性なし。
[山口『刑法総論』3 版 248 頁参照]

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○信頼の原則(過失犯の客観的構成要件該当性としての実質的な危険)
刑法判例26/ ある行為をなすに当たって_被害者または第三者が適切な行動をすることを信頼するのが相当な場合には_被害者または第三者の不適切な行動によって結果が発生したとしても_行為者は責任を負わない(信頼の原則)。これは,過失行為の実質的危険性(客観的予見可能性)がない場合の原則(客観的構成要件該当性)。
[『判例プラクティス 刑法Ⅰ』113 頁(最判昭 41・12・20),平野『刑法概説』86 頁,85 頁,山口『刑法総論』3 版 257 頁 LL2,247 頁 LL11-9,参照]

◇信頼の原則
刑法140/ 879/ 交差点右折途中,車道中央付近でエンストした自動車が,再始動し時速約 5km で発車する際,自動車運転者としては,#特別の事情なきかぎり_右側方の他車両が交通法規を守り衝突を回避する適切な行動に出ることを信頼し運転すれば足り,法規に違反し追い抜こうとする車両ありうることまで予測する注意義務なし。
[最判昭 41・12・20 刑集 20-10-1212『判例プラクティス 刑法Ⅰ』〔122〕参照]

◇信頼の原則(北大電気メス事件)
刑法139/ 878/ 執刀医 X にとり,ケーブルの誤接続のありうることの具体的認識を欠いたなどのため,#誤接続に起因する傷害事故発生の予見可能性が必ずしも高度のものでなく,手術開始直前,#ベテランの看護婦 Y を信頼し接続の成否を点検しなかったことが当時の具体的状況下無理からぬものだったといえ,X に注意義務違反なし。
[札幌高判昭 51・3・18 高刑集 29-1-78『判例プラクティス 刑法Ⅰ』〔124〕参照]

○予見可能性
刑法判例25/ 過失成立要件としてとしての予見可能性は,内容の特定しない抽象的な危惧感・不安感では不十分で,#構成要件該当事実に関する具体的な予見可能性でなければならない。もっとも,その細部に至るまでの予見可能性は必要なく,#構成要件的結果および結果発生に至る因果関係の基本的部分の予見可能性で足りる。
[『判例プラクティス 刑法Ⅰ』112 頁(大阪高判平 3・3・22)参照]

◇因果関係の基本点部分の予見可能性
刑法11/ 127/ 過失犯成立には、構成要件たる因果関係の認識・予見可能性を要する。行為者に認識・予見可能だった因果経過と実際の因果経過とが違っても、構成要件としての因果関係存在の点で両者が符合し、かつ、結果の具体的予見(予見の具体性)を担保しうる因果経過の基本的部分の予見可能性があればよい。#刑法
[山口『刑法総論』2 版 235・236 頁参照。法的判断枠組み(理論的説明)。札幌高判昭 51・3・
18 高刑集 29-1-78(北大電気メス事件)の言い回しと,山口教授の説明とをなんとか組み合わせた。
北大電気メス事件の「因果関係の基本的部分」という言い回しが,故意の錯誤論の裏返しだ(と思う。私の理解がまだ足りていないかもしれませんが)ということに上記の文章まとめていて気が付きました。
刑法 T29(11 ウ)参照]

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略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)。R01:論文令元年。
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