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7th Oct 2019 from TwitLonger

刑法総論/ 錯誤(11ヶ)


◇違法性阻却事由に関する事実の錯誤
刑法14/ 183/ Xは急迫性を錯覚し、自己の生命身体を守るため、やむなく傷害に及んでおり、急迫不正の侵害がないのにあるものと誤信し、その錯誤に過失は認められない。したがって、錯誤により犯罪の消極的構成要件(違法性阻却事由)たる正当防衛を認識したもので、犯罪事実の認識を欠き、#故意 は認められない。
[広島高判昭35・6・9高刑集13-5-399『判例プラクティス』Ⅰ総論〔222〕参照。誤想防衛。なお、山口『刑法総論』2版195頁L4①参照]

◇誤想防衛
刑法198/ 1054/ 誤想防衛とは,#正当防衛にあたる事実が存在しないのに,存在すると誤信した場合であり,責任故意(#違法性阻却事由該当事実不存在の認識・予見)がなく故意犯は不成立。誤想したことについて責任過失(#違法性阻却事由該当事実不存在の認識・予見可能性)があれば,過失犯処罰規定の存在を前提に,過失犯成立。
[山口『刑法総論』3版211頁参照]

刑法199/ 1055/ ①急迫不正の侵害が存在しないのに存在すると誤信し反撃行為を行った場合で過剰性ない場合,故意犯不成立。誤想に過失あれば,単なる過失犯。 ②誤想防衛だが過剰な場合,#過剰性の認識・予見あれば故意の誤想過剰防衛(故意犯)。過剰性の認識・予見を欠くが,#その可能性があった場合,過失の誤想過剰防衛。
[山口『刑法総論』3版211頁,212頁参照。(急迫不正の侵害についての)誤想に過失がある場合は,誤想防衛とはいえず単なる過失犯だろうと考えました。∴「成立する過失犯の刑より軽く処断...できない」(213頁L7参照)のでしょう。]

刑法16/ 185/ 急迫不正の侵害が存在し、過剰な防衛行為があるときに、①過剰性の認識・予見なければ、違法性阻却事由不存在の認識なく、故意が認められず(誤想防衛)、犯罪不成立。②その場合に、過剰性の認識・予見可能性あれば、過失犯(過失の #過剰防衛)。③過剰性の認識・予見あれば故意の過剰防衛である。
[山口『刑法総論』2版196頁(3版212頁)参照。
 山口教授のいう過失の過剰防衛は、単なる過失犯とも思えるが、36条2項が適用されうるということだろうか?ただし、山口197頁の誤想過剰防衛において、過失犯が成立した場合の取扱いと同じく、刑の免除はできないと解すべきできではないだろうか?]

刑法15/ 184/ 急迫不正の侵害がないのにあると誤信し、それに対する対抗行為が、誤想した侵害が実際に存在するとした場合の許容範囲を超えていたとき、如何。行為者に過剰性の認識・予見があれば、故意の #誤想過剰防衛 となる。なければ、故意はないが、その認識・予見可能性あれば、過失の誤想過剰防衛となる。
[山口『刑法総論』2版196頁(3版212頁)参照。
1. なお、故意の誤想過剰防衛も、過失の誤想過剰防衛も、故意犯に対する刑法36条2項による刑の減免の余地の問題である。
2. これに対して、急迫不正の侵害を誤想したことについてそもそも過失がある場合には、過失犯の成否の問題である。
その場合には、すでに過失犯が成立しているので、過剰性について認識・予見がある場合に(故意の過剰防衛?)、違法な過剰防衛となる事実について、その限度での故意犯に相当する部分に対し、36条2項を適用するとしても、すでに成立している過失犯の刑よりも軽く処断することはできないと解する。
具体的には、刑の免除はできない(山口197頁参照)。
3.以上、自分なりに、山口教授の説明を敷衍しようと試みたが、成功しているかどうかわからない。]

刑法200/ 1056/ #急迫不正の侵害が存在し,それに対して過剰な防衛行為を行ったときに,過剰性の認識・予見あれば,#故意の過剰防衛(故意犯)。過剰性の認識・予見なければ,責任故意がなく故意犯は成立しないが,その認識・予見可能性があれば.#過失の過剰防衛(過失犯)。どちらについても刑法36条2項適用(任意的刑の減免)。
[山口『刑法総論』3版212頁参照]

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◇方法の錯誤
刑法224/ 1102/ #方法の錯誤:甲がAを狙い発砲したところ,Aの傍らにいたBに命中しB死亡。具体的符合説:#Aに対する殺人未遂罪とBに対する過失致死罪の観念的競合。法定的符合説:①Aに対する殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪の観念的競合。②後者に吸収。③現に発生したBに対する単一の殺人既遂罪のみ成立(他は,過失犯)。
[森圭司『ベーシック・ノート 刑法総論』新訂版(2005年)212頁参照。
・具体的符合説:平野,内藤謙等有力説。法定的符合説:①団藤,藤木,大谷,前田等通説,②福田平(①説と理論上同様だが,観点的競合ではなく,Aに対する殺人未遂罪は,後者の既遂罪に吸収される。),③大塚仁(1個の故意犯が成立し,その他の部分については過失犯を認める。本ケースにおいては,Aに対する過失致死罪の未遂が認められるが,不可罰。)。]

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◇ウェーバーの概括的故意事例(因果関係の錯誤)
刑法234/ 1128/ ウェーバーの概括的故意:殺人の①行為と被害者死亡との間の因果関係肯定可。∵①#頸部絞扼が被害者死亡に物理的に寄与しており_共同原因といえ,②死体遺棄という,被害者の死に過失あるにすぎない行為は,①に強く動機付けられ,誘発されたものだから,①の危険性が②を介し被害者の死に間接的に現実化。
[山口『刑法総論』3版231頁(大判大12・4・30刑集2-378),R01(令元)予備3事実,参照。
 山口教授は,因果関係の錯誤の事例にほかならないとされる。頸部絞扼(けいぶ,こうやく)]

〇早すぎた結果の発生――クロロホルム事件
刑法判例1/ 最決平16・3・22:#殺害計画は,①クロロホルムを吸引させ失神させ,②車ごと海中に沈め殺すもので,①は②を確実・容易に行うため必要不可欠,①後,障害となる特段の事情なし,①②間の時間的場所的近接性などに照らすと,#両行為は密接な行為で,①に殺人に至る客観的危険性認められ殺人罪の実行の着手あり。
[『判例プラクティス刑法Ⅰ』〔267〕(刑集58-3-187)参照]

◇早すぎた結果の発生(早すぎた構成要件の実現)
刑法225/ 1103/ 当初の犯行計画で予定され,#密接な関係をもって行為者自身が行う一連一体の行為につき,そのいずれも行わず結果惹起を回避すべき法的要請を強く推し進める立場から,行為開始段階で現実的故意を認め,#当該行為自体に結果惹起意図なきものまで拡張し,いずれかの行為により惹起された結果に,故意犯肯定可。
[山口『刑法総論』3版234頁(最決平16・3・22刑集58-3-187,クロロホルム事件)参照]

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◇抽象的事実の錯誤
刑法164/ 952/ 抽象的事実の錯誤とは,行為者が認識・予見した事実が該当するTBと,実際に生じた事実が該当するTBとが異なる場合(異なったTBにまたがる事実の錯誤)。それぞれのTBの(形式的・実質的)重なり合い(符合)が肯定できる限りで故意犯成立。#TBの実質的重なり合いの場合_保護法益の共通性・重なり合いを要する。
[山口『刑法総論』3版235頁,234頁,237頁参照]

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略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)。R01:論文令元年。
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