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sheltem · @sheltem_at_twit

23rd Jul 2019 from TwitLonger

なぜ若者は遣い潰されるのか――日本のアニメはブラック業界 くみかおる


離職率90%だからこそ回る業界

今から四半世紀も前のことだが、
ある労働組合の連合組織によって、
アニメ労働者の生活環境改善のための試算が行われた。

それによると、アニメ労働者を
「個人事業主」でなく「労働者」と見なして、
最低賃金法の適用を受けられると仮定すると、
テレビアニメの制作費は
一本あたり最低でも
2300万円は必要だと算出された。

だが実際の制作費の平均額は740万円。

すると残り1560万円は
どこからどうねん出しているのか。

手品の種はこうだ。

アニメに憧れて業界に入ってくる若者を、
「君たちは労働者ではなく個人事業主である」
と刷り込んで信じられないほど安い歩合で働かせる、

または職種によっては社員として雇用
つまり「労働者」扱いをするけれど
眠る間もないほど長時間働かせることで、
不足分およそ1600万円を埋め合わせるのである。


まともな神経の持ち主なら、
こんなブラック業界は見限って
他の業種にまわろうとするだろう。

実際、3年も働かないうちに
9割が去っていく。

だが去るまでのあいだは
アニメというまばゆい夢に駆り立てられて
(または二〇三高地攻略戦よろしく
背後から砲弾を撃ちこまれて)必死に働く。

ある者は絵を描き、
ある者は運動部のマネージャーよろしく駆け回る。

食べていけるほど稼げない者は、
学生時代にアルバイトで貯めた金を取り崩してねばるか、
親からの仕送りでとりあえず持たせる。

おわかりだろうか。

業界全体で、若者たちの貯金を、労働力を、
親のスネをかじって、
1600万円ぶんを埋め合わせているのだ。

このしゃぶりとりに若者たちは疲弊していく。

だがそれがあらかじめ仕掛けられた
労働搾取のメカニズムだとは気が付かない。

幼い頃に刷り込まれたアニメの夢に煽られて、
そして「腕を磨けばやがて幸せに生きていける」と
経営側の人間や先輩たちからの「援護砲撃」を受けて
二〇三高地の坂を駆けあがっていく。

こうやって、挫折するまで存分にこき使われる。

挫折したらしたで自己責任論の罠が待ち構える。

「努力が足りなかったのだ」

「才能がもともとなかったのだ」と。

離職率90%という異常な数字について、

「二年ではなく四年か
それ以上じっくり時間をかけて学校で育てて、
それから業界に進むようにすれば、
挫折者はもっと減らせるのではないか」

と考える向きもあるかもしれない。

ありえない話だ。

挫折者がたくさん出るからこそ、
つまり労働力を貢ぐだけ貢いでくれたら
後は何も言わずこの世を去ってくれる
ありがたい兵隊が大勢いてこそ、
戦線を維持できるのだから。

https://synodos.jp/society/14091/2

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