『核心のTPPで激突 推進派“おごりの姿勢”も 民主・経済連携PT』|日本農業新聞5月29日

 民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT、櫻井充座長)が経済連携のメリットに関する議論を5月16日に始めてから今週で3週目を迎える。これまで経済連携と雇用やデフレとの関係を検証してきたが、論戦のテーマはいよいよ核心の環太平洋連携協定(TPP)となる。TPP交渉参加問題に決着がつくのか。推進派、慎重派が激突する。

 想定される論点は①日本がこれからTPP交渉に参加してもルール策定に間に合うのか②TPPのような多国間交渉は2国間交渉に比べて日本の主張を反映しやすいのか③各国の事情を考慮せず、一律に関税全廃を求めるTPPは極めて異質で、交渉に参加するだけで“高い入場料”を迫られるのではないか―など。

 推進派はTPPをはじめとする高いレベルの経済連携を推進する理由として、雇用拡大を据えてきた。しかし、推進派は雇用への効果について確たる根拠を示せず、きめ細かい政策を同時に講じないと雇用を維持・拡大できないことを認めざるを得なかった。慎重派が推進論の最大の根拠を封じ込めたといえる。

 このため、今週から始まるTPPに関する論戦で推進派が総がかりで巻き返しに入るのは必至だ。

 米国など関係9カ国による年内妥結は難しいとの見方がある中、山口壯外務副大臣は17日の記者会見で、「(ルール策定が)もう少し時間がかかった方が、日本が少しでもルールメーキングに関われる度合いが大きくなる。もう少し待ってほしいな、というのが正直なところだ」と述べた。“バスに乗り遅れるな”との主張を蒸し返す狙いがあるとみられる。

 推進派の攻勢をどう押しとどめるのか、慎重派にとって最大の踏ん張りどころとなる。

 とはいえ、「推進派には“おごり”の姿勢」(慎重派議員)もちらつく。経済連携とデフレの影響を議論した25日の党PT総会で、舟山康江PT事務局次長が「結局(推進派は)来ないじゃないか」と憤慨する場面があった。櫻井座長が繰り返し推進派の出席を求めているのにもかかわらず、デフレという“脇役”がテーマだと推進派から参加したのは常連の緒方林太郎氏(衆・福岡)などわずかにとどまったためだ。

 「野田佳彦首相の発言をみれば交渉参加の方向は変わらない。党内でいつまで議論を続けるつもりなのか」と発言する推進派議員が少なくないことも、舟山氏がいら立ちを示した理由とみられる。

 山田正彦前農相、篠原孝前農水副大臣、福島伸享氏(衆・茨城)、山岡達丸氏(衆・比例北海道)ら慎重派議員は、ほぼ皆勤賞で論陣を張っている。農林議員らしく粘り腰で推進派を寄り切れるのか、目を離せない展開となりそうだ。

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