『TPP参加論 根拠薄 民主・経済連携PTで論戦』|日本農業新聞5月22日

 環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題をめぐる民主党・経済連携プロジェクトチーム(PT、櫻井充座長)の議員間の論戦が今週、第2ラウンドに入る。推進派は、東南アジア諸国も入れるようにTPPの枠組みを変える“枠組み転換論”やエネルギー安全保障論などを主張する。しかし、いずれも根拠が不明確で、慎重派は「希望的観測」「なぜTPPなのかが見えない」と反論。双方譲らず激しい論戦を繰り広げている。

 関税全廃を原則とするTPPの“枠組み転換論”を唱えるのは党PTの吉良州司事務局長。「TPPを東南アジア諸国も入れる枠組みにすれば、アジアの成長を取り込める」との見解だ。
 これに対して、福島伸享氏(衆・茨城)が「なんでも開けばいいというのは最も稚拙な論理だ。日本が枠組みを変えると宣言して、米国が果たして交渉参加を認めるのか(疑問だ)」と切り返し、希望的観測に基づく推進論にくぎを刺した。

・日本 枠組み変えられる!?

 党PTは先週、16日から3日連続でTPPのメリットをテーマに総会を開いたが、吉良事務局長と福島氏ら慎重派の論戦は18日も決着がつかなかった。櫻井座長が「幹部でありながら特例的に発言を認めていることを忘れずに」と苦言を呈すると、吉良事務局長は「私は(事務局長として)100時間も 発言を我慢してきた」と述べ、なりふり構わず推 進論を展開し続ける場面もあった。

 推進派は、米国のシェールガスの対日輸出解禁を求めるエネルギー安全保障論や、資源の囲い込みもTPPを進める根拠に挙げ始めた。しかし、「いずれもTPPでないと実現できない理由はない」(慎重派議員)。慎重派はTPP参加論の根拠を論破し、最終的にはTPP交渉参加の難しさを浮き彫りにしたい考えだ。

 とはいえ、交渉参加に前のめりな政府姿勢は今のところ変わっておらず、どういう決着になるかは不透明だ。山口壮外務副大臣は17日の記者会見で「9月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議までには、米国から交渉参加どうぞとの(回答)が来ることになるかなという気もしている」と述べ、首相によるAPEC首脳会議までの交渉参加表明があり得るとの見解を示した。山口副大臣は、TPP交渉参加9カ国によるルール策定が遅れることへの期待も表明した。

 9月に行われるAPEC首脳会議が、TPP交渉参加をめぐる攻防の次の節目となるのか。菅直人前首相が2010年10月の所信表明演説で、TPP交渉への参加の検討を表明してから2年越しの戦いの帰趨はまだ見えない。

 山田正彦前農相を筆頭に、中堅の篠原孝前農水副大臣、若手の福島氏、山岡達丸氏(衆・比例北海道)ら慎重派議員らは息をつく暇もない、長い戦いを続けている。

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