『TPP交渉 32団体「反対、懸念」 会計士、労組など多岐 政府聴取』|日本農業新聞5月22日

 政府は、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加について46の業界団体から聞いた意見をまとめた。JA全中をはじめ1次産業や食品関連産業、消費者、医療など17団体が交渉参加に反対を表明。会計士や行政書士、税理士、労働組合など15団体も懸念を示した。合わせて7割に上る幅広い業界が、それぞれの観点から交渉参加の危険性を認識していることがあらためて浮き彫りになった。
 
 意見聴取は3月上旬に始めた。4月5日の中間発表以降に意見表明したJA全中や中央畜産会、日本農業法人協会などの農業団体が、食料安全保障の崩壊や地方の衰退を招くといった理由で交渉参加に反対した。
 
 全中は、TPPは東日本大震災からの復興の足かせになることや「例外なき関税撤廃」を原則とするTPPへの参加は、国内農業の振興とは両立できないことを指摘。参加に向けた検討の中止を求めた。交渉参加反対1000万署名全国運動で集まった1166万人を超える国民の声は「極めて重い」と訴えた。
 
 食品産業関連では、日本乳業協会など乳業3団体が「乳業界と酪農業界は一体」として交渉参加に反対することを表明。砂糖の関連団体も、北海道、鹿児島県、沖縄県の農業生産が激減し「地域社会の崩壊」や「自然環境、国防などに悪影響をもたらす恐れがある」(精糖工業会)として強く反対。全国製粉協議会も、小麦を関税撤廃の例外とすることや国家貿易の重要性を挙げ、「基本的に反対」とした。
 
 日本公認会計士協会は、公認会計士資格が無条件で相互承認されれば、米国の公認会計士試験に合格すると日本の資格も取得したことになることを懸念。「わが国の公認会計士制度を形骸化する」と危機感を示した。
 
 医療関連では、国民皆保険が守れなくなるとして日本医師会が交渉参加に反対した。全日本病院協会、日本医療法人協会なども、混合診療の全面解禁や病院経営への営利企業の参入などを迫られる可能性を指摘した。
 
 日本労働組合総連合会(連合)は、TPPに適切な労働、環境規制を盛り込むことを求めた。食料安全保障や医療、協同組合などの現行制度の堅持も訴えた。企業が進出先国の政府を提訴できる投資家・国家訴訟(ISD)条項で法制定権が制限されることも懸念するなど、慎重な姿勢を示した。
 
 日本生協連も、ISD条項が国家主権の妨げになることや、非営利である共済に民間と同じ競争条件が適用された場合に加入者負担が増えることなどに懸念を表明した。
 
 政府は、都道府県議会がTPP交渉参加について反対や慎重な対応を求める決議や意見書を延べ109件採択していることを明らかににした。
 
 また全国知事会がTPP交渉の情報提供と十分な国民的議論を、全国市長会と全国市議会議長会が慎重な対応を求めたことも報告した。全国町村会と全国町村議会議長会が交渉参加に反対したことも、地方自治体の意見としてまとめた。

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