【解説】『G8サミット TPP踏み込まず 6月ヤマ場、反対の声を』|日本農業新聞5月21日

 主要8カ国首脳会議(G8サミット)に出席した野田佳彦首相は、欧州債務危機の克服に向けた日本の姿勢を強調するとともに、消費税増税関連法案の成立に強い意欲を示した。一方、国論を二分する環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題については踏み込まなかった。今回は日米首脳会談が開かれず、4月30日の同首脳会談から目立った進展もないため、TPPについて言及がなかったのは当然と言えるが、予断を許さない状況は依然続いている。
 
 野田首相は、TPP交渉参加について、国内での国民的議論と米国などとの事前協議の二つが「煮詰まってきた段階で判断する」といている。判断材料の一つとなる日米の事前協議について、ある政府関係者は「今月も、米国が事前協議で日本に対応を求めた自動車の非関税障壁に関する日米協議が活発に行われている」と話す。米通商代表部(USTR)のカトラー代表補が来日しただけでなく、ワシントンでも事務レベルの協議が行われたという。
 
 水面下の日米協議で日本側が譲歩して、米国が交渉参加を認めれば、政府与党内のTPP推進派は、民主党経済連携プロジェクトチーム(PT)を含めた国民的議論を生煮えのまま、切り上げようとする可能性もある。
 
 11月の米大統領選挙が近づけば、米国は国民に不人気な自由貿易政策を推進しにくくなる。日本のTPP推進派は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当相会議や主要20カ国首脳会議(G20サミット)がある6月を、「米大統領選前に交渉参加を表明する最後のチャンスだ」として巻き返しを図るとみられる。来月に向けて、政府や国会議員に、交渉参加反対の声をしっかり伝える必要がある。

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