『草の根の反対運動 諦めぬ姿勢学ぶ』|日本農業新聞4月29日

 TPPに草の根で反対する、主婦や会社員、年金生活者ら市民の取材をしている。組織に属さず、自腹を切って反対の輪を広げている人たちだ。
 
 25日夜、ギターの生演奏による反TPPソングに合わせてパレードが繰り広げられた。TPPを怖いという素直な気持ちを自由に表現したデモ行進に、若い女性が飛び入り参加したり、会社員が記念写真を撮ったり、通行人の関心がとても高かったのが印象的だった。
 
 活動に加わる人に話を聞くと、まず身近な家族や恋人、職場の人に、TPPの問題を伝えている。大手全国紙だけの報道をうのみにせず、インターネットや本などで情報を収集し共有しているだけに、情報量は驚くほど豊富だ。デモ参加、ちらし配布、ツイッター発信…。小さな一歩が世の中を動かすと信じ、発信を続ける。世論を動かすのは、こうした草の根の力だと思う。私を含め、全ての国民がこの問題に無関心ではいけない。自戒を込めて痛感した。
 
 地方に取材に行くとTPP参加阻止を諦めていたり、よく知らなかったりする農家やJA職員が少なくない。ある若手農家から「仲間に反対集会への参加を呼び掛けても、日当はあるかと聞かれる。反対の思いはなかなか浸透しない」と悩みを打ち明けられたこと(も)ある。受け止め方に温度差はあるのは当然だが、まず自分の考えを持たなければ、後になって「政治が悪い」といくら批判しても手遅れだ。
 
 私は、現場で汗を流す農家がいるから給料をもらうことができる。記者としても個人としても、この問題に向き合う。決して諦めない。地道に行動を続ける市民の姿に、大切なことを教わった。
 
(尾原浩子)

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