【TPP反対 現場は訴える】『建設業者も打撃 大阪』|日本農業新聞4月28日

 大阪市東淀川区で3月、「TPP反対! 3・9関西集会」が開かれた。近畿地方の生コン関連の企業団体や労働組合などが主催し、200人が参集。米国政府や通商交渉を監視する同国の市民団体「パブリック・シチズン」から、TPPに参加した場合に想定される食の安全や医療などへの影響を学んだ。

 「TPPの影響を米国人が自ら鋭く指摘する姿に衝撃を受けた」。全日本建設運輸連帯労働組合近畿地方本部・関西地区生コン支部の執行委員、西山直洋さん(44)は感想を口にし、「(日本の)中小企業も打撃を受けるのは間違いない。日本がTPP交渉に参加するのは反対だ」と語気を強めた。

 同支部がTPP交渉への参加を問題視し始めたのは、菅直人首相(当時)が参加の検討を表明した2010年秋ごろ。「交渉参加に反対していたのは農業分野に集中していたが、中小の建設関連業者にとっても危機感は農業分野と同じ」(西山執行委員)と感じた。

 TPPで公共事業への外国企業の参加基準が緩和されれば競争が激化、コスト削減のための賃金の引き下げなどで「安定した生活が揺らぎ、労働者の権利までも脅かされるかもしれない」(同)。同支部はTPPの危険性を機関誌などで組合員に情報を発信している。

・外資参入で競争激化 雇用や労働条件悪化 懸念

 建設産業や労働、公共事業などの調査・研究に取り組む、特定非営利活動法人(NPO法人)建設政策研究所(東京都)も、「地域の建設産業や就労者も 大きな打撃を受ける」と警鐘を鳴らす。

 環太平洋連携協定(TPP)に日本が参加した場合、公共事業をはじめ公共調達に外国企業が参加できるようにする国際入札の適用基準額が引き下げられ、「事実上、TPP参加国の建設関連企業が入札に参加しやすい環境になる」と、同研究所の辻村定次副理事長は解説。地方自治体でも、国際入札件数が大きく増えると見込む。地域建設業振興のために設けてきた入札の条件が廃止される可能性も大きいとし、「価格競争が激化し、国内の地域建設業者の受注件数や収益の減少を招く」と指摘。外国人労働者の参入による雇用と労働条件の悪化も懸念している。

 全日本建設運輸連帯労働組合近畿地方本部・関西地区生コン支部は16日に大阪市で開かれた「TPP加盟反対 慎重な対応を求める4・16大阪集会」に、全参加者の2割近い120人を動員した。近畿地方の労働者や農業、市民などの団体が開いた集会だ。

 経営側とも共同歩調をとる。同市で28日に開く「TPP問題を考える」講演会を主催する実行委員会には、同支部とともに、企業でつくる「近畿生コン関連協同組合連合会」も名を連ねた。
 「TPP参加に断固反対し、その撤回に向けて全組織を挙げて闘っていく。大衆集会、ストライキなどあらゆる戦術を行使する覚悟もある」と同支部の武健一執行委員長。

 経営側である同連合会の増田幸伸専務理事もこう話す。「政府がTPP交渉に万が一、参加した場合、地域の建設関連業者の仕事が奪われる。業界を守るためにも労使が協調してこの問題に臨まなければならない」
(久米千曲)

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