『米国でBSE4例目 新たな規制行わず 日本政府』|日本農業新聞4月26日

 米国で24日、牛海綿状脳症(BSE)の感染牛が約6年ぶりに見つかった。日本政府は、輸入を認めていない月齢の牛だとして輸入停止など新たな規制は行わない方針だ。ただ消費者の不安が高まるのは必至で、米国産牛肉の輸入規制などの見直しについて議論している内閣府の食品安全委員会には、より慎重な検討が求められる。TPP交渉への日本の参加条件に米国は事実上輸入規制の緩和を挙げており、日本の交渉参加問題にも影響を与える可能性がある。

 米農務省は24日、米国カリフォルニア州で乳牛1頭のBSE感染が確認されたと発表した。米国で確認されたのは2006年3月以来。米国内でのBSE感染牛の発見は4例目。同省は、この牛の死骸は既に州当局の厳重な管理下にあり、食用に流通することはないとし、食の安全面での影響はないとの認識を強調した。

 同省によれば、日本でも使われているウエスタンプロット法などによる検査を同省の研究所で行い、典型的なBSEとは異なる非定型BSEの陽性が確認した。同省のクリフォード主任獣医師は「(非定型のため)広範な感染が疑われる汚染飼料が原因ではないと考えられる」と説明。同省は声明で「米国の貿易に影響を与えることにはならない」との見解も示した。(ワシントン時事)

 今回見つかったBSE感染牛は30カ月齢以上の雌。米国政府は、正確な年齢は調査中だという。食用としてと畜場に出荷された牛ではなく、肉骨粉や牛脂を取るためにレンダリング施設に送られた牛。感染状況を把握するために米国が行っている検査で発見された。

 日本政府は、輸入を認める米国産牛肉を「20カ月齢以下」に限る月齢制限などを実施。昨年12月には、輸入を認めるのを「30カ月齢以下」に引き上げるといった輸入規制の緩和を食品安全委員会に諮問している。米国は月齢制限の撤廃を求めている。


『米国での発生6年ぶり』

 米国でこれまで牛のBSE感染が確認されたのは3件。第1号は2003年12月、ワシントン州で確認されたカナダ産1頭(80カ月齢、ホルスタイン種雌)だった。05年6月にテキサス州で初の米国産牛1頭(推定12歳、ブラーマン種雌)から、06年3月にはアラバマ州で米国産牛1頭(推定10歳以上、肉用牛交雑種雌)の死骸から感染が確認された。

 今回カリフォルニア州で確認された4件目の牛について現地報道は、米国農務省のジョン・クリフォード主任獣医師が「世界のBSE感染ピークは1992年の3万7311件。それ以降、劇的に減少し、11年の発生は世界で29件だけだった」と声明を出したことを伝えている。

 米国は97年以降、哺乳動物のたんぱく質を牛など反すう動物の飼料に使うことを禁止。しかし、反すう動物以外の飼料に使う動物性たんぱく質が牛の飼料に混入(交叉=こうさ=汚染)して牛が感染する可能性があるため、04年、ペットフードも含む全ての動物用飼料の原料に特定部位を使わない制度を設けた。反すう動物の飼料には、全ての哺乳動物・家きん鳥類のたんぱく質を使わないことも決めた。

 日本の畜産関係者などからは「米国の防止対策は不十分」の声があるが、米国内では対策に自信を深めていた。米国の肉牛業界団体である全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は今年2月、日本がTPPに参加する場合は米国産牛肉の月齢制限撤廃を条件とするよう米政府に要求した。


【解説】『飼料規制 各国で違い 安全観の差無視許されず』

 先進国のBSEリスクは大幅に低下している。ピークだった20年前には英国を中心に3万7000頭の発生が報告されたが、昨年は29頭まで激減した。ピーク時を100とすると、0.1以下まで減った計算だ。先進国が足並みをそろえ、BSEの原因となる肉骨粉の牛に対する飼料利用を規制し、発生状況を監視する仕組みを導入したことが効果を上げた。

 国際獣疫事務局(OIE)によると、オーストラリアなどBSEを無視できるほどリスクが低い国、日本や米国、フランスなどのリスクをきちんと管理していると認定された国は47カ国に上る。主要先進国で BSEを封じ込める対策が機能していることは間違いない。

 しかし、国によって飼料規制の中身には差がある。日本や欧州連合(EU)が行っているような食肉処理の段階で検査をしていない国もあるなど、細かい点で対策は異なる。背景には、「BSEリスクをどこまで受け入れるのか」という消費者の判断が国によって違いがあるからだ。リスク全体が小さくなっているからと言って、消費者の安全観の違いを無視するようなことは許されないだろう。(山田優編集委員)

※引用者注:『アメリカで6年来初めてのBSE 非常に稀な非定型BSEというが徹底的検証が必要』農業情報研究所25日⇒ http://www.juno.dti.ne.jp/tkitaba/bse/news/12042501.htm

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