『反TPP国民集会 首相は国民の声応えよ』|日本農業新聞4月26日

 野田佳彦首相の訪米を目前に控え、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題での関係者の懸念と怒りは頂点に達している。農業団体、消費者団体などが一堂に会した25日の4000人規模の国民集会とデモ行進、農業青年らの議員会館前での抗議の座り込み、そして1万人キャンドル集会などは、その表れだ。首相は一刻も早い交渉参加断念を表明すべきだ。

 集会には、国会議員が多数駆け付け、各党代表はTPP交渉参加反対で足並みをそろえた。“壊国”TPP阻止に与党も野党もない。この「公約」が言葉だけの「口約」にならないよう、出席議員は国会論戦での具体的な対応と行動が問われる。

 国民集会の会場となった東京・日比谷野外音楽堂にTPP反対の声が幾度も響いた。リレーメッセージでは、さまざまな立場の人がTPPへの懸念を訴えた。キーワードは「食と暮らし・いのちを守る」だ。国民生活を維持する上で最低限のものがTPPという究極の自由化を進める「異常協定」で奪われかねない。一方で首相は国会答弁などで「前のめり」の発言を繰り返す。日米首脳会談を前に、国民集会の形で首相に交渉参加表明阻止を迫ったのは、生活者として当然の権利だ。これまで以上に女性の姿が目立ったのも、生活者の視点から強い危機感を感じているためだ。

 国内外で、食と暮らし、そして命そのものをビジネスチャンスと位置付け利権を求める輸出企業や投資集団。これらに対抗するには同様に国内外の攻防が迫られる。

 JA全中は24日、米国政界に大きな影響力を持つ新聞ワシントン・ポストなどに意見広告を出し反響を呼んでいる。国民集会の資料でも紹介されたが、その照準は国民、生活者だ。「TPPにあなたの未来を奪わせてはならない」のタイトルで「極端な自由貿易協定であるTPPは、雇用を破壊し経済格差を助長し未来を大企業の手に委ねるものだ」と強調。TPPは失業に悩む米国をさらに窮地に追い込む。TPPは強者をさらに富ませ、弱者を一段と貧困に落とし込む。これは日米共通の問題だと指摘した。

 集会アピールにあるように、首相はこの国の未来をどう考えているのか、懸念に答えるべきだ。「断固として守り抜く」と自ら語った「世界に誇る医療制度」「美しい農村」。しかしどう守るかの具体論はいまだに示していない。18日には日本医師会など医療40団体がTPP参加反対総決起大会を開いた。異例のことだ。自由化で医療、すなわち命が危機にさらされていることを裏付ける動きだ。

 国民集会を引き継ぎ、夕方からは1万人規模のキャンドル集会を開いた。揺らめく明かりはTPPへの不安と懸念の炎だ。メディアによって成長した巨大な虚像「TPPモンスター」を葬る怒りにもつながっているはずだ。

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