『TPP参加で民主PT 拙速表明歯止めを 「踏み込んだ発言」警戒』|日本農業新聞4月21日

 民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT、鉢呂吉雄座長)で、環太平洋連携協定(TPP)に関する議論が再び熱を帯びている。野田佳彦首相は「国民的な議論が煮詰まった段階」で判断する考えを示し、ワシントンで30日に予定するオバマ米大統領との首脳会談での参加表明見送りをにじませる。しかし、見送りを明言したわけではなく、どう歯止めをかけるかが焦点だ。

 参加表明の歯止め策として浮上しているのが党PTの意見集約。20日に開かれた党PTの総会で、山岡達丸氏(衆・比例北海道)が「来週徹夜で議論してでもまとめるべきだ」と口火を切り、山田正彦前農相らも意見集約を求めた。

 福島伸享氏(衆・茨城)も「訪米時は交渉参加の判断をする時期でないことを何らかの格好で担保することが必要だ」と強調する。

 首脳会談での参加表明見送りをにじませた首相発言の背景には、賛否が割れる国内の世論に加えて、米国側も日本の交渉参加に反対する自動車産業などを抱え、11月の大統領選挙を控えて対応が定まらないことがあるとみられる。とはいえ、首相が首脳会談時に「今までより踏み込んだ発言をする可能性」(山田正彦前農相)が残ることへの危機感が、農林議員を意見集約へ突き動かすのだ。

 同PTの訪米調査団と会談した際に、キャンベル米国務次官補が「今回の首相訪米時の一番の関心事はTPPだ」と述べたことも、農林議員の警戒を強める原因となっている。19日の同PT役員会で、訪米した櫻井充座長代理が述べた。

・米国の要求見極め

 民主党政権での首相の公式訪米は今回が初めて。沖縄県の基地問題など他の日米間の課題が進展しない中、「TPPを成果にしたい」(政府関係者)思惑が政府内にはある。さらに5月18日からは米国で開かれる主要国首脳会議(G8サミット)出席のため、再度の首相訪米が控える。

 PT総会での慎重派議員の懸念は、訪米調査団の報告書の内容にも及んだ。米通商代表部(USTR)のマランティス次席代表の「TPPは各国の公的医療保険制度を変更させる意図はない」などの発言に、「どこまで信頼性があるのか」と迫ったのだ。

 といっても、報告書の作成者を疑ったのではなく、「内容を見極める必要がある」という指摘。「与党の代表が公式に調査に訪れるのだから、米国側は日本を参加させるため、都合のいい回答を準備してきた可能性がある」(慎重派議員)からだ。山田氏らは議事録を提出し、詳細な分析をするよう求めたという。

 20日のPT総会の議論は約2時間続いたが、早期の取りまとめや議事録の提出をするかどうかは、週明けのPT役員会での調整に委ねた。党PTでは来週、総会を2回開くことも検討しているが、党PT役員の中には「短時間で結論を出すのはよくない」との意見もある。

 首相が訪米を控えて、一昨年に閣議決定した経済連携の基本方針の範囲を超えないことを明言するのか。それとも、党PTとして意見集約し、歯止めをかけるのか。不透明な情勢の中、息が詰まる展開が続きそうだ。

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