1日付の産経紙面のコラム「日曜日に書く」で「仙谷長官の危うい思想背景」(http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100801/plc1008010319003-n1.htm)という記事を書き、仙谷由人官房長官が「友人」と呼ぶ人権派弁護士、高木健一氏の慰安婦問題での「仕掛け」やロシアのサハリン残留韓国人帰還事業における「暗躍」を指摘したところ、思いがけず、長年サハリンにかかわってきた元サハリン再会支援会代表の新井佐和子氏(80)から「よくぞお書き下さったと快哉を叫んでおります」という手紙をいただきました。

樺太帰還韓国人会の朴魯学会長の夫人、堀江和子氏とともにサハリン再会支援会をつくり、現実にサハリン韓国人の招請活動を行ってきた新井氏からのお言葉に恐縮しました。この手紙にはまた、新井氏がこれまで雑誌などで発表してきた手記のコピーも添えられていて、サハリン問題を考える上でとても参考になりました。特に興味深かったのは、新井氏が、私が以前のエントリでも紹介した仙谷氏が高く評価する高木弁護士と五十嵐広三元官房長官について、とても厳しい評価を下していることです。

仙谷氏は、昨日の参院予算委員会でも、サハリン残留韓国人帰還事業を取り上げ、「成功例」のように話していました。そこで、16年前の雑誌「正論」(1994年12月号)に新井氏が寄せた記事「『サハリン残留補償』をデッチ上げたのは誰だ」から何点か引用し、参考に資したいと思います。

《最近の帰還状況をみると、殆どが韓国に縁故のない人ばかりです。親戚の範囲の広い韓国で無縁故者というのは、戦時中、韓国からサハリンに移住していった人ではなく、たとえば、戦後北朝鮮から延べ五万人ほど労働力として派遣されてきた人のうち、何割かの帰国せずに定住した人や、戦前からソ連本土に居住していて戦後サハリンに移住してきた朝鮮系ロシア人が圧倒的に多いとしか考えようがありません。こういう人たちに、何故、日本が責任を負わなければならないのでしょう》

《原文兵衛会長、五十嵐広三事務局長の下に「サハリン残留韓国、朝鮮人問題議員懇談会」(以下議員懇)が設立されたのは1987年ではないですか。もうその頃は既に朴魯学氏主導の家族再会事業が軌道に乗り、外務省からも、滞在費の補助を88年度には予算化するという予告も受けており、殆どの問題は解決していたのでした。(中略)

ふりかえってみますと、あの頃は、社会党が、どういう風の吹きまわしか、にわかにこの問題に取り組み始めたときです。

かつて(1974年5月)朴会長は各政党に対し公開質問状を出したことがありますが、社会党は、それに対し、「サハリンに居る朝鮮人はみな朝鮮民主主義人民共和国の国民と認められるから韓国に還すことに協力出来ない」旨の回答をしてきたのです。(中略)

当時私は、「議員懇」の設立に深く関わり、朴魯学氏の死後、「議員懇」傘下の再会事業組織を作った高木健一弁護士から「土井たか子に会ってくれないか」と頼まれました。私は「既に問題は解決しているのだから、その必要はない」と断ったことがありました》

《(五十嵐議員が朴会長の死去の前日、病床の朴氏のもとを突如カメラマンを連れて訪問し、「感謝状」を渡した上、遺族に無許可で病床の朴氏の写真を本に掲載したことについて)五十嵐氏は、サハリン問題で何処へ行くにも、必ず地元の新聞、テレビを引き連れて行かれるようです。票にならないわけがありません。まあ、それは政治家ですから大いに利用するのもよろしいですが、「議員懇」設立の際、議員の中には、ずっと以前からこの問題に尽力して来られた民社党の田渕哲也議員や公明党の草川昭三議員を差し措いて、それまでこの運動に反対してきた党の議員が事務局長に納まって見当違いの活動を派手に宣伝し、あまつさえ朴会長とそのご遺族の人権をふみにじっています。これはどうみても、党利党略、私利私欲のため、サハリン問題を食い物にしてきたとしか、私には考えられないのですがいかがでしょうか》

《この補助金が支給されるようになった88年度から、社会党を背景として、高木健一弁護士が招請事業を始めました。大量の印刷物をサハリンに配り、「当方は宿舎も高級マンション(都内一等地にある社会党系不動産会社所有のマンションで「土井たか子後援会事務所」の表札のある豪華な部屋と、その他数室を仕様していた)で、お米も沢山用意しています…」というような客引きまがいの宣伝を行い、亡夫朴魯学さんの跡を継いだ堀江和子さんの招請事業に妨害を与えたという事実を、あなたはご存じのはずです。》

このように、サハリンとのパイプのない人が、強引に数だけの実績を伸ばそうとするには、他人の招請を奪ったり、同じ人を何回でも招請するようになっていったのです。その結果、希望者は大勢いるにもかかわらず、〝実力者〟だけが何回も日本の国民の税金を使って大名旅行をし、ラジカセ、テレビ、ビデオ、中古車等を買って帰り、法外の利益を得ているというのが実情でした。(中略)

ソ連の一方的都合で置き去りにされ、ソ連社会のために働いてきた人に「苦しかったでしょう」などと日本が償い金などを差し出すことは、もの笑いのたねになるばかりだと思います》


…新井さんは、「現代コリア」(1990年11月号)では、高木弁護士が同年9月6日のNHK番組「ミッドナイトジャーナル」に出演した際の発言の誤りを数点指摘し、「このサハリン帰還運動を、あなたがご自分一人でやってきたように発言しておられるのを聴き唖然としました。この運動の英雄『朴魯学』の名をお忘れになったのですか」と書いています。そして、私の元に届いた資料への書き込まれたメモ書きには「現政権になって、高木・仙谷コンビで益々、この種の根拠のない補償金支払いが増えるでしょう」とも記していました。

http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1731789/
元サハリン再会支援会代表、新井佐和子氏からの手紙:イザ!:阿比留瑠比


#阿比留瑠比さん、真のジャーナリストだ

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