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22nd Apr 2010 from Twitlonger

【2010年4月19日放送 TBS『NEWS23クロス』シリーズ追跡:官房機密費・第1夜】

 外交の情報収集などを目的とした官房機密費予算は、年間14億6000万円が計上されている。内容が公開されることのない機密費は、国会対策等に流用されているのではないかという疑惑が囁かれてきた。そんな中、官房機密費を一手に扱う官房長官を務めた野中広務氏が番組の単独インタビューに応じ、その実態を初めて証言した。

 鳩山総理が原則公開の方針を打ち出したが、手続きが進む様子が見えない官房機密費。領収書もいらない。記録も残さない。内閣官房長官が自由に使える金だ。自民党政権は一貫して情報公開を拒んできた。厚いベールに包まれた機密費の実態。

野中「もう辞めてもうじき死んでいくから、これからの民主党が国民のためになる鑑定の機密費を含めた運用をやってくれるために実態を正確に言っておいた方がいいと思う」

松原キャスターのインタビューに応じたのは、元官房長官野中広務氏。1998年7月から1年余り小渕内閣で官房長官を務めた政界の実力者だ。初めて証言する官房機密費の真実――。

野中「国会対策に使うことが多かった。総理の部屋に月1000万円。それから衆議院国会対策委員長、参議院幹事長室に月500万円ずつもっていかなきゃならなかった。」

 当時国対委員長だった古賀氏は「過去のことなので記憶にありません」とコメント。

 機密費はもともと外交の情報収集などに使用される経費とされる。
 だが、金は別の目的にも使われていた。

松原「固定費はどう使われるか?」
野中「僕は国対委員長をやってなかったから知りませんけども、国会を動かしていくのに必要だったのでは?」

 参議委員で当時過半数を割り込んでいた与党自民党。政局の運営には野党との連携が欠かせない。国対委員長に渡す金は慣例で決まっていたという。

野中「これはある程度僕も疑問を感じながらも、慣例だからと思って持っていかせた。あの当時は野党工作がいるときですからね。」
松原「機密費はどう使われたんですかね?」
野中「そりゃ知りません。国会対策委員長に渡した後の使い方は知らない。」
 官房機密費の総額は現在年間14億6000万円。会計検査院の監査を受けることはない。そのため、機密費の流用は常に囁かれてきた。

 2002年共産党志位和夫委員長(当時)「国民の税金を勝手放題なやり方で…」

 共産党が入手した、宮沢政権の時代、加藤紘一官房長官の手で作られたとされる文書(金銭出納帳のコピー)。支出先は、政治家への贈り物やパーティ件の購入などとなっていた。

 だが、その真偽について時の政権が答えることはなく、機密費は厚いベールに包まれたままだった。
 そんなベールの裏側で渡されていた金があった。
 野中氏が初めて口を開く――

野中「これはその、盆暮れの、それぞれ総理を経験された方とか、盆暮れ年2回100万円ほど、定期的に金を送っていた。」
松原「総理経験者の方に定期的に金を送っていたと?」
野中「まあ顧問料のようなもんでね。せいぜい100万くらいですよ。」
松原「月に?」
野中「いやいやいや。盆暮れ」
松原「盆暮れの年2回。なるほど」

 定期的に機密費が渡る先の一つ。それが歴代の総理経験者だったという。盆暮れ100万円ずつ。野中氏によれば、政界を引退した歴代首相には機密費から毎年200万円が渡されていた。支払いは自民党の元首相だけで長年行われていた可能性があるという。

 一方で機密費は、本来の目的である外交にも使われていた。話は北朝鮮外交に及ぶ――

野中「あの頃北朝鮮と何とかしたいという、90年以来のアレがありましたから。そういう面で向こうに行く人は正規の金も出ないし…」
松原「水面下でパイプを作ったり、交渉するときのために…」
野中「そうそう」
松原「直接北朝鮮に行く議員の方に」
野中「そう。渡していいか悪いか、効果があるか無いか位は見極めていた。」
 議員外交の旅費としても使われていた機密費。では、機密費はどのように使われてきたのか。

 機密費は記録が存在しないとされてきた。
 だが、野中氏は、長官就任の際、内閣官房の担当者からノートを手渡されたという。そこには、これまで金を渡してきた相手が記されていた。

野中「(内閣官房の担当者から)「過去の実績が(ノートに)記録されておりますから、それを参考にしてやって頂いたら結構です」と言われた。」
松原「それも慣例になっていたということですか?」
野中「そうですね。(引き継ぎ帳に)書いてあることをそのまま引き継いで。」

 過去に機密費を渡した先が詳しく記録されていたという引き継ぎ帳。支払うべき相手と金額が具体的に書かれていたという。

 記録はないとされていた機密費。
 だが、野中証言によって、自民党政権ではこの引き継ぎ帳が代々受け継がれていた可能性が出てきた。

野中「これだけは従来から持っていってましたから、"これはきちっと引き継いでやってください"ということで引き継ぐわけですから」
松原「代々そうなっているということ?」
野中「じゃないですかねえ。私は1回しか官邸に入ったことはないから分かりませんけども」

 引き継ぎ帳に記された定期的に支払われる機密費。いわば固定費だが、野中氏によるとそれは総額で月5000万円に上っていた。それ以外に、その時々の判断で支出される金もあった。その額は――

野中「(固定費以外で)一番多いときで7000万円。」
松原「月にですか?」
野中「うん。それは覚えている」
松原「そのときは、なぜ他の月より多かったんでしょうか?」
野中「片づけていたら、それだけになっとったというだけの話」
松原「特に何かがあったというわけではなく?」
野中「ええ」
松原「機密費のあり方はどうあるべきだと思われますか?」
野中「やはり外交的にはある程度公開できないものもあるのではないかと思います。ただ、その他のものについては公開していく、透明化していくそういうやり方がいいと思いますね。」

 野中氏の証言はこの後官房機密費、その”核心”へと及んでいく――。



【2010年4月19日放送 TBS『NEWS23クロス』特集:官房機密費の真実・第2夜】

 昨日に引き続き、シリーズ追跡官房機密費。機密というベールの影でその一部が流用されている実態を夕べの野中元長官が初めて証言しました。今夜はその第2弾「機密費に群がった人々 その実態」です。

野中「もう辞めてもうじき死んでいくから、(実態を)正確に言っておいた方がいいと私は思うもんですから。」

 小渕内閣で内閣官房長官を務めた野中広務氏。外交の情報収集に当てる予算官房機密費が国会対策などに流用されている実態を「23クロス」で初めて語った。

野中「野党工作がいるときですからね。我々のときは」

 官房機密費は情報公開もされず、会計検査院のチェックを受けることもない。野中証言で分かった一部が流用されていた実態。機密費は歴代の元総理に顧問料のような形で定期的に(年2回100万円)渡されていたという。永田町では――

平野博文・官房長官「野中元長官がどういう風に言われたかというのは、私は承知してませんし、それは自民党時代の話でしょうから、私は全く承知を致しておりません。」

大島理森幹事長「官房機密費というのは機密費でありますし、私からお答えするものではないと思っております」


 官房機密費は内閣官房長官がその時々の判断で自由に使える金とされる。野中氏の時代は、最高で1億2000万円に上った。当時はそれに群がる政界関係者がいたという。

松原「変な話、それにたかってくる議員さんもいらっしゃるということですか?」
野中「ないとは言えませんね」

 ある時野中氏は、時の総理小渕氏からこんな相談を持ちかけられ、驚いたという。小渕首相からの相談とは――?

野中「「最近家を建てたから3000万円ほど祝いをくれ」と電話がかかってきたんだけども、官房長官、どうしたらいいと思う?と」
松原「総理から相談が?」
野中「そう」

 「家の新築祝いに3000万くれ」。総理に電話をかけてきたのは、引退した政治家で、その時政治評論家をしていた人物だったという――

野中「何を言うんですかと。”そんな人は政治家も、何もかも去った人じゃないですかと。総理に親しいからといって、そんな安易な電話をかけてきて、そんなことに金を出したらおかしくて笑い者になりますよ、ここからは一切出ませんよ。総理あんたは人がいいから、自分の金からも出しなさんなよ”と言ったらね、”分かった分かった”と総理は言ってましたけどもね。結果的にはね、1000万円やそこらは出したのではないかと思ってますよ。」

 今回野中氏が証言したのは、「引き継ぎ帳」の存在。機密費の支払い先は、その一部が引き継ぎ帳に記録され、金額も決まっていた。それは代々自民党政権で引き継がれていた可能性が出ている。
 引き継ぎ帳に書かれていたのは、月々総理(小渕首相)に1000万円、国対委員長に500万円等々。中にはこんな顔ぶれも――

野中「(政治)評論をしておられる方々に、盆暮れにお届けするというのは額までみんな書いてありました」

 機密費は当時複数の政治評論家に盆暮れに配っていたという野中氏。内心割り切れない思いを抱えていたという。

野中「まあ、あいさつ程度のことですけども、盆暮れやってるのを見て、ああ、こんなことをせなならんのかなと。あんだけテレビで正義の先頭を切るようなことを言っている人が、こんな金を平気で受け取るのかなと思いましたね。」

 さらに、国会議員のなかにも、機密費をもらいにくる人々がいた。外遊、海外視察に向かう餞別として。それは長年続く慣例だったと言う。

野中「まあね、野党問わずに外遊するので、癖であそこに行ったらもらえるというのを知っている人がおりましたね、ある程度。そういう人が来たことはあります。私は人を見て、お渡しする人と、しないで話のままで帰ってもらった人がおります。」
松原「外遊する議員にいくら位渡していました?」
野中「せいぜい、50万~100万円。」
松原「使われた官房機密費の中で、この使い方は良かったなと思うものはありますか?」
野中「北朝鮮の情報を調べるのは良かったと思うし、ロシアの政変を察知するのにも良かった、そう思います。」

 その当時、(エリツィン大統領が辞任し)ロシアでプーチン氏が大統領代行に就任するのを小渕内閣はいち早く察知したという。そうした情報収集にも機密費は使われていた。今後のあり方について野中氏に尋ねた。

松原「今後の機密費のあり方を個人的にはどうお考えですか?」
野中「個人的にはある程度明確にして、不透明な、あるいは私的な官邸機密費の使い方ができないような状況を、きちっと仕組み的にしておくべきだと思いますね。」

 機密というベールの影でその使い方が問われている官房機密費。年間予算は今年も年間14億6000万円が計上されている。(終)

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