ご提案ありがとうございます。
一見皆さんの要望を叶えているように見える本提案ですが、結果から言うと「ユーザーが任意・能動的にできる」という条件では、いくつかの点でやめたほうが無難だと判断します。

(1)日本の一部層(我々の定量調査ではアーケードに20%台、家庭用数値は未公開)では
K.O後の空中コンボ継続ならびに追い打ち動作について「死体蹴り」という解釈、
K.O後の気合溜めを「挑発ないし侮辱行為」と解釈、
K.O後のその他攻撃を伴わないステップ等を含む行動(前方ダッシュで押す、バク転する、ずっとしゃがむなど)を「挑発」と解釈、される事が確認されています。
ご提案頂いているものも、後述する理由で同様もしくはもっと悪い解釈を生む可能性があります。


(2)ご提案のあったジェスチャーのうちいくつか、もしくは日本では良いこととされるジェスチャーや礼節文化が、国や地域によってはこれも使う場面にもよりますが、それが必ずしも挑発と解釈されるわけではありませんが、まったく別の誤解を招く表現になっている可能性があります。
固有のキャラクターが固有の設定上ある国の出身や文化としてそのようなポーズを「固有で自動的に発動する」勝ちポーズなどとは意味合いが違い、「ユーザーの行動」となるので少し注意が必要です。


さて、上記理由の(1)について少し解説します。
海外においては死体蹴りという表現で語られる事も無く、ほぼ議論の対象になる事が無いため、現状でも仕様でも問題はありません。
ですが、日本のコミュニティにおいては、サイレントマジョリティである大多数は置いておいたとして、一部とはいえK.O後の動作に対して非常に否定的な意見ないし不満を強く抱いている方もいらっしゃいます。


我々は少数派だからといって対策を講じないわけではなく、優先度をもって様々対応や楽しみ方を提供していく所存ですので、このあたりの対応は今後のアップデートで別のアイデアを持っています。
一度実装した例ではTAG2のK.Oされた瞬間昇天して相手が触れることができない天使の輪アイテムですがTAGはゲームの仕組み上K.O後は即カメラカットしているので無意味でした。

鉄拳7でのみ実現可能な手法は、1基板1画面を利用した方法、つまりK.Oされた側に相手の動きを反映しない手法ですが、実はこれも技術的な問題以外に様々な問題を孕んでいるので実装は容易ではありません。
単純に相反する価値観を双方保ったまま解決するのが難しいのでなかなか実現しないというのもあります。

話は戻って。
まずこのK.O後の行動可能時間に関してですが、K.O直後に操作を禁止する「鉄拳1」の仕組みや、描画カメラとメモリの都合上一気に画面をカットしてしまう「TAG1&2」の仕組みと比較した場合、圧倒的にK.O直後に少しの猶予時間があるほうが好まれる調査結果が長きにわたって明らかに有意差として出ています(大多数)。
K.O後に即カメラがカットされること、行動が即制限される事への不満感は大きく、K.O後に若干の操作猶予があったほうが大部分でポジティブな意見が得られることはTAG2で改めて判明した調査結果です。

多くの場合は空中コンボ操作の継続や、死体蹴りという意志や意図ではないところのフィニッシュムーブ的な操作の「キリ」に対する無意識的な欲求によるものです(無意識ゆえにサイレントマジョリティなのです)。
人間が、何か一連の行動に「キリ」をつける場合にとる最後の行動や、「流れとしての行動」に対する専門的な話をここで展開する気はありませんが、そういうものが大多数の行動と評価に影響しているとここではご理解ください。

一方で、先に述べたこのあたりの行動を程度の幅こそあれ「死体蹴り」として一部強く嫌う層がいるのも明白であることは、ひつこいですが我々はちゃんと認識しています。
「程度の幅こそあれ」というところですが、これは大きく幅があって、

■「空中コンボの延長と認められるものは別に不快では無い」 とする方も居れば、 「それさえも死体蹴り(死に体なので)」 とする方も居ます。

■「踏み付け系攻撃だけは死体蹴りとして不快」 とする方も居れば、 「1回ならわかるが2回目からは明らかな死体蹴りなので不快」 とする方も居ます。

■「K.O後の気合溜めは明らかな挑発(ないし死体蹴りに類するもの)」 とする方も居れば、「しゃがんでダウンしている相手に、にじり寄る行動こそ挑発(ないし死体蹴りに類するもの)」とする方も居ます。

例を挙げればキリないのでこれぐらいにしますが、
上記のような例全てをまとめて「不必要な挑発または死体蹴り」と解釈される方もいらっしゃいます。
ですので、よく一言に「死体蹴り」と言っても、このように「大きな幅がある」のです。

念のためですが、ここまで例を読んで
「面倒だから、とにかくK.O後の行動部分をなくしちゃえばいいじゃん」
とおっしゃる方は長文を読解するのに向いていない方なので、もう一度最初から読み直すことをお奨めします。
ちなみに私は「説明を短くまとめるのに向いていない」という部分を自身で認めつつも、本来の意図としては誤解を避けるためであり、タイトルだけ読んでまともに中身を読むのが面倒で見当違いな意見を言ってくるタイプの人の意欲を削ぐためにわざと長文を書いている、というのがあります。

話を戻して。

このように、K.O後の行動に対してネガティブな反応を示す層の方々にも幅があるわけです。
「お辞儀ジェスチャーならムカつかないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、これも、プレイヤーが能動的に出せる以上は不快な要因になりかねません。

例えば、「間」によって感じる不快もあります。 K.O直後の早いタイミングのお辞儀は不快!というのはあるでしょうし、K.O後はピタッと行動しないが画面が切り替わる寸前でお辞儀開始で、アニメーション中に次のラウンドにいってしまう半端な行動がムカつく!とか、連続で何度もされると挑発に見えるとか。
はたまた、土下座なんてそもそも嫌味か、となるかもしれませんし、合掌も「間」が悪いとなんだかバカにされている気がする。

等々、等々。

「間」というのは、恐ろしいもので、「単体では正しいもしくは推奨される行動」も、「間」が悪いと相手を怒らせてしまうものなのです。
恐ろしいことに、「K.Oした瞬間全ての行動をピタッと止める」行為に対してもそれを「挑発だ」と認識し不快感を示す場合があることも調査で認められています。
もうこうなると、何をもってして相手への侮辱行為とみなすのかは、難しい事がわかります。しかし同時に、この「間」の問題が日本の一部コミュニティで長きにわたって論争になっている理由を紐解く重要なカギだとも思えます。

鉄拳の場合は、対戦中の技を繰り出す行為自体はゲーム操作そのものですので、これを出すことに関しは基本的なゲームの仕組みと自由度としているのですが、結局のところご提案頂いているジェスチャーやそれを出す「間」的なものが作用している事には変わりません。
ご提案のジェスチャーシステムとの大きな違いは、「K.O時にのみ出せる」という点ですね。
これは下手をすると、一部の層からすれば「これこそ真の死体蹴り」と解釈されてもおかしくありません。
わかりやすいく極端なところではモータルコンバット(以下MK)の「フェタリティ」システムがそれに当たりますね。
いずれにしても、K.O時のみ能動的に出せるジェスチャーというのは、一つの側面としては非常に面白いシステムですが、別の価値観をもつ層からは凄まじく嫌われる可能性があります。


価値観の話で言えば、日本独特の価値観に基づいている可能性もあります(断言はできませんし、しません)。

武道における礼節、武士道、などがそれにあたります。
海外でもスポーツマンシップとして広く知られた価値観ですね。

これについては私が論じるまでもありませんが、やはり勝負がついた相手に対して礼節やマナーを欠いた言動は推奨されませんし、不快なものです。
この価値観を基に、ゲームのシステム面への言及をされる方々もいらっしゃいますが、現実的にスポーツや武道の世界でも挑発的な行為や勝負がついた相手への侮辱行為は時折問題になります。
つまり、「やろうと思えばできる」「できてしまうが、やらない」という話と、「できるようになっていることが悪い」という話はそもそも問題が違うのですが、ここを混同される方が居ます。
ゲーム上で何かの行動を制限したとしても、今度は別の手法を問題視する人も出てくるでしょう(ゲーム中の追い打ちやタウントアニメーションなど)、また、その場で台を叩く行為や、相手への罵声やネットでの誹謗中傷展開や、極端な話相手の居るゲームセンターで待ち伏せして罵声を浴びせるなどの行為はどういう形であれやろうと思えば可能です。

また、ゲームという特性上、一概にこうした武道やスポーツと同列で全てを語る事にも賛否があると思います。

ただ、格闘ゲームの場合は「表現がリアルの価値観に近い事(実際の格闘技をイメージさせる)」というところと、基本的には「勝敗」という結果が個人にのしかかるという点が、こうした議論を一部のコミュニティで過熱させる要因のひとつだとも思います。
そこにおいて、特に日本おいてはこの「武道」「武士道」における礼節や価値観が作用するというのはあるでしょうね。
ですので、論理的な部分ではともかく、感情論や情緒的には非常に理解・共感しやすいところです。

我々開発としては、鉄拳のようにそれこそ欧州、北米、アジア、中東、オセアニアとプレイヤー規模が全世界に及んでいるタイトルに関しては、大多数が好む最大公約数の答え見据えつつも、こうした少数ながら一部の根強い意見に対しても応えるべく、先に述べたようなアップデート施策を考えていこうと思っています。
(補足までに、鉄拳はアーケード販売時の市場シェアは80%が日本をはじめとするアジア、オセアニアですが、家庭用の販売シェアは90%以上が日本以外の海外です。鉄拳シリーズ4400万本超のうち、実に2100万本が欧州で売れており、次に北米、残りを他の地域で分ける形です)

と、いうのが我々の見解なのです。


余談ですが最後に、調査結果による統計データに関係なく、私の個人的な経験に基づく印象の話をします。

これは私個人の経験ですので一般論化するつもりはまったくありませんが、「死体蹴り」に関する対策要望をされてくる方の多くは非常に不快な想いをされて憤慨されています。
これはここまで説明してきたとおりです。

ただ、私のTwitterやFacebookやポータルサイトのサポート窓口に「武道」や「武士道」や「スポーツマンシップ」を例えにして、様々な要望をされてくる方の8割がた(個人の計測と印象です)の方の「言葉づかい」や、いわゆる「口の効き方」が非常に悪く、ネットコミュニケーション上のマナーというものさえ感じられないという印象があります
(無論それ以外の方は、非常に痛切かつ真摯に訴えてきてくれていますので、このような方はこれまた一部の中の極一部であるという理解です)。

「ムカつくんだよ!速攻直せよ!お前ら武道の心得とか武士の情けとかそういう精神を知らんのかボケ死ねよ低能てめえそれでも日本人かよ」
(サンプル用にマイルド加工しております)

ぐらいの事を言ってくる方もなかにはいらっしゃいます。

もはや「武道」や「武士道」や「スポーツマンシップ」を語りつつも、自身は怒りにかられてそれらを失い、正反対の言動をしている事に気づかなくなっているわけです。

これを見てしまうと、むしろ私個人としては別の疑念を抱かざるを得ません。

ひょっとしてこの人、むしろ死体蹴りをされたらその怒りで、自身が勝利した際にはやってる側なのではないかと。そして、それは先ほどの報復や怒りを昇華するものであり、正当化される、いや、それさえも考えられないほどに怒りを周囲にぶつけている、まさにマナーという言葉から程遠い行為をされている方なのではないかと。
もしくは、やり返すようなことは絶対しないが、相手が第三者であればその怒りをマナーを欠いた言葉使いや、やり方でもってぶつけるのは構わない。ましてそれがゲームの開発者であればなおさらである。
と、思って自身が内包する矛盾に気づかないほど怒りに飲まれてしまうタイプの方なのではないか?

そんな疑念を抱くことさえあるのです。
まあ、感情的にはそれがある程度は普通なんだとおも思いますし、感情論としては理解できます。
しかし理論的にはあまりに冷静さを欠いた議論と言葉使いなんじゃないのか?相手への尊敬も尊厳もあったものではなく、それこそ貴方の武士道精神とやらはどこへ行ったのですか?
という個人的感想を抱くことが多々あります。
逆に言えば、K.O後にこのような不快な体験をされた方が徐々に荒んだ結果なのかもしれないと類推すれば、これは何らか救済策が必要である、と考えているのでアップデートの施策も模索している、ということです。

いずれにしろ、先に述べたようにK.O後の行動制限を求めない大多数に対しても、行動制限を求める方々に対しても何らか応えていければとは思っております。

以上です。

RT@hiro62gt 原田さん鉄拳7最高です!一つ提案ですがKO後の相手に敬意を表する行為として合掌、お辞儀、敬礼、土下座等ができたら良いなと思いました。キャラによってそういった行為が合う合わないあるかと思いますが、楽しく対戦ができた相手にお礼を言いたい気持ちがあります。

Reply · Report Post