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13th Feb 2019 from TwitLonger

社会構想研究会 第一次政策提言書(テキスト版) の上げ直しです



社会構想研究会 第一次政策提言書(テキスト版)

   2018年12月25日
立憲パートナーズ 社会構想研究会 (非公式)


目次

はじめに
第1章 社会構想のアプローチとは
第2章 今の日本社会の課題とは
1.信頼の喪失と分断
2.活力の失われゆく社会
3.平和と安全の危機
第3章 未来の日本社会の目標像
1.信頼と希望のある社会
2.活力のある社会
3.平和で安全な社会
第4章 今から未来へ結ぶ政策とは
1.国のかたち
1.1 立憲民主主義
1.2 税制
1.3 人権の保障
1.4 情報公開
1.5 財政・金融
1.6 行政・自治・ガバナンス
(1)国の役割
(2)分権
(3)立法機関・行政機関
(4)官民連携
(5)社会的包摂への戦略的投資
1.7 科学技術・イノベーション・教育研究
(1)科学技術・教育政策、大学・研究支援
(2)イノベーション政策
2.外交・安全保障
2.1 防衛・安全保障
2.2 外交・国際課題
3.共生社会
4.教育・子ども・子育て・キャリア
4.1 子育て・保育
4.2 教育・キャリア
(1) 総論
(2)権利教育・社会教育
(3)高等教育・専門教育への支援
5.暮らしの安心
6.経済、雇用、地域
6.1 経済総論
6.2 農林水産業
6.3 労働・雇用と経済
6.4 産業政策・地域政策・国の豊かさ
(1)官民の投資
(2)地方政策
(3)国の豊かさ
7.エネルギー・環境、災害・震災復興
第5章 今日すぐできる「はじめの一歩」とは
1.党のあり方
1.1 有権者との様々な形式での常時的な関係作り
(1)広報資料
(2)ネット番組・配信
(3)リアルの場での交流
(4)パブリックファシリテーション
1.2 組織改善
(1)マネジメント
(2)人材のリクルートと育成
(3)オペレーション
1)党内コミュニケーションの改善
2)トラブルの解消と未然防止
1.3 あたらしい政党のファンドレイジング
1.4 メディアとの関係作り
おわりに

参考資料


はじめに

 「今問われているのは政権構想ではなく社会構想。政治が変わるのは社会が変わるから。皆さんの意識が変わるから」
10月3日の有楽町で語られた枝野代表のこの言葉をきっかけに、私たち社会構想研究会(社構研)の活動は始まりました。

 社会構想研究会は立憲パートナーズ有志による非公式チームで、党組織とは独立の立場から政策提言し、議員とパートナーズがともにレベルアップしていくことを目指しています。

 現在、社会構想研究会は全国各地に18名のメンバーがおり、日常のやり取りを軸に定例会合を重ね、市民の視点で社会構想に取り組んできました。日本には、明治期の五日市憲法や、2000年代前半の奈良マニフェスト運動など、市民発の政策提言の文脈があります。社会構想研究会は、その文脈を継承するものだと考えています。


第1章 社会構想のアプローチとは

 私たち社会構想研究会は、表面的な議論に陥らないよう、日本社会の課題の根っこにある真因(システミックプロブレム)を抽出しました。「システム思考」と「デザイン思考」という方法論を用いて、「昭和以来の日本社会はどんな姿をしていて、今はどのような状況か」の検討を続けました。問題を解決するためには、その源にある課題に取り組まなくてはならないからです。

 議論を続ける中で、私たちは日本という国を「船」として考えることにしました。

 この船は今、老朽化が進んでおり、1等船室から3等船室の格差や分断も広がり、船長や乗組員への信頼も失われています。

 20年ほど前と比べると、2等船室がどんどん小さくなり、3等船室が大きくなってしまいました。小窓や灯りやもない船倉で暮らさざるを得ない人も増えています。

 それぞれの人の視界が限られていて、発見や知恵を共有し対話し構想する場所も欠けているために、この船に乗っている人たちは、船体と船が航行する大海の全体像を持ち得ていません。

 乗客も乗組員も、いや船長すら、この船がどこに向かっているのか、どちらに進路を向けていけばいいのかわからないのです。

 ここで一度、私たちは甲板に集まり、この船をどう修理していくか、私たちの船が浮かんでいる海はどうなっているのか、どのように進路を取っていくのか、見通しを共有していきましょう。

 船底にも灯りや窓を取り付け、3等船室をメンテナンスし、2等船室を広くし、船底から3等船室へ、3等船室から2等船室へと上がれる通路を作りましょう。船室ごとに分断され孤立するのではなく、集まれる広間を作りましょう。
 船の機関や構造も、21世紀の海を渡っていけるものに進化させていきます。
 新しい船長は乗組員や乗客に常に説明責任を果たし、対話と交流を重ね、方針を示します。乗客は乗客のままではなく、乗組員にすべてを任せきりにする必要はありません。あなたも乗組員の役割の一部を担えるのです。

【ポイント】
訴求力のある「まっとうな政治」というメッセージへの共感から、「まっとうな社会」「まっとうな国」への希求を呼び起こしていく。


第2章 今の日本社会の課題とは

 今の日本は、改修待ったなしの老朽船です。すきま風が吹き込み、船底に穴が空き、構造は時代遅れで、エンジンは推進力を失っています。いったい何が起こっているのか、まずは課題の全体像を共有してみましょう。

1.信頼の喪失と分断

 信頼と希望の喪失により将来への期待が持てず、あらゆるものが縮小再生産に陥っています。根本的な原因は政府や国家に対する信頼や、国民相互の信頼が失われていることです。
 経済の「信用創造」も、意識レベル・社会レベルの信頼が伴わなければいずれ破綻します。

 少子化は止まらず、日本には1億2千万人の人が暮らしているのに、今年生まれてきた子どもはわずか90万人です。もし日本が人口50人の集落だったら、およそ2年半の間にようやく1人子どもが生まれてくるような状況です。
 介護の現状も深刻さを増しています。病気や障害、老化、失業、教育支出などのリスクを受け止めて吸収する社会になっていないため、リスクの発生が貧困に直結してしまうのです。

 制度の狭間で救済されない人の多さ。社会保障を削減しようとした結果、全てを失わないと公的支援が受けられないようになり、かえって再起不能になる人を増やしています。

 税制、財政、金融、経済、雇用のあり方が「弱きを助ける」どころか「強きを助け弱きを挫く」ものとなり、ひいては弱い者が弱い者同士で叩き合ういびつな構造が生まれています。社会保障は負担ばかりが際立ち、将来の不安は解消されていません。

 人々を敵味方や勝ち組負け組、優れた者と劣った者に分ける対立や二択が煽られ、分断が作り出されていることが、相互不信を生み出し、格差をいっそう激しいものにしています。「生きづらい」社会を作り出してしまっているのです。

 しかし、見識ある人々がすでに指摘しているように、「政治を一番必要としている人が一番政治から遠いところにいる」「何かトラブルが2つ以上重なると誰でも生活保護受給者になりうる」のです。支援を求める人をバッシングしていては、本当の課題はいつまでたっても解決しません。貧困のブラックホールが、ますます多くの人を吸い込んでいくだけです。

 政府による情報隠しと改竄、不公正・不透明な行政介入は、事態をさらに悪化させています。

 こうしたことにより、国と国民の間の信頼が壊れただけでなく、投資家や実業家も日本の将来に懐疑的です。

 「今だけ、金だけ、自分だけ」。いや、自分すらどうなるかわからない。身の回りの安心すら失われ、生活が足元から崩れようとしています。このままでは、日本の衰退はますます長期化し、日本はもはや先進国とは言えないところにまで成り下がってしまうでしょう。

2.活力の失われゆく社会
 多くの人が「結婚しない出産しない消費しない」「結婚も余暇もままならない」社会になってしまいました。

 昭和の時代の経済成長によって「普通(ごく当たり前の生活)」のレベルはずいぶん上がったはずですが、今やその「普通」のレベルに達していない人の方が多数になりつつあります。

 「親が自分にしてくれたことを自分の子どもにしてあげられそうにない」、そんな悲観が広まっています。

 年収が300万円にも届かない人が増える一方、超富裕層の資産や巨大企業の利益は拡大を続けています。この格差は成長を生み出すどころか、むしろ日本のそこかしこから活力を奪っています。

 一部の人に富が集中し、大多数の人々の収入や貯蓄が目減りしていく状態がいかに経済的に脆弱であるかを、私たちは「失われた30年」を通じて学びました。

 不安定雇用と低賃金、経済の停滞が続いています。

 高度な知識集約型の仕事や金融・不動産投資業、資本家層に高所得者が集中する一方、国内企業の多くは事業モデルの再構築に苦慮し、大多数の労働者は高付加価値の仕事に移行することができず、加えて企業の労働分配率は低く抑えられ、日本はかつての「一億総中流社会」から「階級社会・階層社会」に様変わりしています。

 資本の過度な大都市集中、中央からの統制や介入のなか、地域経済の活力と主体性が衰え、地方の生活の雇用の実態はいっそう深刻です。

 東京と地方の格差、都市と農村の格差が拡大したままでは、日本の持続的発展は望めません。

 経済は旧態依然とした国策に翻弄され、産業の革新と新産業の発展において大きく出遅れています。方向性を見失ったまま、新事業、設備投資、研究開発は停滞しています。

 さらには、文化や歴史を刻むものが失われ、風情のある場所は取り壊され、通い慣れた店は次々と閉店していきます。本当の意味での豊かさを、この国は無くそうとしています。

 日本が活力を失ってしまった最大の原因は、人間をあまりにも粗末に扱ってきたことです。

 子どもの7人に1人は貧困家庭に育ち、若年層の死亡原因の第一位は自殺、非正規雇用が全労働者の40%を超え、働いても貧困から逃れられないワーキングプアが増えています。

 日本人も外国人も、劣悪な環境で働き、人権や尊厳すら奪われている人が大勢います。正社員も非正規労働者も例外ではありません。労働により健康を損ない、命を落とす人が後を絶たず、その近親者を悲嘆の底に叩き落す社会は、本末転倒と言わざるを得ません。

 教育は上意下達的で締め付けが強まっています。学校の担う役割に対して人員は不足しており、教育において人格の個性や多様性を尊重する度量を失っています。教育への公共支出は先進国最低レベルであり、その分は家計の負担として重くのしかかります。家庭の格差(文化資本やネグレクトなど各種の問題が含まれる)、経済格差が、そのまま子どもの将来を狭めています。

 進学・学業、就職でのつまずきや職業選択後の挫折からの再起が難しい、なかなかやり直しのきかない社会でもあります。大学卒業時が不況と重なった世代は年齢が上がっても収入が低いままであり、大卒者と高卒以下の人の間でも正規雇用の仕事に就いている割合に大きな差があります。夢破れた人が再出発できる環境がなければ、何かに挑戦する人の数はますます減ってしまうでしょう。

 最も必要な投資は、人と教育への投資なのです。しかし日本はこの投資が先進国で最も低く、経済の成長力や国民の生活水準、国民の幸福度も先進国最下位レベルに転落しようとしています。

 経済格差が貧困を産み、貧困が教育格差を産み、教育格差が貧困やネグレクト、さらには子どもを産み育てることすらできない状態を再生産していく悪循環を、ここで断ち切らなくては、日本の未来は暗いままです。


3.平和と安全の危機
 気候変動や都市問題、エネルギー問題のような世界的課題に対して、日本はリーダーシップと責任を果たすことができていません。

 外交の視野が狭まっていることにより、日本は世界の潮流から外れ、取り残されようとしています。

 防衛支出は不合理な増加をみせており、政治やメディアの間には他国との対立を煽る論調が蔓延し、世論もその影響を受けています。

 憲法の規定は軽んじられ、正当な手続きを経ないまま集団的自衛権の行使容認、「後方支援」という名の海外派兵、他国攻撃型兵器の導入へと進んでいます。

 「安全保障」を標榜して進められている現政権の政策が、本当に私たちの安全につながっているのか、見直してみませんか。


第3章 未来の日本社会の目標像

 先の章で述べた日本の厳しい現状にもかかわらず、私たちの選択次第では、「まっとうな社会」を実現するチャンスはじゅうぶん残されています。
 その選択とは、経済の成長で所得を増やし、社会保障を強化し、格差の是正と少子化の解決をするという「老朽船改修」への社会的合意です。

 未来の日本社会の目標像は、より柔軟な選択肢と軌道修正の能力を持った「したたかで優しい国」であり、人間の社会保障のために経済の質的な成長と持続可能な発展をリードする日本です。

 まっとうな社会が実現されたときの10年後の日本の国の姿を見てみましょう。

1.信頼と希望のある社会
 国も社会も、人間中心に運営されなければならないという基本原則が確認されています。社会の全体像を理解する公共意識を共有し、経済成長と所得増に伴う社会保障によって社会の穴や亀裂が修復されていきます。

 重荷を分かち合うこと、「誰一人取りこぼさない社会的支援」が大切にされ、国全体の相互信頼を高めています。

 政府が情報公開に真摯に取り組み、国民と説明や対話を重ねることで、行政が機能するようになりました。行政と議会は国民・住民と対等に積極的につながり、国民・住民の声、現場の声が政策に反映される機会が広がっています。

 未来への投資に対して社会的な合意ができており、教育は国の柱であるという認識が共有され、教育と研究への公共投資がOECD平均を上回る水準まで引き上げられています。それが教育機関と研究機関のレベル向上につながり、乳幼児保育から大学の学費の低廉化・無償化まで切れ目のない支援により安心して子育てができるようになり、所得が平均以下の家庭でも子どもを2~3人育てて大学まで進学させることが可能です。もちろん、親のいない子どもにも将来の可能性が大きく開かれています。

 学校は、知識や技能を学ぶだけでなく、主権者教育、社会教育、人権や法規範を学ぶ場としても機能するようになりました。

 多様性を認め合い、肌の色や言葉の違いも、所得や財産の違い、年齢の違い、生物学的な性やジェンダーの違い、さらには性的指向、性自認の違いも超え新しいつながりと共生が実現されています。

2.活力のある社会
 やり直しの機会がある社会、さまざまな選択肢のある社会となることで、人々の活躍の場の広がりと自己実現・自己肯定、相互承認を体感できるようになり、日本に活力が戻っています。

 経済格差・機会格差の解消が、持続的な発展を生み出していきます。

 カギとなったのは「資本の回復」です。

 中央集権型のトリクルダウンから、地域発の連携型(ネットワーク型)の経済に転換しています。地方では都市同士の連携、都市と農村の連携による自律的な地域経済圏が成長し、地方経済は力強さを増してきました。

 真の技術革新、産業構造転換、社会システム更新のための官民投資が合理的に行われ、日本は視界と方針を取り戻しました。絶え間ないイノベーションによる新たな産業と雇用の創出が進んでいます。低炭素社会、循環型経済、分散型エネルギーシステム、自然共生型のインフラ整備、農林漁業、地域文化の保全が推進され、起業のための基盤が整っています。

 高度な知識産業が経済の牽引役となり、裾野の産業も成長し、良質な雇用が生まれています。

 活力を取り戻したのは経済だけではありません。

 人間が大切にされるようになりました。

 雇用は正規・非正規の格差から、フルタイム・パートタイムの均等待遇へと転換し、雇用の質が改善しています。労働環境・労働条件を向上し、労働者の権利を守る法律とチェック体制の整備も進んでいます。

 介護・保育・教育・医療に携わる人たちの待遇が改善されたことにより、「人」の成長や健康、生命に密に関わる仕事の担い手が増えています。

 教育費の負担が軽減され、何歳になっても学び直しができるようになり、離職した人や失職した人も貧困に陥らず、新たなキャリアの機会を手にします。

 高校の段階から職業教育、実務教育、専門教育、技術教育を受ける人も、大学や大学院でさらに知識や研究実績を身に付けて働く人も、それぞれゆとりのある生活を送っています。学科や学校の移動もスムーズで、「一度選択したらそれしかできない」ということもありません。

 新時代の日本は、文化や環境、自然風土、生態系のもつ価値も見落とすことはありません。これらの幅広い「資本」の豊かさが、日本で暮らす人々の生活や経済を支えています。

3.平和で安全な社会
 核兵器禁止条約を含めた人権・環境・軍縮に関する国際的枠組みに参画し、積極的に推進しています。東アジア全体での人権状況の向上を主導し、人道戦略によって国際秩序に貢献し、対外的信頼を回復させています。

 人権と多様性が守られ、社会が安定している「賢い共生社会」日本は、世界の人々を惹きつけています。

 すべての人が人格を持った個人として尊重され、尊厳が守られることが、人間にとって最も重要であり、国の目的、政策、制度もすべてここから出発します。

 豊かで生き生きと暮らせる日本を作り直すため、立憲民主党はまず何よりも人を大事にします。


第4章 今から未来へ結ぶ政策とは

 ここまで、現状の日本の課題と、未来の日本の目標像を、皆さんとご一緒に見てきました。では、その目標像を実現するためには何が必要なのか、8つの分野で考えていきます。

1.国のかたち

1.1立憲民主主義
 人が二人以上いれば、自分自身とお互いの安心や生存、豊かさをどうすれば守れるかを考える必要があります。それが社会というものです。

 権力のある人が何でも好き勝手にできるのならば、権力のない人は安心して生きることができません。多数派が何でも好き勝手にできるのならば、少数派は安心して生きることができません。かつて日本にもそのような不幸な時代がありましたし、他の国にもありました。

 ですから、日本を含む世界の多くの国は、国民一人ひとりが主権者であることを確認し、人間をお互いに尊重し、社会の危険や暴力を防ぐための基本的なルールを作ったのです。それが民主主義であり、立憲主義です。

 憲法の第一の目的は、権力者の行動に制限をかけることにあります。
 国の政権を預かるということは、国民を巻き添えにするほどの強い権力を手にするということです。どんなに偉大で良心的な人物でも、権力の座にある間に大きな過ちを犯す場合があります。もしも独裁制のもとで誤った判断がそのまま実行されれば、その被害は国民におよびます。
 ですから、過去の最も偉大な指導者たちは、むしろ自ら進んで憲法と議会によるチェックと縛りを求めたのです。それこそが偉大さの証明なのです。憲法の縛りや議会の監視を逃れようとする政治家は、必ず国を誤った方向に導きます。

 選挙で勝ったということは、全国民に向かって政権を運営する資格を与えられたということであり、選挙に勝ったら何をしてもいいということではありません。
 自分と異なる意見も含め、さまざまな立場を十分に検証して討議することにより、政治行政の劣化を防ぎ、改善を促すために、日本国は憲法のもとで議会制民主主義を採用しています。その叡智と伝統を守り、後世に引き継いでいくことは私たちの使命です。

 すべての人が、民主主義政治に参加する権利を持っています。人々が参加しやすい政治にするための制度改革を行います。

1.2 税制
 納税は社会的連帯です。社会的信頼があって社会的連帯が生まれます。私たちは、「税金を払ったぶんだけ世の中や生活が良くなる」という前提を日本に取り戻します。

 消費税増税に伴って導入が検討されている軽減税率やポイント還元策などはその場しのぎで矛盾をはらみ、過度の複雑化をもたらすものであり、税の公平さを担保できるとは到底考えられません。
 現段階での消費税の10%引き上げは中止を求めます。万一現政権により消費税が引き上げられた場合、経済状態によっては引き下げも検討します。

 税収増はまず景気回復によって成されるようにすることが王道であり、増税はそれでも足りない場合に各階層の担税力・応能負担の観点での公平性に配慮しながら段階的に行うことが必要です。

 加えて、中所得~低所得層の税負担を測る際には、社会保険料を一体として見る必要があります。
 日本よりも消費税率の高い国(正確には海外の多くの国では「付加価値税」)の社会保障は税方式が中心であり、だからこそ高い税率にも一定の納得感がありますが、日本では中低所得者は収入に比べて高額の社会保険料を既に負担していることには留意する必要があります。

 そのため増税を行う際には、まずは超高所・資産、そして給与所得に比べ税率が著しく低い金融・キャピタルゲインから手を付けざるを得ません。
 また、どの階層に増税するとしても、現在失われている国民の政府への信頼を回復してからでなくてはなりません。

 自動車税の走行距離従量課税制など不公平な増税案を撤回し、公平な徴税のために、税制度の総点検を行います。
 また、消費税から付加価値税への移行の検討、給付付き税額控除の導入準備など、国民の生活・経済に配慮した税制度の検討を行います。

【税制改革の方向性】
(1)建設国債の発行も視野に、「人への投資」と「社会のセーフティネット」、「社会・経済・産業構造のアップデート」を中心とした財政出動を行い、経済回復による税収増加を達成します。
(2)経済の回復とともに、法人税、金融・資産課税、所得税などの税率の見直し(最高税率40%台前半の適度な累進制)、租税回避対策を行い、税の捕捉率を引き上げ再分配機能を強化します。
(3)消費税については税率の見直しにとどまらず、付加価値税への移行検討も含めて制度をゼロベースで見直します。
(4)就労支援と低所得世帯支援のために給付付き税額控除制度の導入を検討します。
(5)中小企業支援税制を導入します。
大企業ほど法人税負担が軽くなる現状があるため、大企業と中小企業の法人税実質負担率の格差を是正します。

【金融・資産課税についての提案】
 現在、年4000万円を超える部分の所得には45%の所得税が課せられており、これはおおむね適正といえるかもしれません。一方、株式や不動産収益などを含む金融所得・資産にかかる税は給与所得を含む勤労所得にかかる税よりも著しく低い現状があります。これにより、高額資産保有者と金融資産が拡大し、それを右から左に動かす人ほど巨額の富を得る一方で、肝心な付加価値の開発やイノベーションへのインセンティブを求める力が相対的に弱まります。これはお金や資産のだぶつきや投機化を加速し、経済・金融のバブル化・不安定化をもたらしますので、是正が必要です。

 また金融・債券経済がバブル化し制御不可能になることに歯止めをかけるという面では、取引(トランザクション)ごとの超低率課税は日本でも本格的な検討が必要です。これは膨大な金融市場・資本を対象としつつ、なおかつ「薄く広く」の原則によるものですので、合理性があります。

 一方で、庶民の貯蓄や利息、小額投資・資産運用は家計の安心や資本形成につながり、庶民の生活保障の一端を担うものですので、高額・超高額の収益や資産とは区別して扱う必要があります。ここでも資産課税への累進性を強めるなどの措置が必要と考えられます。

1.3 人権の保障
 すべての人は、たとえ年が若かったり子どもだったとしても、または年を取っているからといって、あるいは性別、障害の有無、性的指向、人種や民族や国籍、生まれた地区や家、職業や社会的身分・組織内の身分、収入や財産の多寡によって、人格や尊厳を軽んじられたり、 意思や感情や思考の表明を押さえ付けられたり、安心して生きることが難しくなったり、健康や幸福を追求する権利を奪われたり、危害・暴力・迫害・脅迫・威圧・憎悪やその扇動をぶつけられたり、生命を奪われることがあってはいけません。
 思想信条や信仰を持っていたり、組織に所属していたり、活動に携わっていることを理由に、これらの権利を奪われることがあってはいけません。

 この権利は、すべての人が生まれながらにして無条件に持っているものです。
 すべての人が生まれながらにして持っている権利を、一方的に取り上げたり、停止したり、留保したりすることはできません。

 正当な理由と手続きと、合理的な最大限の配慮なしに、ある人が不利に扱われたり、何かを強要されたりすることがあってはいけません。

 これが国にとって一番大事な原則です。国家は、この原則のもとで合理的に運営されなければなりません。

 そうでなければ、これだけ多くの人が集まって住んでいる国の中で、皆が共に生きることはできません。基本的人権が守られなければ本当の安心も安全もありません。基本的人権の保障は、最大の国内安全保障なのです。

人権侵害やトラブルについて気軽に相談や申し立てのできる窓口を整備します。

技能実習生制度など異常な低給与、人権侵害的拘束をもたらす各分野の悪弊を一掃し、低賃金長時間労働を招く労働慣行を是正します。

1.4 情報公開
 情報は正しい判断を行うための基礎です。すべての人には、政府が何をしているか、お金をどのように使っているかを知る権利があり、政府には情報を明らかにし、説明する責任があります。

 現在の公文書館の機能を継承しつつ新設する公文書管理庁の指導により全政府関連部局のあらゆる形態の行政関連記録・資料を公文書として十分に保持管理します。公文書管理庁に強力な権限を持たせ、かつ独立性を確保することにより行政の情報公開と監査を徹底させ、不透明・不適正な支出をなくします。

【政策】
以下のようなルールの策定を提案します:
情報公開・公文書管理庁(仮称、以下「公文書管理庁)を設置する。公文書管理庁は内閣から独立した行政機関として国会に報告義務を負う。

行政記録の適正な作成、保存、公開のため、公文書管理庁は内閣や首相を含むすべての公務員、行政関連職員、行政機関に対して必要な助言、指導、指令を行うことができる。

これらの指導、指令が受け入れられなかったとき、公文書管理庁はその執行を求めて訴訟を提起することができる。

公文書管理庁の指導または指令に従わない大臣、部局または職員がいる場合、内閣は命令を発してその部局または職員を公文書管理庁の指導に従わせることができる。大臣がこれらの措置を妨げたとき、首相はその大臣を罷免することができる。

ただし、公文書管理庁または首相の指導・指示が情報の隠匿・破棄を示唆するものであった場合、そうした指導・指示を受けた大臣、部局、職員は公益通報の権利及び不服申し立ての権利を持つ。

1.5 財政・金融
 長期にわたり1000兆円を超える借金が積み重なった国と地方の財政の健全化は、一朝一夕には達成できません。経済の持続的な発展と国民生活の改善なくして財政再建を成し遂げた国はありません。むやみな増税は、経済を冷え込ませ、生活状態の悪化した国民を増やすため、かえって財政再建から遠のきます。

 国家百年の計と言う言葉の通り、国家財政にも一世紀単位の視野を導入します。

 財政再建は緊縮政策ではなく、中長期的な財政健全化政策によって達成します。景気に応じた財政出動と、格差是正のための社会保障と税制改革を実行します。

 異次元金融緩和からいきなり引き締め(緊縮)政策に移行したら、ガラスが熱衝撃によって割れてしまうように日本の経済全体が急激な温度差で崩壊してしまう危険があります。

 消費増税をしても、同時に法人減税や所得減税等を行い、利益誘導的・利権構造温存的な支出をしていてはいつまで経っても財政は改善しません。

 そうした財政手法の誤りにより、財政の健全化はいまだに達成されず、「財政危機」や「行政支出削減」の名の下に子どもたちは粗悪な教育環境に置かれ、生活保護受給者等の社会的弱者は叩かれ、誰もが奈落の底にいつ落ちるかと一瞬たりとも気を抜けず、現代社会の奈落に自分もいつ落ちるかと恐れ、生きづらい社会がいつまでも続きます。

 さまざまな施策が行われてきたものの、結局は場当たり的な支出と、本来必要な社会投資の放棄が繰り返され、本当の財政支出健全化のための計画が一貫して実行されたことはありませんでした。

 日本国債の金利は上がっていません。今後まっとうに財政再建の計画をきちっと立てて内外の理解を得る努力をすれば、国債での調達は支障なくできます。

 財政と国家の建て直しに必要な行政改革は、まずマインドセット、組織文化、オペレーションをアップデートすることです。

 取締役会(内閣)が営業部(財務省)と事業部(各省庁)をグリップしなければなりません。

 議院内閣制による議会制民主主義は財政民主主義の基本です。国の財政・予算・基本政策における閣議の機能と国会の役割を強化します。

 財政出動は、まず暮らしの安心と生活の安定に優先して振り向けます。

 子育てと教育、研究開発への投資を中長期的に充実させていきます。

 数十年単位の経済財政フレームを策定し、「簡素・公正・応能」の税制改革を実行し、経済の回復と所得の向上に伴う税収増加の好循環を作り出します。税による所得再分配機能と景気安定機能を強化します。

 一律シーリングで教育研究事業、生活子育て事業に悪影響が出た反省から、行政予算の一律カットは行いません。むしろ、予算の単年度主義・使いきり主義など行政制度・予算制度における根本問題の改善により、財政の効率化を図ります。

1.6 行政・自治・ガバナンス
(1)国の役割
 国家の第一目的は社会保障です。国家は、「多様な皆」が共に生きていくためのシステムなのです。

 国家の第一目的は経済だという発想もあります。しかし今は、政府が経済政策をアピールするあまり、産業や地域活性化を行政主導にしてきた結果、企業も地域も行政依存体質になり、生産性も収益も上がらず、硬直的な予算投入で負債ばかりが増え、経済が弱体化し、財政が悪化し、そのあおりで公共サービスや社会保障が維持できなくなるという本末転倒を生んでいます。

 経済は民間や個人、地域が主導できるシステムにし、政府はルール作りと分配をしっかり行い、セーフティネットを十分に張る責任を果たします。

(2)分権
 「国に何かをしてほしい」だけでなく、「地方でこれをやりたい」「だからこういう権限を持った地方政府が必要だ」という地方の決定権(地方分権)を高めます。

 企業の本社が東京に集中しているのは、中央省庁、さらにその背後の政権に許認可権や行政指導などで活動を縛られているからです。したがって、地方自治体への権限委譲(「地方政府」)、透明な行政、できるだけ簡素な税制は地域経済を豊かにするために不可欠です。

 地域が連携し合う国。人々が連携し合う国へ。

 一括交付金の復活も含め、基礎自治体への権限・財源の移譲をさらに進めます。

 地方都市を強くし、地方都市が連携して商圏・経済圏を作っていくことが地方の発展には有効です。都市間連携(自治体間連携)による経済圏の発達をうながし、地域主体・地域発の地方再生を目指します。

 道州制による大きな経済圏を作ろうという発想もありますが、一つの経済圏を一つの自治体に収めるのではなく、むしろ各自治体から相互に滲み出して連携し、自治体をまたいで横断する経済圏が形成され、さまざまなパターンでゆるくつながっていくところに地域の未来があります。
 もともと経済圏は多層的だったり、重なりあっていたり、相互に浸透していたりするものです。
 中小都市と地方主要都市、農村自治体それぞれへのエンパワーメントと連携促進を地方政策の基本方針とします。

 地方のあり方としては、経済・事業者・雇用の地産地消と地域外マーケットが連携し、街の周りにものづくり生産者と農家田園が広がる自律的で持続可能な都市と農村のネットワークを目指します。

(3)立法機関・行政機関
 「歳入庁」「公文書管理・情報公開庁」「危機管理庁」の3庁の創設と、国会(議会)の委員会を支える部局の強化は、立憲の行政改革と議会改革の目玉になります。

 議事録など過去の蓄積データの活用や政策の精査、省庁間の連携強化、オープンデータ、オープンガバメントにより、行政の業績能力向上に取り組みます。

 プロジェクト別の複数年度予算の導入や、単年度使いきりに代わる弾力的予算・財源・支給・基金・準備金制度の検討など、組織の予算改革・資金改革・収支改革を進めます。

 公共部門の職員の待遇改善、直接正規雇用への転換、研修、人材交流、官民連携を一体的に進め、行政能力の向上に取り組み、信頼できる行政を取り戻します。

 行政公務員が担当分野で長期継続的に専門性と人的ネットワークを蓄積できるような、新しいキャリアパス・人事制度を導入します。

(4)官民連携
 ソーシャルビジネス・NPOを国の重要な連携相手とみなし、主体性と創意工夫、適正な役割分担に基づくパートナーシップを構築します。

行政は命令者ではなく、コーディネーターです。
行政は支配者ではなく、ファシリテーターです。
行政の過度の介入によって、当事者の本業や生活に支障をきたしてはいけません。
受託者や提携事業者を行う前に、行政がやるべきことは何か、民間がやるべきことは何かをよく検討し、合理的な役割と責任の分担を協議し合意しなければなりません。
行政が調査や監査を行うとき、報告を求めるときは、当事者にとってなるべく負荷の少ない方法で、必要かつ十分な効果が得られるよう工夫しなければなりません。

(5)社会的包摂への戦略的投資
 「誰一人置き去りにしない社会」をすべての基本とし、社会的共通資本の回復と社会的インパクト投資を推進します。SROI(社会的投資収益率)による政策効果の測定など、根拠(エビデンス)に基づき政治行政を運営します。
(社会的インパクト投資:金銭的リターンと並行して社会や環境へのインパクトを同時に生み出すことを意図する投資。GSG国内諮問委員会による定義)

1.7 科学技術・イノベーション・教育研究
~(識者引用)「もし日本が旧来の技術やエネルギー様式、システムから抜け出せず、20世紀のビジネスモデルを続けるならば、日本は急速に没落して、今後30年で二流の経済に成り下がる。
日本がもし時を移さず企業家精神を発揮し、エンジニアリングの専門技術を動員し、潤沢な文化的資産を生かせれば、限界費用ゼロ社会へと世界を牽引し、より平等で豊かな、環境的にも持続可能な時代を創り出すための貢献ができる。」
(ジェレミー・リフキン『スマート・ジャパンへの提言』)~

 知の基盤となる組織と人材を育てていかなければ、社会と産業の更新もおぼつきません。今の政府は、大学や教員、研究者の本来の役割を忘れ、大学や研究機関を悪い意味でお役所化しています。

 指図を増やして予算を削り、教員や研究者を貧困や過労に追いやっているのですから、破綻するのは当然です。

 日本では、もっとハングリーになればイノベーションが生まれるという偏った考え方によって国の政策が運営されてきました。その間にも研究開発への投資、大学のレベル向上への投資、人の育成への投資を増やす道を進んでいる中国やシンガポールなどに追い付かれ追い越され、北米や欧州のトップクラスとの差は開く一方です。

 日本が研究開発、教育への投資を怠ってきたもう1つの理由は、過去の成功体験や神話にすがりすぎているからではないでしょうか。

 現在は一ヶ所で実用化されたものはすぐに当たり前化する時代です。

 今年アメリカやドイツで開発されたものが次の年にはコンゴやパキスタンでも当たり前になっているような時代が来るでしょう。

 そんな世界で必要となるのは、常に「次の一手」を産み出し続ける力です。

 すでに「当たり前化」しピークを過ぎたものばかりでは、衰退は避けられません。日本は、次のもの、新たなものを創り出す力を押さえ付け、切り捨ててきた結果、自ら苦境にあえいでいます。

 教育や研究開発への投資と人間への保障を怠らず、役所や政権の論理や都合で大学を劣化させてきた政策を改めます。世界の発展とともに進む日本とするため、学習と研究、スタートアップを支える環境を整備していきます。人類の知のフロンティア開拓に貢献し、価値と豊かさと叡智を産み出し続ける力を日本に復活させます。

(1)科学技術・教育政策、大学・研究支援
・文部科学省内に、高等教育・研究開発のエキスパート、行政官、政治家からなる政策形成・政策決定機関を設置し、大学と研究機関の本来の意義役割に沿った高等教育・科学技術政策を策定します。その中で国家政策上特に重要なもの及び省庁横断の広範な調整を要するものには、関係閣僚の出席する会議でさらに議論し成案を得ることとし、総理大臣は、利益相反にならない範囲で、これらの会議に出席し発言できます。
・大学の自治、学問の自由の保障
・大学・公的研究機関の自主予算・基礎研究予算、基盤的研究費を増額し、幅広く投資する。
・事務スタッフの増員
・研究者、教員、学生の生活保障
・手続きや書類の簡素化

(2)イノベーション政策
小さなところからのスタートアップを重視し、資金の流れ、支援の流れ、連携の流れを作ります。同時に、支援の選考過程の透明化を図ります。

2.外交・安全保障
 現在の世界で特に課題となっているのは気候変動、都市化、食糧問題です。この3つは有機的につながっており、国境を越えた問題解決プロジェクトが必要です。

 一方、国家、民族、地域間の安全保障面の対立は世界各地に存在し、これが軍事的衝突に至るのを回避しなければ、人間の生存そのものが脅かされることになります。

2.1防衛・安全保障
防衛費の増加を抑制し、防衛調達を見直します。特に高額のものや専守防衛を逸脱するおそれのあるもの、国民安全保護に対する効果に疑問のあるものは購入や配備の是非を再検討します。一方で、弾薬や整備費、部隊の維持や日常業務・隊員生活に必要な備品には十分な予算を振り向けます。

島嶼部や海岸は奪還ではなく、占領されないことを目的に、住民保護計画を策定し、必要な艦艇、火力、航空機の配備を行います。

集団的自衛権の不行使、非核三原則、武器輸出三原則を再確認します。世界の非核化のための国際的取り組みに積極的に貢献します。

後方支援(補給・兵たん)やPKOへの参加を見直します。国連の武装解除任務への要員派遣を検討します。
【個別政策】
・領海警備法の制定
・日米地位協定の是正
・沖縄の基地負担の軽減
辺野古新基地建設は中止し、日米両政府と沖縄県の三者での協議を開始する。それと並行して普天間基地の早期返還を求めていく。
・防衛予算の見直しと透明化

2.2 外交・国際課題
世界および日本のSDGs(持続可能な発展目標)達成のために積極的な役割を果たします。

気候変動による破壊的な影響の回避、人口増加に伴う食糧問題と都市問題の解決、貧困の解消、人権と生活状態の向上、平等と共生、教育の普及、難民支援を重点領域とし、「課題解決貢献先進国」を目指します。

恐慌回避と格差是正のため、各国と協調して安定的な国際金融システムと徴税システムの構築に取り組みます。

官民双方から「大きな構図を作れる人」を抜擢し、世界的課題を上流・川上から解決する国際展開戦略を実行します。

3.共生社会
【基本方針】
 日本人も外国人も、すべての人は個人として人格と尊厳を尊重されなければなりません。
 文化や言語、民族、性的指向など、それぞれの属性を認め、互いに尊重する社会を実現します。

 年齢、性別、出身、地位、障害の有無、人種、国籍、性的指向に関わらず、すべての人は人として尊重されます。個人の人格とアイデンティティの尊重は基本的人権です。

学校や行政において、権利に関する教育や研修を徹底します。成人の人権保護はもちろんのこと、国と地方自治体のあらゆる政策は子どもの権利を尊重して実施します。

職場での労働者の権利が守られるよう支援し、必要な法制度を整備します。

人権侵害行為を取り締まる法制度と人権救済機関を整備します。

性的少数者や夫婦別姓を望む人を含むすべてのカップルにとって平等な結婚制度のための法整備を進めます。

移民を推進するよりも、いま日本にいる外国人を人として尊重すること。それが結果として着実堅実な外国人受け入れにもつながると考えます。

【個別政策】
・障害者の雇用機会拡大のため、国、自治体、企業、NPO、ソーシャルビジネスの包括連携とノウハウ共有を進めます。国・自治体の法定雇用率を早期に達成し、違法状態を解消します。
・技能実習生的な外国人にも最低賃金以上の給与の支払いを義務付けます。
・無戸籍者やDV被害者など、既存の法制度の狭間にいる人々の社会権を保障し、誰もが居住、進学、就職、結婚などにおいて差別されない社会を作ります。
・数世代以上日本に定住している外国人への地方選挙投票権(地方自治体の議会の議決や住民投票を要件とする)付与に向けた検討を進めます。
・難民の在留資格:進学・就業・事業の機会を開きます。
・『共生社会白書』(仮称)を作成し、現状と進捗を国全体で共有します。

4.教育・子ども・子育て・キャリア

4.1 子育て・保育
保育・就学前教育と子育て支援を、労働雇用政策、男女平等政策、教育政策などの社会政策との連動によって発展させます。

子育てへの支援・給付を世帯の形態にかかわらず平等にします。

子育て、介護、職業訓練について、雇用形態を問わずすべての働く人が利用できるセーフティネット制度を整備します。

子どもの発達支援と、親や周りの大人への支援を一体的に進めます。

保育・就学前教育と子育て支援に従事する人々の待遇を引き上げ、担い手を確保します。

【政策】
保育園等の建て替えへの国の財政支援・補助のレベルを民間園と公立・公設園へとの間で平等に保ちます。

「公共施設等総合管理計画」においては、複合集約型施設および特化型施設(学校、保育園、児童館、区民センター、図書館等)双方の意義・特長・役割・機能を位置づけ、地域コミュニティの実情に合わせた公共施設整備を支援します。

労働時間短縮、短時間勤務の正規直接雇用などの選択肢を増やします。

〈児童館の役割〉
 児童館は児童福祉法40条に基づく児童福祉施設です。子どもに健全な遊びを提供して、その心身の健康を増進し情操を豊かにすることを目的としています。
 単に利用するこども、保護者の利便性に資するためだけでなく、そこでボランティアする学生の人、保育士を目指す人、運営に携わる役所の人、集会所を利用する地域の子育て世代、いろいろな人がそこに関わることで、社会の子育て力を養う役割を担っています。
 多数の人が子どもと関わって、見聞き、体験して、スキルを身に付けることができます。
 地域の子供会などでの助け合いと似ていて、虐待と向き合う事にもつながります。

4.2 教育・キャリア
(1) 総論
 今の日本の教育はまだ画一的で世界の変化に対応しておらず、多様性を重んじ創造性や思考力、主体性を鍛えるどころかむしろ精神的統制を強め従属的な態度を育んでしまっています。一方で、教育研究への公共投資は低いままです。

 教育、学問、研究は人が人として生きるために欠かせないものであり、国の発展の礎です。教育・研究に公費を投資します。教員の養成と採用、少人数学級を広げ、公教育と基礎教育を立て直します。すべての人に教育への門戸を開き、人文社会科学・自然理工学双方の発展と連携を目指します。大学・大学院の教育・研究のレベルを引き上げ、小学校から高等教育までのSTREAM教育など新時代の教育で世界トップレベルを目指します。
(STREAM=科学、技術、ロボティクス、エンジニアリング、アート、数理)

 基礎を徹底的に学ぶこと、調べること、アウトプットすること、思考力や創造性を鍛え養うこと、自分の進む方向を考えることは、すべて教育に必要です。その上で、いかなる道を選択するか、何に挑戦するかは個人の自由な選択です。それを保障するためのセーフティーネットがあれば社会に活力が戻り、国全体が底上げされていきます。

 変化の激しい現代の世界で豊かに生きていくためには、各地における新しい産業やビジネスの発展と、大人になってからの継続的な学びが大切です。

学びながら働き、働きながら学びやすくなるように、政府・大学などの教育機関・企業が連携して仕組みを整えます。

社会人教育を促進し、職業とスキルの開発、多様なキャリア機会の獲得を支援します。

職業やキャリアの場において、性別や年齢による差別や格差を解消していきます。

教育分野で働く人の待遇を改善します。

(2)権利教育・社会教育
・小学校から、人権・労働・納税について学びの時間を取り入れます。
・社会全体の成り立ちを意識しつつ、義務と権利を学べるようバランスを考えたカリキュラム作りを進めます。
・中学高校では、多様性とやり直しを認める教育の推進。例えば、毎年校則の見直しを生徒たちで考えさせることで、修正しながら最適な状態を保つ方法、より良いものを作り出す大切さを学びます。

(3)高等教育・専門教育への支援
・高等教育無償化や給付型奨学金を拡充します。これは、10代から20代の教育の機会を保障し、高額の教育ローンの返済による過度の経済的負担を軽減するだけでなく、卒業後の世代にとっても何歳になっても学び直しが可能になり、転職への足がかりとなります。
・上記の支援と合わせて、入学は簡単に、進級や卒業は厳しくする教育改革を検討します。同時に、転科や転学、学部・大学の掛け持ちをより容易にし、進路の軌道修正や学際的な学びの選択肢を広げます。
・人手不足や将来性のある学部や地方の大学に生徒を呼び込む施策を推進します。例えば、地方大学は双方向通信などを利用し遠隔地から受講可能にしたり、学生寮の新設や地元企業の賃上げなど、地方創生や経済復興につながる戦略には、国や自治体の助成を検討します。
・農林水産学校など、各地の職業・実業・専門教育機関への財政的裏付けや人材育成、設備投資、研究機関への投資を十分に確保します。

~(識者引用)~
「財務省は受益者負担の原則をいい、教育を受けた者が受益者だから負担しろといいます。とんでもない間違いです。受益者は国であり、国民です。知の人材を育てることこそが、国にとって一番重要なことのはずです。税金でまかなうべきなんです。」
(本庶佑氏インタビュー『世紀の新薬、未来へ 京都大学名誉教授・本庶佑さん』朝日新聞2016.9.28)~

5.暮らしの安心
 国は人の共同体であり、社会保障は政治の第一の役割です。
社会保障という安全網があるから経済が成り立ち、イノベーションが起こります。

 「生涯現役」という言葉が叫ばれ、定年と年金支給開始年齢をともに70歳まで引き伸ばすことが提案されています。しかし、70歳,もしかしたら80歳になっても「働かなければ生きていけない」社会でいいのでしょうか。

 もしも年金を受け取れる年齢が70歳に上がれば、いま18歳の新有権者にとっては52年後の話です。にもかかわらず、若い世代や現役世代のための政策は、ずっと後回しにされ続けてきました。

 人の生き方にはさまざまなパターンがあります。制度に人が合わせるのではなく、人に制度を合わせます。

 社会保障を、60歳で引退する人と70歳になっても働く人、共働き家庭と専業主婦(主夫)家庭、障害のある人とない人、結婚している人としていない人、施設で暮らす人と家庭で暮らす人、両親のいる家庭とひとり親の家庭、職のある人と職のない人、家族のいる人と死別・離別した人、異性のカップルと同性のカップル、どちらにとっても公正でアクセスしやすいものにします。

 対処型の行政から、予防型の行政へ。誰一人置き去りにしないアウトリーチ型の社会保障を。行政はコーディネーターになります。

 現状では支援を必要としている人ほど、情報・知識を得る機会がなく、どの制度を使えばいいか分からず、支援にたどり着けず、支援を受けられていません。

 ネットワークにつながっていないと、セーフティネットからこぼれ落ちてしまいます。社会保障や貧困の問題に取り組むためには、その背景にある孤立や格差を解決しなければいけません。

 問題は深刻になればなるほど解決が難しくなります。早めの対応がカギを握ります。困難な状況にある人にできるだけ早く手を差し伸べられれば、さらなる悪化を防ぎ、立ち直りの機会を得ることができます。それは本人や周りの人々にとっての救いや励みとなるだけでなく、社会保障や財政のパンクを防ぎ、社会全体の健康にもつながります。

 同じ人でも、あるときは支える側に回り、ある時は人からの支えを受ける、「お互い様に支え合う社会です」。


 必要な給付やサービスを提供するだけでなく、地域に「つながりによる支え合い」のネットワークを構築していくことが持続可能な社会保障です。コミュニティ主体・住民主体の取り組みを行政は全力で支援し、対等に連携します。

 給付型社会保障の水準を十分に保つことは当然必要であり、保持していきますが、個人の生活状態は金銭給付やサービスのみでは測れません。

 貧困と障害について言えば、貧困には「経済的貧困」と「つながりの貧困」があります。「安心できる他者」との出会いとつながりの構築によって、つながりの貧困から脱却することができます。つながりは社会的共通資本です。障害にも身体的障害や精神的障害だけでなく社会的障害が背景にあり、このうちの社会的障害の払拭が生きづらさの軽減につながります。

 ケイパビリテイ(潜在能力機会)と社会的インパクト投資の考え方のもと、社会包摂型事業による地域社会の再生と、共生コミュニティのための拠点・機関・ネットワークの醸成を地域内で進めます。

 同時に、災害の時やいざというとき、困ったとき、辛さをかかえたとき、相談したいとき、暴力や虐待、いじめにあったときなどに行ける「避難所」や「シェルター」、「駆け込み寺」の役割を果たす場所が身近にあるように取り組みを進めます。

【方針】
高齢者はもちろん、若い世代、現役世代にも社会保障を。

社会保険料・税金は収入や経済力に応じて負担する累進制を強化し、所得の低い人ほど負担率が上がる「逆進性」を解消します。

医療・介護の自己負担金は支払い能力に応じて調整し、「お金がないために医者に行けない。介護が受けられない」状況の発生を防ぎます。

「福祉充実か福祉切り捨てか」の二択ではなく、それぞれの人が自立可能な範囲で自立できるよう支援します。必要な福祉の提供と、福祉の水準は堅持します。

支援する人へのケアにも取り組みます。

【政策】
低所得者の社会保険料率の減免

予防医療の重視
・ワクチン抗体検査・接種の周知と費用減免

有給の福祉コンシェルジュを置き、安心して行ける相談窓口や水先案内をできるだけ普段の生活の身近なところへ広げます。

生活保護を受けている人が就労したり、就労や開業など自己収入を得ることを目的とした活動や教育訓練のための資金を認定機関から借り入れた場合に、保護費の減額を一定期間・一定額の範囲で猶予するなど、自立できる人の自立を後押しする法改正を行います。

居住の安定は生活の安心に直結するだけでなく、子育て世帯への支援や若者世代の支援にもつながります。住宅費補助、空き家や中古住宅の活用・改修支援などの施策を実施します。

6. 経済、雇用、地域
6.1経済総論
 政府主導・中央集権の経済政策はもはや限界を迎えています。官民経済・金融の地方分権・地方主導化と産業構造の転換を進めます。
 民間主導・地域主体の経済発展に転換し、自由なイノベーションの起こりやすい開かれた社会を作ります。

 一方で、低炭素型再生可能エネルギー社会に向けた産業構造と社会システムの転換、自然共生型・防災型のインフラ国土政策、地域間の行き来や経済取引を盛んにする交通・情報システムの高度化など、国全体で進めなければいけない大きな課題があります。こうした国家的課題には、国・自治体・民間の対等なパートナーシップをもって取り組み、どの地域も豊かで安心で持続可能な日本を実現します。持続可能な発展目標により国の方向性を示します。

 新技術と新産業の基盤となるのは知識です。明日の経済が生まれ育つもととなる知的資源・知的財産の発展に取り組みます。

 経済力は創造力です。中小企業、ベンチャー企業はイノベーションの主力の担い手となります。

税制や資金調達条件、信用保証の面で、中小企業、ベンチャー企業研究開発を支援します。

新産業・新領域、今後の国の発展の柱となる分野への投資・融資を拡大します。(ソフトウェア、アプリケーション、人口知能、IoT、コンテンツなど)

日本は「世界の下請け工場」になってはいけません。そのような立場では、展開可能なマーケットも価格も他の人に決められ、狭められてしまうことになるからです。日本は各産業領域や複合領域におけるプラットフォーム的地位を確立することを目指します。

6.2 農林水産業
 農林水産業を日本の食糧政策と環境政策、地域政策の一環として位置づけ振興します。農業は地域の要であり、生物学であり、化学であり、工学であり、社会学であり、経営学です。総合領域としての農業の発展を目指します。

 法律の面では、種子法を復活させます。卸売市場法を再改正し、制定時の法律の根幹部分を再生します。漁業法は2018年改定の問題点を改正します。

【農業は自然と共に生産が行われる経済活動】
 農業はそもそも、自然と共に生産を行う産業であり、人間が作る計画通りにはいかないなど市場外的要素に強く影響されるものです。
農業は市場経済の論理の中に収まらない要素を内蔵している事実を認めて、持続的に展開できるあり方を守ることが必要です。
 現在のように、農業の企業化、世界市場の自由化(TPP)、協同組合の解体、種子法の廃止など、農業を徹底的に市場経済化していこうという方向性は、農業生産に携わる人にとっても、消費者にとっても、望ましい未来にはなりません。
「農業を徹底的に市場経済化していく」方向は、最終的には、農業における資本・経営と労働の分離が目指され、「種子」、「機材」、「生産」、「流通」、「消費」の全過程が市場化されていくでしょうし、これは、農業の持続に困難をもたらすと予想されます。

【持続可能な農業生産のため農地保全と担い手を支える方策を】
持続可能な農業生産を続けていくためには、「自然と共に生産が行われる」「農村と共にある」ことを尊重し、「生産者と消費者が支えあう関係の構築」に向かっていく必要があります。
持続可能な農業生産のために、「農地」と「担い手」を保全し、支えることが農政の大きな役割です。そのために「戸別所得補償制度」を復活し、農地を保全し減らさない農業振興策を求めます。
食料自給率がカロリーベースで40%以下というのは先進国の中では最低の水準であり、あまりに低いと考えます。現在の輸入先が不作になる、日本が外貨を稼げなくなる、温暖化や気候変動、等のリスクもあります。世界の人口は2050年には97億人に達すると予想されており、世界の食糧難を悪化させないためにも国内の食料自給力の維持・向上が非常に重要です。
農業労働力に関してはAIやロボット等の技術革新により省力化が実現する余地があり、労働力不足はある程度解消される可能性はありますが、農地面積は年々減少を続けており、維持あるいは拡張する努力が必要です。
余剰となった水田の活用として、野菜栽培に加えて安定的に農地を使うためには、粗飼料(家畜のエサとなる、牧草やトウモロコシの実と茎葉を発酵させるサイレージ等)の生産など土地利用型作物の栽培に向けていく必要があります。放牧等と組み合わせて農地の保全を図る方策が有効と考えられます。

飼料と肥料の国産化(輸入置換による発展)、地産地消と食育、少量高付加価値と大ロットなど、多面的に農業の振興を図ります。

農業に関係する幅広い学問領域や実践を、教育機関や地域コミュニティで学ぶ機会を広げ、農業を新たな担い手に継承します。そのことによって、豊かな食文化、食の安全、生物多様性の保全、環境保全、持続可能な社会作り・国づくりを支える日本農業を確立します。

6.3 労働・雇用と経済
人をコストではなく財産ととらえ、待遇の改善を奨励します。立憲民主党は、「待遇を上げて事業を成長させたい」企業の味方です。

「一日8時間働けば普通の生活ができる社会」を実現します。

日本は過去数十年にわたって経済成長がほとんどありませんでしたが、人的資源が適切な方向に振り向けられれば、大きな成長のポテンシャルがあります。

労働の直接雇用・無期雇用への転換を推進し、持続可能な発展を担う企業・産業への働き手の移動を促進します。個々人のキャリア開発のための生涯学習・社会教育・トレーニングを支援します。

従業員の正規雇用に積極的な企業には社会保険料負担を軽減し、従業員の正規雇用率を低く抑えて収益を上げようとする企業に課す負担を増やします。

正規雇用以外の契約形態で働く労働者を保護する法整備を進めます。正社員・非正社員問わずすべての働く人の労働環境を改善するため、法整備、相談支援、情報提供、連携の取り組みなどあらゆる手段を動員します。

同一価値労働同一賃金に向けた法制化とガイドライン策定を進めます。男女格差を解消するとともに、正規雇用と非正規雇用など均等待遇の適用範囲を広げ、義務と罰則を伴う実効性のあるものにします。
まず「同一労働時間同一待遇」とし、フルタイム勤務の労働者は昇給、賞与、退職金、交通費、研修などの待遇を同一にします。次に欧米と同じようにフルタイムとパートタイムのみに分け、直接雇用を原則とします。男女格差の解消にも取り組みます。

派遣の原則は「一時的・臨時的」、雇用の原則は「直接雇用」です。2015年に改悪された労働者派遣法を改正し、派遣法労働者の継続雇用の機会を拡大します。派遣労働の対象範囲が広がりすぎているため、直接雇用への転換を進めることを前提に、派遣対象業種の絞り込みを行います。

マージン率の個別公開を義務付けます。

時間外労働時間制限を法制化し、全業種で早期に施行します。裁量労働制は対象の拡大は行わず、運用ルールを見直します。「高度プロフェッショナル」制度は廃止します。

勤務時間インターバル制度を義務化します。

労働基準監督署の人員体制を強化し、労働環境・労働条件を守ります。

労働法制強化に伴い、企業・業界業種に向けたガイドライン策定や体制整備支援を進めます。

労働者が利用しやすい調停や集団訴訟の手続き整備を進めます。

最低賃金を他の先進諸国に合わせて段階的に引き上げ、将来目標として1500円を目指します。(試案:1500円に達するまで、年率5%以上、インフレ率+3%以上、時給換算額100円のうちいずれか適切な上げ幅で引き上げる)

最低賃金額の地域差を縮小します。

保育、介護、学童などの公共分野で働く人々の待遇保障のための法律を整備します。民間への業務委託の際に、応募事業者の正規雇用率や賃金体系を評価項目に加えます。

依頼者-受注者関係を適正化します。「準従属労働者」には労働法、独立事業者には競争法による保護を提供します。下請法と独占禁止法の適用を拡大します。発注単価適正化のためのガイドライン策定から法整備につなげます。

会社都合による離職者や非正規労働者が、離職後に失業保険を満額受給しながら、公共および民間の人手不足分野・新産業領域で就業するための教育訓練補助を受けられる制度や、職員任用制度をつくります。

企業が解雇する際の解雇一時金などの補助やセーフティネット、人手不足業界への転職支援で企業負担を減らす政策を検討します。

6.4 産業政策・地域政策・国の豊かさ
(1)官民の投資
 経済や産業を「守ろう」とするのは間違いです。産業は「守る」ものではありません。
 今までの政権が推進してきた官民ファンドの失敗要因は、「保護」や「救済」を目的にしてしまったことです。「守る」投資から、新技術・新産業、成長機会を「育てる」投資・「伸ばす」投資へ転換します。今普及しているもののさらに先を行くものを伸ばす必要があります。
 政治家や行政が介入しすぎてもうまくいきません。透明公正なルールを定め適切なリーダーシップを発揮します。

(2)地方政策
 農村を含む地方全体の発展のためにも、地方の都市地域・都市経済圏の成長がカギとなります。

 地方県でも純然たる農村地帯・山林地帯に住んでいる人の割合はそれほど高くありません。地方都市やその郊外・周辺に住んでいる人が多く、生活も都市化しています。地方にも過疎だけではなく過密や宅地化の現象も起こっています。

 「地方県=農村県」と単純化し、「民主党の勝因は戸別所得保障」「野党の1人区健闘の要因はTPP問題」という総括で止まってしまうと、立憲民主党をはじめとする野党は地方で伸び悩むことになります。地方の都市化された地域やその郊外・周辺に住む人たちの生活や経済の実態をとらえ、それに応じた政策を打ち出していくことが重要です。

 今まで東京などから「輸入」していたものを地域で作って売り、域外にも「輸出」していく「輸入置換」の範囲やバリエーションが広がり、地域内企業・事業者の共生・連携による循環が作られ、さらには独自価値を持った生産物が産み出されることで地域経済は発展していきます。

 地域の資本や人材で取り組んだ事業でないと地域への還元も少ないのです。今の公共事業では地域への還元は一過性で、地元の取り分も少なく、ライフサイクル全体で見ると利益は東京や大企業に行き負債は地方・地元に積み重なります。生産や収益が地域に還元され、地域に資産が蓄積する事業でなければなりません。

 今の地方都市に「ゆとりのある生活環境」「人を惹き付ける活力」があるかどうか、もう一度見直しが必要です。地方都市では「田園都市」「自然都市」構想のような良質な生活都市・なりわい都市構想の意義が大きく、子育て支援、高等教育の質向上、知識産業やベンチャー、ソーシャルビジネスの必要性も高く、可能性と機会があります。

 農業もイノベーションを必要とする分野です。戦後に農業産出力、農業所得が上がったのも品種改良や農業技術、流通販売のイノベーションがあったからです。21世紀の日本の農業も、教育、知識、技術、経営、マーケティングを必要としています。同時に、農業は地域、郷土、共同体(コミュニティ)、自然風土、環境、食べ物、健康を守る役割を果たしていますし、これからもますますその役割を果たすべく進化していきます。

(3)国の豊かさ
 リーズナブル、ローコスト、大量生産、大量販売でうまくいったのは20世紀まで。これからの日本は高付加価値・高単価・高所得を目指します。そのための産業革新です。これを国はもちろん各地域の人や企業が主体的に取り組み、そこに対する資本が強化されるようにしていきます。

 せっかく買い物客や観光客が増えても、100円ショップ、ドラッグストア、量販店、ディスカウントストア、チェーン店、ファストフード店ばかりが賑わっていては効果は半減です。可処分所得を上げる戦略と、提供されるものの付加価値を上げる戦略の両方が必要です。

 人権、社会保障、地域は守らなければいけません。一方で、経済政策・産業政策は合理性に基づいて進めていきます。

~(識者引用)「政策が生産資源の移動を妨げることがあってはならない。人と資金は、常に最も生産的な仕事に移動できなければならない。」
「人の移動の自由は一人ひとりの人間にとって必要である。生産的でない雇用は所得も低い。生産的な仕事への移動を妨げることは、結局は低い所得を押し付けることになる。事実そのような政策は、一人ひとりの人間に対し、失業あるいはその不安をもたらす。」
「そもそも経済の発展とは、資金が生産的に使われること、あるいは生産的な仕事に移動することを意味する。しかも、これこそが生活水準の向上と完全雇用を実現する唯一の道である。」
「中小企業や個人の発明家のほうが、はるかにイノベーション志向である。(中略)技術的なイノベーションが活発、急速、かつ重要な時代においては、中小企業が生まれ育ちやすくなっていることが決定的に重要である。すなわち、彼らが資金を手に入れやすくなっていなければならない。」
「経済発展とは、一人ひとりの人間とコミュニティの活力の問題である。活力はそこに住む人たちのイニシアチブと相乗効果によってのみ生まれる。政府はこの活力を育て、あるいは殺すことはできる。しかし生み出すことはできない。」
(P.F.ドラッカー『断絶の時代』)~


7.エネルギー・環境、災害・震災復興
 気候変動とエネルギー問題は、世界の今後を左右する大きな課題です。大きな課題に意欲的に向き合うところからイノベーションが生まれ、経済社会の変容と発展がもたらされます。 

 「原発ゼロ」は「反原発運動」ではありません。日本が経済的にも社会的にも豊かになるための新しい産業政策です。分散型電源の再生可能エネルギー体系という社会像やビジョンが私たちにはあります。

 原発を基幹電源にすることにこだわっている政権のままでは、日本はこのチャンスを逃して衰退してしまいます。原発がベースロード電源に位置付けられる限り、分散型電源の再生エネルギー体系へ移行出来ないのです。
 成長のために、政権交代が必要です。

脱炭素時代へ、温室効果ガス削減のための産業構造転換とエネルギー効率を向上する社会システムの建設を進めます。
・スマートグリッド、スーパーグリッド、マイクログリッド、オフグリッドの整備を進めます。
・建物のIoT化と断熱によるエネルギー効率と経済効率の向上は雇用も生み出します。自治体やエリアマネジメント機関と提携し、パフォーマンス契約などを活用し、地区全体の改修につなげます。
(パフォーマンス契約:省エネ効果の保証を含む契約形態。事業者は結果責任を負う)
・空き家を緑地やミニ発電施設に転換します。

~(識者引用)
・現在の日本は中央集中型でコストがますますかかる原子力と化石燃料のエネルギー体制におおむね執着しているため、このままでは国際競争力を失う一方。
・しかし、日本には過去に総効率を上げてきた高度な専門的知識が備わっているので、スマートでグリーンなIoTインフラをこれから急いで普及させるうえでも、潜在的な強みがある。エネルギー体制を転換することで、世界を導いていく役割を担える。
(ジェレミー・リフキン『スマート・ジャパンへの提言』より)

被災者・避難者の生活再建支援と地域再生事業を継続的に実施します。

原発立地地域をエネルギー構造転換事業重点地域とし、地域産業転換計画の策定支援と資金調達を含む資本形成支援を行います。その際、地域の人材・資本・資源を活用した主体的取り組みを高く評価します。


第5章 今日すぐできる「はじめの一歩」とは

1.党のあり方
 優しい社会を作ることを目指す者は、自らを果敢に変革しなければなりません。激変する日本と世界にどう立憲民主党は追い付き、リードしていけるでしょうか。立憲民主党が社会をリードする組織となるために、党の事業の仕組みをどう変えたらいいでしょうか。

 政党にとってパートナーズや有権者は、企業にとっての投資家やステークホルダーのようなものです。情報を公開し、説明責任を果たしてこそ、政党は市民からさらなる支持・支援を引き出すことができます。

政治文化を変えるためには政党・議員の組織文化も変わる必要があります。

1.1 有権者との様々な形式での常時的な関係作り
(1)広報資料
(2)ネット番組・配信
(3)リアルの場での交流
(4)パブリックファシリテーション

1.2 組織改善
組織文化への切り込み。政治文化を変えるには組織文化を変えねば変わらない。政治家への信頼を回復できないと党も支持できない
(1)マネジメント
(2)人材のリクルートと育成
青年部
(3)オペレーション
1)党内コミュニケーションの改善
チャットワーク(農業団体での成功事例あり)、Google Docsの導入

2)トラブルの解消と未然防止
一つ一つのトラブルや問題事例を挙げ、解決していくためのソリューションを共有する。党スタッフの教育研修をアップデートし、古い体質を現代の草の根パートナーシップにふさわしいものに改善する。

1.3 あたらしい政党のファンドレイジング
薄く広く定額寄付される非営利組織へ。

1.4 メディアとの関係作り


おわりに

  (仮)「政界再編」が叫ばれる中、いくつもの政党が「政権交代」を掲げて現れては失速し、頓挫を繰り返してきました。長期政権化した現与党も、老朽化し船底に穴の開いてしまった日本という船を改修する手立てを打つことができないまま時間が経過しています。国民の間には選挙公約や政権公約を信用できないという気持ちが広がり、「マニフェスト疲れ」とでも言うような様相を呈しています。

 なぜ、日本はここまで見通しや全体像の失われた国になったのでしょうか。その原因の一旦が政治にあるとすれば、それは今までの政党が考えてきたことが「政権構想」にとどまっていて、「社会構想」ではなかったということなのではないでしょうか。
 これは船で言えば船長室の掌握を一生懸命に考えているようなもので、船体がどうなっているか、船室や機関室や船底の様子はどうなっているかということは後回しにされてきました。しかし、船長や乗組員たらんとする人がまず考えなければならないのは船全体、すなわち社会の構想なのです。同時に乗客も社会構想に目を向けて参加していかなければ、気付いたら船ごと沈んでいたという事態になりかねません。

 海は広く、航路は長いです。国家は百年を超える単位で続いていき、私たちはそのうちの何十年かを親から子へ、子から孫へと引き継いでいきます。一回の政権が担当する期間は、それに比べればわずかなのかもしれません。しかし社会の目標像や未来像が共有できていれば、その期間は長期の目標や大きな目標の達成に向かう確かなステップとなるのです。だから、私たちは社会構想を描き、問いかけていくのでないでしょうか。

 描いた社会構想を現実のものにするためには、それを実現するだけの力を持った組織になれるように、足腰の強化を行わなくてはなりません。国と同じように、政党にとっても「人への投資」、「システムの改善」、「資金・資本の強化」、「公正なルール作りと運用」は決定的に重要です。

 社会のビジョンは党だけでは作れませんし、実現できません。市民との協力関係が不可欠です。既存の組織文化に安住せず、開かれたコミュニケーションと現場・当事者へのアウトリーチに果敢に取り組み続ける党と市民の連携こそが、社会構想を実現する政権を作るのです。

参考資料

朝日新聞『出生、過去最少の92.1万人に 人口自然減は過去最多』2018.12.21

厚生労働省『毎月勤労統計調査』

国税庁『民間給与実態統計調査』

国税庁ホームページ「所得税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

『給付付き税額控除とその課題』東京財団政策研究所 2012.5.8

「These are the world's 10 most competitive economies」World Economic Forum 2917.9.26
https://www.weforum.org/agenda/2017/09/global-competitiveness-2017-top-economies/

『The Global Competitiveness Report 2017-2018』World Economic Forum

経済同友会『子どもの貧困・経済格差の根本的な解決に向けて』

『子どもの貧困対策としての教育』明治安田生活福祉研究所

教育再生実行会議「全ての子供たちの能力を伸ばし可能性を開花させる教育へ(第九次提言)参考資料2016 年 5 月 20 日

日本財団『子どもの貧困の社会的損失レポート』

菅原節子『高校生をとりまく貧困と教育費支援制度について』

マーク・べビア『ガバナンスとは何か』NTT出版

政府CIOポータル
https://cio.go.jp/policy-opendata

『政府におけるオープンデータの推進状況について』内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 2018.5.10

Open Government Partnership
https://www.opengovpartnership.org/

中野智紀『地域の限られた資源で急速な高齢化をいかにして乗り越えていくか?』

『住民主導で動き出したケアのまちづくり「幸手モデル」』ATTENTION 2017.5.24

『日本における社会的インパクト投資の現状 2017』GSG国内諮問委員会

『社会的インパクト評価に関する調査研究 最終報告書』内閣府委託調査 2016.3

「社会的投資収益率について」SOCIAL VALUE JAPANホームページhttp://socialvaluejp.org/aboutsroi/

『「SROI」実施ガイドライン(Social Return on Investment:社会投資収益率)』慶應義塾大学 SFC研究所「科学技術への社会的期待の可視化・定量化手法の開発」プロジェクト 2014.3

『文化芸術の振興に関する基本的な方針(第三次基本方針)』2011年2月8日閣議決定

『市民が考える!若者の住宅問題&空き家活用』シンポジウム報告書 住宅政策提案・検討委員会 ビッグイシュー基金 2015.10

ILO『同一価値労働同一報酬のためのガイドブック』日本語版 第1版 2016 年

民進党ホームページ『【参院予算委】「民主党は労働者が安心して働き暮らせる社会の実現目指す」石橋議員』2016.1.15
https://www.minshin.or.jp/article/108170

ジェイン・ジェイコブズ『発展する地域 衰退する地域 地域が自立するための経済学』筑摩書房

アマルティア・セン『不平等の再検討:潜在能力と自由』岩波書店

ジェレミー・リフキン『スマート・ジャパンへの提言』NHK出版

木下斉『地方創生大全』東洋経済新報社

P.F.ドラッカー『断絶の時代』ダイヤモンド社

日本国憲法前文~第99条

農水省「この国の食と私たちの仕事の未来地図」 https://t.co/TFFpCr7p3A

あらためて問う、新政権の農政とは!(日本農業の動き171)

世界人口白書2015

平成27年度 食料・農業・農村白書(農林水産省ホームページ)

知ってる?日本の食料事情(農林水産省ホームページ)

戦後日本の食料・農業・農村編集委員会編「国際化時代の農業と農政Ⅰ」 農林統計協会

農文協編「TPP反対は次世代への責任」農文協ブックレット15

農文協編「種子法廃止でどうなる?」農文協ブックレット18

平澤明彦・川島博之・大賀圭治 「世界各国の穀物自給率と耕地賦存,所得,農業保護 ー自給率の基礎的規定要因と日本の位置付けー」 農業経済研究 第 75 巻,第 4 号,2004
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nokei/75/4/75_185/_pdf/-char/ja

青山貴洋 「日本の食料安全保障政策における課題と解決に向けた一考察 ─農地と生産者問題からみた食料安全保障政策と緊急事態食 料安全保障指針分析─」公共政策志林(法政大学公共政策研究科),第3号,2015  
http://ppsg.ws.hosei.ac.jp/wp/research/

日経ビジネスオンライン ニッポン農業生き残りのヒント 
「財政で農家を守り、低所得者をいじめる愚」2018年11月26日
「畜産振興『エサは輸入』が招いた日本農業の危機」2018年12月14日

ティム・ブラウン『デザイン思考が世界を変える イノベーションを導く新しい考え方』早川書房 2014

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