東京都議会で反ヘイトスピーチ条例案が可決。その議事録からみえる各党の見解。


10月3日、東京都議会において、
「ヘイトスピーチ規制条例」こと、
「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」が
可決されたというニュースが飛び込んできました。↓

【東京都議会】反ヘイトスピーチ条例案が可決
https://buzzap.jp/news/20181004-tokyo-against-hatespeech2/


そこで今回は、
各党の会派代表からの質問と、小池知事や都側の答弁を抜き出し、
それぞれの見解がわかりやすいようにまとめてみました。

引用元は、以下の議事録です。↓

平成三十年東京都議会会議録第十二号〔速報版〕
平成三十年九月二十六日(水曜日)
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2018-3/02.html

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○百十六番(増子ひろき君) 

平成三十年第三回東京都議会定例会に当たり、
都民ファーストの会東京都議団を代表して、
小池知事並びに教育長、関係局長に質問します。

今回の定例会では、私たちも力を入れてきた
東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案、
新しい就労推進策、児童虐待対策などが取り上げられています。

(中略)

 私たちは、東京二〇二〇大会を、
これまで光が当てられてこなかった都の課題を解決するきっかけとし、
新しい東京の未来をつくるための取り組みを加速させてまいります。

(中略)

まず、
東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案
についてお伺いをいたします。

 ソチ・オリンピックでは、ロシアのLGBTへの対応により、
アメリカやEUの首脳がオリンピックの開会式を欠席するという事件も起きており、
性的マイノリティーへの差別は国際的にも大きな課題となっています。

また、さまざまなスポーツの国際的な大会などでは、
人種や国籍による差別的発言や行為が問題になっており、
国際的に厳しい対応が求められています。

 こうしたことから、東京二〇二〇大会開催都市として、
これまでの行政が定めた東京都人権施策推進指針も踏まえ、
本条例を制定することで、性自認及び性的指向や、
いわゆるヘイトスピーチといった新たな人権課題に光を与えることに加えて、
あらゆる差別を許さない姿勢を改めて明確にすることになります。

 これまで以上に具体的で実効性のある取り組みが進むことが期待される一方、
あらゆる差別とは具体的に何を指すのか、
みずからが直面する人権課題についても対象になるのかと、
不安に感じる方々がいるのも事実です。

 そこで、過去の指針に掲げられてきた人権課題、
そして今回の条例で新たに光が当てられる人権課題を含め、
あらゆる差別の解消を図ることで、
オリンピック憲章の人権尊重理念の浸透を目指すという
本条例の制定とその後の取り組みに向けた知事の見解を伺います。

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○知事(小池百合子君) 

増子ひろき議員の代表質問にお答えをいたします。

(中略)

オリンピック憲章にうたわれております
人権尊重の理念の実現を目指す条例案についてのご質問をいただきました。

 多様性が尊重され、温かく優しさにあふれ、
誰もがあすに夢を持って活躍できる、
そんな東京を実現するためには、
全ての人の人権が尊重されなければならないと考えます。

 そのためにも、東京二〇二〇大会の開催を契機といたしまして、
いかなる種類の差別も許されないという
オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を
広く都民に浸透させていくことが重要であります。

 そこで、東京都人権施策推進指針に掲げられました十七の人権課題に対しまして、
今後も積極的に施策を進めてまいります。

 こうした取り組みはもとより、
東京二〇二〇大会のホストシティーとして、
性自認及び性的指向に関する不当な差別の解消及び啓発などの推進、
そして、本邦外出身者に対します不当な差別的言動の解消に
さらに積極的に取り組むべく、今般の条例案を提出したところでございます。

 条例の制定を通じまして、
さまざまな人権に関します不当な差別を許さないとの姿勢を
国内外に対して改めて明確にする、
そして、啓発、教育等の人権施策を総合的に実施をしていく、
そのことによりまして、都民の皆様とともに、
多様な個性が輝く活力あふれる東京の実現に邁進してまいります。

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○三十八番(伊藤こういち君) 

都議会公明党を代表して質問を行います。

(中略)

次に、東京都人権尊重条例案について質問します。

 都はこれまで、東京都人権施策推進指針に基づき、
同和問題を初め十七の人権課題を掲げ、取り組みを進めてきました。

しかし、性自認や性的指向から生じる差別や、
本邦外出身者に対してのヘイトスピーチなどへの対応は、
そうした従前の人権指針では、十分に明示されていない課題であります。

 今回の条例化においては、
二〇二〇年に向けて東京への関心が一層高まる中、
こうした新たな人権課題を個別に章を立てて、
国内外に都の取り組み姿勢を明らかにしています。

 今後は、これまでの人権課題の取り組みや、
時代、社会の変化に応じて生ずる新たな人権課題についても、
条例により位置づけて施策を推進していくことも検討すべきと考えます。

知事の見解を求めます。

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○知事(小池百合子君) 

伊藤こういち議員の代表質問にお答えをさせていただきます。

(中略)

それから、人権施策の推進についてのご質問をいただきました。

 人の力で成長を続ける東京でございます。

その人の力で成長を続ける東京をつくり上げていくためには、
人権尊重の機運を高め、そして誰もが生き生きと活躍できる社会を実現していくことは
極めて重要でございます。

 都はこれまでも、憲法やその他の法令などにのっとりまして、
人権施策を進めるとともに、さらに東京都人権施策推進指針を定めまして、
さまざまな取り組みも実施してまいりました。

 そして、今回提案した条例を契機といたしまして、
オリンピック憲章にもうたわれております、
いかなる種類の差別も許されないという理念が浸透した東京にしていくためにも、
指針に掲げております十七の人権課題を含めて、
人権施策に総合的に取り組んでまいります。

 東京二〇二〇大会と、その後につながる持続可能なよりよい未来のために、
SDGsを踏まえて、人権施策をより一層推進いたしまして、
今後も国内外の情勢変化に応じて条例化も検討するなど、
的確に人権課題に対応しながら、多様な人々の人権が誰一人取り残されることなく
尊重される都市東京を目指してまいります。

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○百二十二番(吉原修君) 

平成三十年第三回定例会に当たり、
東京都議会自由民主党を代表して質問をいたします。

(中略)

東京都オリンピック憲章の人権尊重の理念を実現するための
条例案についてお伺いいたします。

 二〇一四年のソチ冬季五輪大会において、
性的少数者に対する深刻な差別が問題となり、
その年のIOC総会において、
オリンピック憲章には、新たに性的指向に関する事項が盛り込まれ、
二〇二〇年東京大会の基本計画にも、
多様性を認め合う対象として、性的指向が明記されました。

 我が党においても、二〇一五年には、
全国教育委員会等に向けて、性同一性障害に係る児童生徒に対する
きめ細かな対応の実施等についてを示し、教職員向けに手引を発行しました。

 また二〇一七年三月に、いじめ防止基本方針に
LGBT生徒を明文化して対象に含め、
現在、安倍政権が掲げる一億総活躍社会の旗のもと、
性的指向、性自認の多様なあり方をお互いに受けとめ合う社会を実現するため、
仮称ではありますが、LGBT理解促進法法案を
自民党、公明党において
臨時国会に提出する準備を進めていると聞いております。

 私たちは、人権文化の涵養には、
時間とプロセスが何よりも大切であるとの歴史的経緯のもと、
現状と課題に対して、丁寧かつ慎重に調査を進め、
当事者の方々の悩みや不安の解消を優先に、
差別という以前に、知識の不足を解消し、
ホストシティーとして、東京から積極的に理解を促していくことが
必要であると考えております。

 しかしながら、このたびの都の取り組みは、
人権尊重という重大なテーマにもかかわらず、
政府や企業の取り組み状況、各方面の当事者団体からの意見聴取、
さらには審議会に諮ることもせず、
パブリックコメントや区市町村からの意見を反映することもなく、
議会には正式な条例案を定例会開会の直前に提出するという、
余りにも独善的で、拙速なものであります。

 まさに都民ファーストとはほど遠い、
オリンピック憲章を利用した政治的パフォーマンスであるといえます。

 そこで、条例案を検討するに当たり、
なぜ各方面からの意見を正式に聴取する審議会を立ち上げなかったのか、
また、検討中の国の取り組みを見きわめて慎重に取り組まれなかったのかお伺いします。

 さらに、この条例案は、不当な差別に対する十分な定義が示されておらず、
また、審査会の組織の性格など、
知事が国会議員時代に反対した人権擁護法案、
そして人権侵害救済法案と考えが同質なものであり、
条例の前文に示されている日本国憲法その他の法令等に
違反する可能性が高いと考えます。

 そして、余りにも曖昧な条例案は、
差別解消の理解促進よりも、言葉狩りなどの意図せぬ対立をあおり、
結果として、当事者の孤立を深める可能性もあると思われます。

 条例に示されている不当な差別的言動の解消と、
憲法十九条、思想、良心の自由、二十一条の表現の自由との関係性について、
また、審査会の調査権の根拠について、見解をそれぞれお伺いいたします。

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○知事(小池百合子君) 吉原修議員の代表質問にお答えをいたします。

(中略)

新たな条例の制定に向けました取り組み、人権条例でございますが、
その制定に向けた取り組みでございます。

 東京二〇二〇大会の開催を間近に控えまして、
オリンピック憲章にうたわれます、いかなる種類の差別も許されないという
人権尊重の理念実現に向けました決意を
できるだけ早く都として示し、
さまざまな人権課題へ対応していくことが求められております。

 昨年十二月に条例化の方針を明らかにした後、
条例化のために必要なさまざまな知見を得るため、
当事者、専門家、それぞれの立場で個別にご意見をいただきまして、
検討を進めることといたしました。

そして、五月に条例案のポイントを、
六月には条例案の概要を公表させていただいております。

その後、都議会におけるご議論やパブリックコメントにて
多くのご意見なども踏まえまして、さらに区市町村への情報提供を行った上で、
丁寧に準備を進め、条例案を本定例会に提出したところでございます。

 不当な差別的言動の解消に関する取り組みについてでございますが、
提出している条例案では、
本邦外出身者に対します不当な差別的言動の解消に向けた取り組みを
推進するための仕組みについて規定をいたしております。

具体的には、公の施設の利用制限に関する基準を定めることや、
事案の公表、そして拡散防止に関する措置についての規定でございます。

 そして、これらを着実に実施していくに当たりましては、
憲法で保障されている表現の自由等への配慮が不可欠でございますので、
条例に明示的に規定することといたしました。

さらに、条例の規定の適用を公平かつ中立的に行っていくことを担保していくために、
地方自治法の規定によりまして、
条例で設置することが認められている附属機関である審査会を、
本条例で設置することを規定いたしております。

 都といたしましては、条例制定を契機といたしまして、
ヘイトスピーチが許されないということを明らかにしてまいります。

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○百三番(とくとめ道信君) 

日本共産党都議団を代表して質問します。

(中略)

最後に、今定例会に提出された人権条例です。

 日本共産党都議団は、よりよい条例にするために、
憲法を据えること、啓発だけでなくて教育を位置づけること、
都民参加による推進、差別禁止を明記する必要性などを提案してきました。

これらが条例案に反映されたことを評価するものであります。

 また、第四条に、都、都民及び事業者は、
性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならないと
位置づけられたことも重要です。

 条例案のヘイトスピーチ規制について質問します。

 ヘイトスピーチへの規制は、
憲法が保障する言論、表現の自由を守る立場を堅持するとともに、
ヘイトスピーチ規制法に基づいて、規制対象を明確にすることが重要です。

見解を伺います。

 条例案の第十一条で、知事は、
公の施設において不当な差別的言動が行われることを防止するため、
公の施設の利用制限について基準を定めるとされています。

一方、地方自治法第二百四十四条二項は、
地方公共団体は、正当な理由がない限り、
住民が公の施設を利用することを拒んではならないとしています。

 知事が定める基準は、この法の規定を厳格に踏まえることが必要です。

いかがですか。

 また、基準を定める際、
条例で設置される審査会の意見を聞く必要があると思いますが、
見解を伺います。

 知事は、関東大震災における朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典への追悼文送付を取りやめ、
ことしも送付しませんでした。

多くの都民の批判と失望を呼んでいます。

 知事は、関東大震災における朝鮮人虐殺は歴史の事実であり、
重大な人権侵害だと認識していますか。

 こういうことを繰り返さない決意を示すことこそ、
人権尊重条例の前提ではありませんか。

 今でも災害が起きるたびにSNSへの悪意のある書き込みなどが行われており、
過去の問題ではありません。

知事の答弁を求め、再質問を留保して、質問を終わります。(拍手)

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○知事(小池百合子君) 

とくとめ道信議員の代表質問、三十問にお答えをいたします。

(中略)

オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例
制定の意義でございますが、
多様性が尊重されて、温かく優しさにあふれる東京の実現には、
人権を尊重するということが必要であります。

 こうしたことから、東京二〇二〇大会の開催都市として、
オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念が広く都民に浸透した都市としていくために、
今般、条例を制定して必要な取り組みを推進することといたしました。

 この条例化を通じて、人権尊重の理念の浸透を加速させまして、
東京に集う多様な人々の人権が、誰一人取り残されることなく尊重され、
誰もが認め合う共生社会を実現していくという考えでございます。

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○十四番(藤井とものり君) 

都議会立憲民主党・民主クラブを代表して、
都政の諸課題について質問いたします。

(中略)

次に、
東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案
について伺います。

 オリンピック憲章の定める権利及び自由は、
人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、
国、あるいは社会のルーツ、財産、出自やその他の身分などの理由による
いかなる種類の差別も受けることなく、
確実に享受されなければならないとしています。

 一方、東京二〇二〇大会が、
二〇一四年のソチ大会におけるロシアの同性愛禁止法をめぐる混乱、
あるいは二〇一二年のロンドン大会における
偏狭なナショナリズムをあおる選手の振る舞いなどを教訓に、
LGBTやヘイトスピーチに焦点を当てて条例を制定することは意義があります。

 しかし、私は、オリンピック憲章にうたわれる
人権尊重の理念の実現を目指す条例とうたう以上、
やはり冒頭に申し上げたとおり、
LGBTとヘイトスピーチのみならず、
他の人権についても、ひとしく尊重されるべきであると考えますが、
知事の見解を伺います。

 さらに、人権施策指針で掲げられている十七分類の人権課題について、
例えば私たちがさきの代表質問で要望した犯罪被害者、
二〇一六年のリオ大会で課題となった路上生活者、
古くからの課題である同和問題などについて、
この条例について何がどのように変わるのか見解を伺います。

 特に、LGBTについては、当事者団体などからも、
都営住宅の入居はもとより、病院での面会や各種契約の締結などにおいて、
差別的に扱われることがあるとの声を伺います。

そこで、LGBTに関して
具体的にどのような差別があると認識しているのか、
また、この条例によってこれらの差別はどのように変わるのか、
局長の見解を伺います。

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○知事(小池百合子君) 

藤井とものり議員の代表質問にお答えいたします。

(中略)

次に、
オリンピック憲章にうたわれます人権尊重の理念の実現を目指す条例
でございますが、
多様性が尊重されて、あらゆる人が輝く社会を実現するためには、
人権尊重の機運をこれまで以上に高めていく、これは不可欠でございます。

 今回提案をいたしました条例におきましては、
オリンピック憲章にうたわれます、いかなる種類の差別も許されないという
人権尊重の理念を浸透していくべく、
啓発、教育等の人権施策を総合的に実施していくことを規定いたしております。

 その上で、ホストシティーといたしまして、
性自認及び性的指向に関します不当な差別の解消、
そして啓発などの推進、本邦外出身者に対します
不当な差別的言動の解消に取り組んでいくことを示しております。

 さまざまな人権に関する不当な差別を許さないとの姿勢を
改めて明確にいたしまして、
今後も人権課題への取り組みを積極的に推進することで、
多様性を尊重する都市東京をつくり上げてまいりたいと存じます。

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○総務局長代理次長(榎本雅人君) 

五点の質問にお答えいたします。

(中略)

次に、人権課題への取り組みについてでございますが、
都はこれまでも、東京都人権施策推進指針に基づいて、
それぞれの人権課題に対して取り組んできたところでございます。

 今回提案した条例では、
人権尊重の理念を東京の隅々にまで浸透させ、
多様性を尊重する都市をつくり上げていくため、
必要な取り組みを推進することを都の責務として規定しております。

 都は、条例制定を契機に、
いかなる種類の差別も許されないという観点から、
指針に掲げる十七の課題それぞれにおける取り組みの方向性を踏まえつつ、
人権施策をより積極的に推進してまいります。

 次に、LGBTに関する取り組みについてでございますが、
LGBT当事者の方々は、
教育、就労など社会のさまざまな場面で
困難等に直面していると聞いております。

中には性自認や性的指向を理由とする
不当な差別的取り扱いを受けている場合もあるものと認識しております。

 今回提案の条例におきまして、
性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いを禁じるとともに、
都は基本計画を策定し、必要な取り組みを推進することを規定しております。

 条例制定を契機に、各施策現場において、
どのような配慮が必要かなどを個別具体的に検証しながら、
都として不当な差別を解消してまいります。

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