ウィルソンインタ残りの全訳です〜。羽生くん、ジェーニャちゃん、ハビのこと。また、これまで振り付けた大ちゃんやみきちゃん、小塚くん、パトリックについても。


ヨナが去った数年後、オーサーとウィルソンは羽生結弦という新たなプロジェクトに取り掛かっていた。
仙台出身のこの選手についてウィルソンはこれ以上ないほど称賛し、興味深い話を聞かせてくれた。
「彼はまるでサムライ。伝説の忍者戦士みたい。」と、このスーパースターを形容する。
「ソチの五輪年の音楽を選ぶ段階になった時、彼はその前年からロミオとジュリエットと心に決めていたんだ。彼は僕に信じられないようなメールをよこしてきてね。そこには、どれほど切実に五輪で優勝したいかを宣言するような言葉が並んでいたよ。あれほど純粋で、切羽詰まった言葉は見たことがなかった。熱望、をさらに超える切望だった。これ以上に形容する言葉が見当たらないよ。
「僕は次の五輪まで待ちたくありません、今五輪金メダリストになりたいのです。その為にはなんだってします。だからお願いします、助けてください、お願いします」ってね。
それはもう懇願というべきものだった。それで、「OMG」って思ったね。」
ウィルソンは羽生と、彼がいかに技術と芸術を融合させることができるかについて熱弁をふるった。
「競技においては13-14シーズン以降共に仕事をしたことはなかったけれど、ずっと見てきたよ。エキシビションナンバーの振付もして、とても楽しかった。両方の世界の一番良いところを楽しめたんだ。
結弦っていう人はね、競争心がまるで動物のようなんだ。虎みたいにね。だからこそ、ショーを一緒にやることができるととても楽しい。彼は競技者、アスリートとして素晴らしいのと同じくらい、卓越した表現者でもある。彼には10人分のカリスマ性が備わっている。
彼は意味深な「間」、なんでもないような「間」でも、忘れがたいものにすることができる。それは彼自身が心からそれを感じ取っているから。それから、彼は猫のように身体を動かすこともできる。彼にはできないことなんて何もない。」
そして、羽生の音楽性や献身を完璧に表現してみせた。
「彼は特別な耳を持っている。FaOIである曲を振りつけた。一日早く現地入りして。4時間半で振付を終えて、翌日に1時間半フォローアップした。その後僕はグループナンバーの振付があったのでそれきりになってしまった。
彼はその曲が大好きでね。思い入れのこもった経験だった。ホテルの部屋で何時間も、全てのニュアンス、動きを、まるで細い目の櫛でとかすように綿密に確認していたよ。」
ウィルソンは、彼でさえ羽生がいかにプログラムを与えられてからすぐにそれを演じるところまで持っていけるかに驚く、と告白した。
「3回、彼がそのプログラムを演じるのを見たけれど、もう信じられない、という感じだった。プルシェンコの奥さんの隣で見ていたんだけど、彼女は天を仰いでいたよ。まるで天から降ってきたようだった。」
見てきた何年もの間、羽生が他人に腹を立てるのを見たことがない、とウィルソンは話す。
「自分自身に怒っているのは見たことがあるけど、他人に対してはないね。スケートに対して偏執的になってしまうのは見たことがあるけれど。」
ヨナ同様、羽生も感謝の気持ちを惜しみなく表現する。
「彼からか心のこもった優しい感謝の言葉をかけられたことは何度かあるよ。彼が唯一無二の存在であること、これは間違いないね。」

Ice Timeは、ウィルソンに振付師はどうやって生計を立てているのか尋ねた。ショーの振付をするときでも、彼に費用を払うのはスケーターだと言う。
「多くはフラット料金にしている。まるで絵を描いた時みたいに。スケーターのレベルにもよるし、SPなのかFSなのかEXなのかでも変わってくる。
さっと振付してほしいのか、1週間じっくりやるのかでも違う。アスリートとしてどのレベルかによっても変わるね。」
「これからの選手には少し安くする。トップ選手やそれに近い選手は連盟から助成金が出るので、親が支払わなくても良くなる。」
ウィルソンは金銭的なことはあまり強みではないと認める。
「僕はあまりそういう物質的なものは得意ではないんだ。僕は芸術家。人と関わるのが好きな人間。人を喜ばせたいあまり、少し流されやすいところがあるね。
いつも自分の好きにできるわけではない。長年の失敗経験からこういうこととどう向き合うか学んできた。若手の振付師にアドバイスしてあげたいね。」
振付を始めた当初は困難と直面することもあったとウィルソンは話す。
「最近ではサンドラ・ベジックは僕にとって良きメンターとなってくれましたが、若いうちは誰も相談できる相手がいなかった。誰も知らなかったから。」
「最近はある種の組合を作ることも検討しているんだ。振付師同士が互いに面倒を見あったり、振付のアイデアを交換できるような。」
振付師は多くの場合軽んじられがちであると考えている。
「連盟は僕たちの面倒は見てくれない。コーチが優先。いて当たり前というふうに扱われる。どこも同じような感じだよ。軽く捨てられて、出たり入ったりしている。
僕の若い頃は振付師っていうのは片手で数えられるほどしかいなかった。いまやカナダだけでも国際的に仕事をしている振付師が15人はいる。ロシア、アメリカ、フランス、日本にも振付師がいる。だから、僕らが力を合わせてもっと強い声を保つための組織が必要なのかもしれない。」

ウィルソンはこの夏オーサー門下に電撃移籍した平昌銀メダリストで二度の世界女王、エフゲニア・メドヴェージェワとの仕事を楽しみにしていると話した。
「何年か前にハビのショーに出たことがあって、とてもいい子だったよ。成熟していて、一緒に仕事をするのが楽しい相手だった。彼女は惜しみなく全てを注ぎこむ。スイッチを入れることができる。真剣なんだ。実際に彼女と仕事ができることに興奮しているよ。きっと素晴らしいものになる。」
羽生とメドヴェージェワが同じ氷でトレーニングするのは理想的な状況になると考えている。
「結弦とハビは何年も互いに勝ったり負けたりしながらあれほど上手くやれた。問題はほとんど無かった。
トップの女子選手とトップの男子選手はある意味完璧。互いに競うわけではないから、単に互いをインスパイアする関係でいられる。彼らはスケートへの向き合い方も相性が良いしね。
どちらも虎だ。だから最高。そして互いに尊敬しあっていると思う。」

ウィルソンは長年にわたり、あらゆる高名なスケーターの振付を行ってきた。
そのうちの何人かについて尋ねた。

ハビエル・フェルナンデス
「ハビに関して特別なのは、男子フィギュアというのはいろんなタイプの選手がいるんだけど、彼は万人受けするということだね。そういう誰にでも好かれるところを持っている。5分以上を彼と過ごしたら、魅了されずにいるのは不可能。世界で一番スイートな人。おバカなコメディを演じたと思ったら、次の瞬間には泣かせてくる。」

伊藤みどり
「オンタリオのJWを13歳の時に見に行った。みどりはその時11歳で、二度と見られないような経験をしたよ。彼女の練習を座って見ていた時の気持ちは忘れられない。まるでる5歳くらいに見えた。ぜんまい仕掛けのおもちゃが飛んで回ってるみたい。
スケートの流れとパワー。躊躇いもなくいかにも簡単そうにジャンプをして。2A、3T、3S、3Lo、3Fを練習でも飛んでいた。
彼女が復帰するという時に振り付けをしたけれど、結局復帰はしなかった。だから人々の目に触れることはなかったんだけど、なんと光栄だったことか。彼女に畏怖の念を抱いて育ったからね。
幸い仲良くなって、PIWには6年間毎年参加して2つのエキシビションを振り付けることができた。」

安藤美姫
「なんてかわいい人。現役の時は一回一緒に仕事をした。一年だけだったのが本当に惜しかった。けれど彼女は僕のところに戻ってきて、ショーナンバーを作って素晴らしい経験を共にしたよ。才能に溢れて、美しく、優しい魂を持っている。」

高橋大輔
「彼と働く機会は一回しかなかったんだ。SPを振り付けたんだけど、彼からの希望は「なにかエキゾチックなものを」だけだった。そのプログラムには3つの音楽を組み合わせた。けれどフォローアップに来ることはなかったね。彼とはその後会うことがなかった。
でもこの話にはハッピーエンドがあってね。2週間後にはトロントに彼が振付をしに来るんだ。彼にショーナンバーを振り付ける予定。」

中野友加里
「みどりと仕事を始めた時、ゆかりはまだ9歳くらいだった。トレイシー・ウィングマンを思い出させたよ。彼女は僕の親友の一人。少女としてはすごいセンセーショナルだった。9歳にして魅せることを知っていて、大きい演技をした。四肢を大きく使い、表現力もあった。素晴らしくて、とてもかわいい子だった。彼女がドーナツスピンを発明したんだよ。」

小塚崇彦
「美しいスケーター。とてもエレガントで洗練されている。」

パトリック・チャン
「パトリックは究極のスケーターズスケーター。人としても高貴な人。彼ほど謙虚で人へ敬意を持っている人を知らないよ。彼と仕事をすることはないと思っていたけれど電話がきて、それ以来7年間仕事をしてきた。」

Ice Timeはまた、彼が振り付けをしたことがないが、振り付けをしてみたいスケーターについても尋ねた。

浅田真央
「もし実現したら素晴らしかったろうけれど、僕がヨナにつくことになったのは運命だったんだろうね。」

ミシェル・クワン
「振り付ける寸前までは行ったことがあったんだけどね。一度だけでも良かったのに。韓国でのショーで数年前に滑ってくれて、知り合うことができた。彼女とは恋に落ちるよ。素晴らしい人なんだ。LAと韓国で滑った、ヨナと彼女のデュエットを振り付けることはできたよ。」

(終)

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