★シビリアンコントロール逸脱の張本人は安倍首相であるー(天木直人氏)

 私がまだ下っ端外務官僚だったころは、

少しでもシビリアンコントロールの逸脱とみなされる言動を見せた政治家や官僚が

あらわれたら、それだけで国会がストップするぐらいの大騒ぎになった。

 ところが、いまではシビリアンコントロールなどという言葉は

死語同然になってしまった。

 それどころか、首相みずからが率先してシビリアンコントロールを逸脱している。

 そう思わせる記事をきょう1月7日の共同通信が配信し、

それを東京新聞が大きく転載した。

 すなわち、ここにきて、日本の防衛力整備は

国家安全保障会議(NSC)主導で進められているというのだ。

 私は国家安全保障会議の前身である内閣安全保障会議の審議官(課長級)として

外務省から出向していた時があった。

 そこでの審議官の役割は、大蔵省(財務省)、外務省、通産省(経産省)が

防衛庁のつくる防衛計画大綱を、それぞれの省益の縄張り争いの下に、

承認するというものであった。

 だから国家安全保障会議は、

各省が合意したものを時の政権が追認するセレモニーの場だった。

 シビリアンコントロール逸脱の余地はなかった。

 ところが、きょうの共同通信の記事を読むと、

いまでは我が国の安保政策の司令塔は国家安全保障会議で、

そこがトップダウンで戦闘機や戦車、

いや、いまではミサイル迎撃システムや宇宙、サイバー戦略まで決めているという。

 その司令官とは、いうまでもなく安倍首相であり、

安倍首相の人事で決められる極めて限られた官僚たちである。

 官僚はもちろん、安倍首相もまた、れっきとしてシビリアンである。

 その意味で、形の上ではシビリアンコントロールは強化されている。

 ところが安倍首相は、そのそもシビリアンコントロールとは真逆の、

軍人ばかりで固められたトランプ政権のいいなりだ。

 しかも、安倍首相は自衛隊の権限強化と合憲化に熱心であり、

自衛隊の中でも親米タカ派をトップに置いている。

 これを要するに、安倍首相はまさしくシビリアンコントロールを

率先して逸脱して恥じない、戦後の日本の首相の中の唯一の首相だ。

 専守防衛を超えた防衛力整備が急速に進められようとしているはずだ。

 このままいけば国民生活は危うい。

 戦争で危ういのではない。

 その前に、日々の生活が危うくなる。

 やはりシビリアンコントロールの逸脱は許されないという事である。

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