★日韓合意検証作業部会報告書の公表に思うー(天木直人氏)

ついに日韓合意検証作業部会の報告書が公表された。

 想定したとはいえ、ここまで衝撃的な報告書だとは思わなかった。

 一番詳しく報じたのは読売新聞だった。

 一面全ページを割いてその要旨を掲載した。

 それを読んであらためて2年前の日韓合意に至るまでの経緯がよく分かった。

 あの合意には密約部分があったのだ。

 不可逆合意という言葉は、当初韓国側が日本の謝罪の不可逆性を要求して

持ち出したものを、日本側が合意の不可逆性にすり替えてしまったという

驚くべき事実も判明した。

 それでは、今回の韓国政府の報告書公表をどう評価すればいいのか。

 結論から言えば、この検証報告書の持つ歴史的意義は貴重だと考えるが、

それをそのまま公表した事は外交的に間違いだったのではないかということだ。

 なぜなら、この報告書の公表によって日韓関係は

決定的に悪化することになるからだ。

 それだけではない。

 ただでさえ困難な慰安婦問題の真の解決が、

この報告書の公表によってさらにこじれる事になる。

 そう評価した上で、私は次の二つの事を指摘しておきたい。

 なぜ文在寅大統領は、

自らを苦しい立場に追いやる日韓合意の検証作業を行う事にしたのか。

 それは韓国世論の圧倒的な要求があったからだ。

 だからこそ大統領選挙の時に全ての候補者が見直しを公約として掲げたのだ。

 そして、当選した文在寅大統領は、

公約通り検証作業を実施せざるをえなかったのだ。

 もっといえば、当事者(慰安婦たちやその関係者)の意向を無視して

日韓合意に踏み切った朴槿恵大統領に対する世論の怒りが、

朴槿恵大統領の不正に対する怒りをさらに強いものにし、

大統領弾劾にまで追い込んだのだ。

 ひるがえって日本はどうか。

 どんなに安倍外交が行き詰まり、安倍政権の不正が判明しても、世論は動かない。

 安倍一強を許したままだ。

 あらためて国民の権力の不正に対する怒りの違いを痛感せざるを得ない。

 もうひとつは、この報告書の中に米国への言及が皆無であるということだ。

 私はあの時、てっきり米国の圧力があったと思った。

 日米韓軍事同盟を強化する上で、

日韓関係をはやく改善しろと命ぜられたのかと思った。

 今度の検証委員会が米国に配慮してあえて言及を避けたのか、

あるいは、もともと米国はそこまで関与することなく、

安倍首相の圧力に屈した朴槿恵大統領が韓国世論に隠して

日韓合意を急いだということなのか。

 それはそれで、韓国世論は許さないだろう。

 いずれにしても日韓合意検証作業部会の報告書公表は、

日韓関係の今後に大きな難問を突きつけていく事になる。

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