★政党にはもう頼らない私たちの連帯で進もうー(植草一秀氏)

今年も残すところ11日になった。

改めて痛感させられることは、政治権力の暴走が極まっていることだ。

政治制度、政治体制の要諦は、権力の暴走を防ぐことだ。

そのための装置が

立憲主義



権力の分立

である。

立憲主義は、政治権力の暴走を防ぐ防波堤として憲法を定め、

権力に対して憲法の尊重・擁護義務を課すものだ。

政治権力といえども憲法の前には従順でなければならない。

憲法は政治権力を縛るために存在する。

これが立憲主義の考え方である。

もう一つの手立ては、権力を分散させて、

特定の者が権力を独占しないようにすることだ。

立法、行政、司法を分立させる。

特定の者がこれらの機能を独占的に支配しないようにしなければならない。

民主主義政治を円滑に機能させるためにこれらの装置が用意されている。

しかし、安倍政治はこの基本を破壊している。


安倍首相は選挙で勝った政権は憲法解釈を変えられると発言した。

立憲主義も、日本国憲法も、何も理解していないのだと思われる。

日本政府は憲法第9条の規定に基づいて集団的自衛権行使を禁止してきた。

1971年に政府見解を公表し、これを40年以上も堅持してきたのである。

したがって、集団的自衛権の行使禁止は憲法の一部を成していると言える。

その憲法解釈を安倍政権は変えた。

そして、その新解釈の下に戦争法制を制定した。

自衛隊が集団的自衛権を行使するための法律を制定したのである。

安倍政権の暴走極まれりと言える。

森友学園、加計学園疑惑では、安倍首相が政治権力を私的に濫用している疑いが

浮上した。

10億円の国有財産をたったの200万円で払い下げるという

驚くべき事実が明るみに出た。

また、首相の友人が希望する獣医学部新設を国家戦略特区諮問会議を利用して、

公平、公正でないプロセスで認可した。

その加計学園は建設費を水増し計上して補助金を詐取した疑いも持たれている。

しかし、検察当局は加計学園に対する強制捜査も行っていない。


他方で、安倍首相夫人が深く関与して森友学園に

10億円の国有地が200万円で払い下げられた事実を

詳細に語り始めた森友学園の籠池泰典前理事長夫妻の言動が目障りになると、

籠池氏夫妻を補助金詐取容疑で逮捕、起訴し、

4ヵ月以上に及ぶ不当な勾留を続けている。

北朝鮮の暴政と日本の暴政に大きな違いはない。

恐るべき独裁政治と言うべきものである。

加計学園の補助金詐取疑惑に対してはまともな捜査活動さえ行われていない。

その一方で、籠池氏夫妻に対しては容疑の段階で4ヵ月以上も身柄を拘束し、

補助金適正化法で対処するべきところを刑法の詐欺罪を適用して逮捕、勾留する

という基本的人権侵害の行動を示している。

また、元TBS社員の山口敬之氏は、

準強姦容疑で警視庁高輪警察署が逮捕状を請求して裁判所がこれを発付した。

山口氏が帰国するタイミングで逮捕する予定でいたところ、

警視庁刑事部長の中村格氏が逮捕状の執行を取りやめさせた。

山口敬之氏は安倍首相を持ち上げる著書を刊行している。

日本の警察・検察・裁判所が、文字通り政治権力の犬と化してしまっている。

また、最高裁判所はテレビを設置したら

NHKと放送受信契約を結ばなければならないという、

契約の自由を否定する憲法判断を示した、

内閣総理大臣はNHK経営委員会の人事権を有し、

この人事権を活用することにより、NHK会長、副会長、理事の人事を支配できる。

安倍政権は露骨に人事に介入してNHK支配を強めている。

放送受信者の意向を完全に無視して

NHKが政治権力に迎合する偏向報道を展開しても、

最高裁が国民からの受信料強制徴収にお墨付きを与えるなら、

NHKは益々偏向にいそしむことになるだろう。

こんな「暗黒日本」が極まったのが2017年である。

「陰極まれば陽に転ず」

という。

2018年は安倍政治の暴走にブレーキをかけて、

日本政治を刷新する元年にしなければならない。


政治刷新を誰がやるのか。

これまでの主役は政治家であり、政党だった。

しかし、この「常識」を疑ってみる必要がある。

野党の政治家と野党の政党は、主権者国民の声を代弁する存在でなければならない。

しかし、その期待に応えない勢力が跋扈してしまっている。

日本政治の体たらくをもたらしている元凶は、旧民主党、現在の民進党である。

そもそも2009年の政権交代の偉業を破壊したのが

民主党内に潜む隠れ自公勢力だった。


なぜ鳩山政権がつぶされたのか。

その本質を正確に洞察することが必要である。

2009年誕生の鳩山政権は、日本政治の基本構造を

根底から変えようとした政権であった。

米国が支配する日本

官僚が支配する日本

大資本が支配する日本

を同時に変えようとした。

辺野古基地にNOを示し、官僚天下り根絶を示し、企業団体献金全面禁止を掲げた。

日本の既得権構造を全面的に刷新しようとしたのである。

そのために、鳩山政権は破壊されたのである。


その破壊を実行したのが、民主党内に潜んでいた「隠れ自公勢力」であった。

同時に、警察・検察・裁判所と御用メディアがスクラムを組んで、

人物破壊工作を展開した。

小沢一郎氏は犯罪者に仕立て上げられ、

鳩山首相に対しては献金問題での追及が展開された。

鳩山政権が何によって倒されたのかを真横で見ていた人物がいる。

それが菅直人氏である。

菅直人氏は権力を強奪すると、日本の既得権勢力の側に寝返った。

辺野古基地建設を推進し、

消費税増税の旗を振り、

TPP推進に舵を切った。

その路線を継承したのが野田佳彦氏である。

野田佳彦氏は消費税大増税を強行決定し、安倍自民党に大政を奉還した。

その延長線上にいまの日本がある。

民進党は2009年の鳩山政権を破壊した「隠れ自公勢力」が

支配権を持つ政党であり、

そのために、この政党が日本政治刷新の重責を担うことは論理的に矛盾があるのだ。


民進党が分離・分割して立憲民主党が創設された。

ここに主権者は希望を見出している。

しかし、立憲民主党が大きくウイングを広げて、

反自公勢力の結集を広く呼び掛ける行動を示していない。

だからこそ、いま、主権者=市民による大きな運動が必要なのである。

その政治運動を、明るく、輝く運動として展開する。

2018年に、その運動を本格的に始動させなければならない。

愛・夢・希望

の旗を掲げて、広く市民が結集する。

草の根からの民主主義運動が必要なのだ。


政治を変えるのは私たち主権者の仕事だ。

既存の政党が頼りにならないから、私たちが政治を変えることを考えよう。

私たちの未来は私たちが決める。

既得権者はさまざまな策謀を巡らせて、既得権維持を図る。

主権者が本当に一つにまとまれば、既得権は完全に破壊されてしまう。

だから、彼らは主権者が一つにまとまらぬように、

ありとあらゆる工作活動を展開しているのだ。

しかし、1%のための政治を変えるには、99%の人々が連帯するしかない。

連帯すればすべてを変えられる。

99%は1%よりも強いのだ。

2018年の政治運動は私たち主権者が主導する。

頼りにならない政党を見限って、

主権者主導の政治刷新を大きく展開する年にしよう。

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