★「アメリカ太平洋軍」という名の日米同盟礼賛本ー(天木直人氏)

 新聞広告につられて「アメリカ太平洋軍」(講談社)という本を買って

一日かけて読み終えた。

 「日米が融合する世界最強の集団」という副題につられたからだ。

 米軍が最強である事は知っているつもりであったが、

どこまで米軍が強大なのか、少しは勉強してみたいと思ったからだ。

 ところが読んでみて失望した。

 どこを読んでも、米軍の、それもハリス司令官率いる太平洋軍の礼賛ばかりだ。

 無理もない。

 著者である梶原みずほという朝日新聞の記者が、

朝日新聞と米国務省の全面協力によって、

ハワイの研究機関で二年間もの間、研究させてもらった「成果」を

本にしただけだからだ。

 日米関係者から見たり、聞いたりしてきた来た事を、

彼らに敬意を表しながら書き連ねているだけの本だからだ。

 彼女はその「あとがき」で、国防総省の内部の一員として見聞きしたことを

本にしたことを言い訳がましく、こう書いている。

 「ちなみに国防総省による検閲は一切なかった」と。

 当たり前だろう。

 わざわざ宣伝してくれる本のどこを検閲しなければいけないというのか。

 それにしてもと思う。

 この梶原みずほという記者は、こうして日米両政府に取り込まれ、

やがて朝日新聞社の外交・政治を担当する幹部になり、

日米同盟最優先の日本の政策の片棒を担ぐのである。

 ちなみに彼女が真っ先に献辞を捧げている人物が、

上司である西村陽一常務取締役だ。

 朝日新聞の次期社長候補の筆頭に挙げられている、

朝日きっての日米同盟礼賛論者だ。

 安倍首相と敵対し、安倍首相に嫌われている朝日新聞であるが、

日米同盟最優先では見事に一致する。

 暗澹たる思いだ。

 日本国民が日米同盟から自立できないのも無理はない。

 それを知っただけでも読んだ価値がある。

 そうみずからに言い聞かせるしかない本である。

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