★柄谷行人(からたにこうじん)さんの護憲論にうなづくー(天木直人氏)

きょう11月27日の毎日新聞で、文芸評論家であり思想家の

柄谷行人(からたにこうじん)さんが語っていた。

 「そこが聞きたい 憲法9条の存在意義」というインタビューの中で

答えていた言葉だ。

 その中に、私が考えていることと同じ事が語られていた。

 ひとつは押しつけ憲法であっても、

それを日本人が受け入れたことこそ重要であるということだ。

 「・・・確かに9条は連合軍総司令部(GHQ)に押しつけられたものです・・・

しかし、9条がGHQに強制されたことと、日本人がそれを受け入れたことは

矛盾しません。実際、GHQが憲法9条の改正を言って来たのに

当時の吉田茂首相はそれをしりぞけました。

まず外部の力による『戦争の断念』がありました。

それが良心を生み出し、それが『戦争の断念』を一層求めたのです。

その意味で9条は日本人による自主的な選択です。いわば『文化』です・・・」と。

 二つは明治維新に対する次の如き評価だ。

 「・・・長い戦国時代の後、戦争を否定する徳川幕府体制が生まれ、

国内だけでなく、東アジア一帯の平和が実現されました。

『徳川の平和』と呼ばれています。武士は帯刀しましたが、

刀は身分をあらわす象徴であり、武器ではなかったのです。

徳川の文化こそが9条の精神を先取りした『先行形態』です。

ところが、明治維新後に日本は徴兵制をはじめ、朝鮮半島を植民化し、

中国を侵略しました。

9条が根ざしているのは、明治維新以後、

日本人がやってきたことに対する無意識の悔恨です・・・」

 ちなみに天皇と徳川幕府の関係を次のように語っている。

 「・・・徳川家康は天皇を丁寧に扱いました。

天皇を否定したら、他の大名が天皇を担いで反乱を起こすに決まっていたからです。

徳川は天皇を祭り上げて、政治から隔離した上で、徳川幕府体制の中に

位置づけました。それは戦後憲法における『象徴天皇』の先行形態だと

言えます・・・」

 三つ目は9条が国際社会に果たす役割だ。

 「・・・9条にある『戦争放棄』は単なる放棄ではなく、

国際社会に向けられた『贈与』と呼ぶべきものだと思います。

贈与された方はどうするか。

例えば、どこかの国が無防備の日本に攻め込んだり脅迫したりするなら、

国際社会で糾弾されるでしょう。

贈与によって日本は無力になるわけではありません。

それによって、国際世論を勝ちとります。

贈与の力は軍事力や経済力を超えるものです・・・

具体的には日本が国連総会で『9条を実行する』と表明することです。

これは、第二次世界大戦の戦勝国が牛耳って来た国連を変え、

ドイツの哲学者カントが提唱した『世界共和国』の方向に国連を向かわせる

ことになると思いまます・・・」

 素晴らしい言葉だ。

 まさしく憲法9条の存在意義がこれらの言葉の中にある。

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