★民意に反する安倍政治打破の方策-(植草一秀氏)

原発の稼動について、

地元自治体の住民の多くが原発稼動に反対しているという現実がある。

たとえば愛媛新聞が実施している県民世論調査では、

四国電力伊方原発の稼動について、

2017年3月時点でも68.4%の県民が反対している。

原発の安全性についても89.0%が「不安」や「やや不安」と答えている。

原発再稼動に賛成している県民は22.6%にとどまっている。

伊方原発は日本最大の活断層である「中央構造線」のほぼ真上に位置していると

見られており、いつ巨大地震によって損傷を受けてもおかしくない原発である。

狭隘な半島の付け根部分に位置しており、事故が発生した場合、

半島の原発よりも先端部分に居住する住民の避難も著しい困難を伴うと

想定されている。

滋賀県や鹿児島県、さらに新潟県では、

知事選において、原発稼動の是非が最大の争点になった。

そのなかで、原発再稼動反対の政策方針を明示した候補者が

相次いで勝利を収めてきた。

鹿児島県の場合は、選挙後に選出された知事が態度を豹変させて、

原発再稼動が強行されたが、民意を踏みにじる暴挙と言わざるを得ない。

原発が事故を引き起こせば、取り返しのつかない惨事が発生し得る。

福島の事故で、このことは、日本国民の脳裏に強く焼き付けられた。

世界最大の地震国のひとつである日本で、

原発を立地すること自体に根本的な無理がある。

「原発は安全だ」という神話は、日本においても完全に瓦解した。

国民の生命と健康を守るには、日本の原発をすべて廃炉にする以外に道はない。

このことは明確になっている。

米国では住民の投票によって州法が定められる。

国政選挙に際して州の住民投票が実施され、この住民投票によって州法が制定される。

スイスでは、1948年以来600回を超える国民投票が実施され、

国民投票によって主権者が意志を表示して来た。

世界の国々の半数が、国民が立法に直接参加できる仕組みを持っている。

日本でも、原発稼動などについて、立地都道府県で住民投票を実施し、

その結果によって原発稼動の是非を決定する方式が取られてもよいはずだ。

知事選が実質的に原発稼動是非を問う住民投票の側面を持つ場合もあるが、

選出された知事が裏切りの行動を取る場合あるし、

また、知事選の争点が原発稼動一点に絞り切れない場合もあるだろう。

立地自治体には巨額の原発マネーが注ぎ込まれるから、

立地自治体自身が買収されてしまう側面が強い。

国政レベルでも、原発稼動の是非だけを問えば、

主権者の過半数が原発稼動に反対であっても、

国会議席配分にその意思が反映されることは少ない。

こうなると、主権者の意思に反して原発稼動が広がる事態も生じ得る。

現に、安倍政権の下で原発稼動が強行されている。

民意を反映する政治は実現していない。

このような問題を解消するために、直接民主主義的な手法の採用を、

日本でも検討するべきだ。

11月28日に、

イタリア「五つ星運動」リーダーのリカルド・フラカーロ・イタリア下院議員が

初来日して、彼らが巻き起こしたムーブメントを語る。

講演概要は以下の通り。

日時 2017年11月28日(火)
   午後4時半~7時半(開場 午後4時)

場所 参議院議員会館講堂

資料代 1000円

参加ご希望の方は、必ず下記フォームからの申し込みをしてほしいとのことである。

https://goo.gl/hJYZcv

主催 五つ星運動との対話集会実行委員会

問い合わせ m5s2j@yahoo.co.jp

加計問題追及の先頭に立ってこられた黒川敦彦氏がブログに詳述されているので、

こちらも参照いただきたい。

https://goo.gl/P87GP2

イタリアの五つ星運動は政党支持率でトップに立つ運動体で

「地域のためにいいことしよう」

「自分たちのことは自分たちで決める」

を合言葉に直接民主制をイタリアに根づかせようと、

SNSを通じて急速に広まった、市民による市民のための草の根活動である。

その五つ星運動のリーダーの一人が初来日して市民と交流する貴重な機会である。

事前申し込みが必要なので、ぜひ、登録して対話集会に参加していただきたいと思う。


「五つ星運動」は、

・ローカリゼーション、
・スローライフ、
・ダウンシフト、
・インターネットデモクラシー

をテーマに掲げており、

政党名となった「5つ」の星は、社会が守るべき

(1)発展
(2)水資源
(3)持続可能性のある交通
(4)環境主義
(5)インターネット社会

を指す。

「五つ星運動」では、

インターネット投票で候補者を選抜し、政治腐敗を防ぐために、

国会議員の任期は2期までとし、他の政党とは連立を組まない、

議員報酬は国民の平均年収。

実際に返納ができないため、半額をマイクロクレジット基金に寄付している。

また、4800万ユーロの政党助成金も受け取りを拒否している。

普通の人の、当たり前の感覚を大切にしている。

地域を良くしようという運動から始まったことから、

議員になることが目的ではない。

直接民主制をイタリアに根付かせたら、役目を終えるとしている。

運動の存続自体が目的ではない。

こんな「五つ星運動」が、既存政治の腐敗にウンザリしていた、

20〜40代の若い世代を中心に支持を広げてきた。

現在、「五つ星運動」は、イタリア下院第2党で、

国民支持率はトップを記録している。

他党との連携を行っていないため、

小選挙区制度下の選挙でどこまで議席を増やすことができるか、

解決するべき課題を抱えているが、

来年までに実施される総選挙で、さらに勢力を拡大できるかどうか、注目されている。

代議制の民主主義の限界や問題点を認識して、

直接民主主義の手法を活用することを提案している。

政治は政治家のためにあるんじゃない。

自分たちのことは自分たちで決める。

この発想がベースにある。

イタリアの「五つ星運動」がどのように躍進してきたのか。

そのヒントを、直接、

「五つ星運動」リーダーであるリカルド・フラカーロ・イタリア下院議員から

聴くことのできる貴重な機会である。

フラカーロ氏はイタリア憲法改訂の直接民主条項の起草者でもある。

日本政治が深刻な状況に直面していることは多くの人々が同意することである。

最も深刻な問題は、民意の分布と国会の議席構成に著しい相違があることだ。

国会の決定が、民意を正確に反映していない。

これが根本の矛盾である。

端的に言えば、主権者全体の24.6%の人しか投票していない自公勢力が

衆議院議席総数の67.3%を占有してしまっている。

主権者全体の17.9%の人しか投票していない自民党が

衆議院議席総数の61.1%を占有してしまっている。

主権者全体の25.2%が投票した野党4党が

衆議院議席総数の25.6%の議席しか占有していない。

主権者全体の4分の1の投票しか得ていない勢力が、

日本のことをすべて決めてしまう。

ここに最も深刻な問題があるのだ。

二つの大きな問題がある。

第一は、国政選挙に約半分の主権者が足を運んでいないこと。

参政権を放棄してしまっては、主権者の意思を政治に反映することは不可能である。

第二は、小選挙区制度の下では、

現在の政治に対峙する勢力が大同団結しないと議席を増やすことが難しい。

現政権に対峙する勢力、市民の連帯を強めることが極めて大事なのだ。

「五つ星運動」は他の政党などとの連携をしない方針を掲げているが、

そのことによって、現実を理想に近づけることが、

逆に遠のいてしまう危険はないのか。

この点についても、五つ星運動の考え方を聞いてみる必要があるだろう。

「オールジャパン平和と共生」は、政党の枠組みにこだわらずに、

基本政策を基軸にして

主権者=市民が主導して

大同団結=連帯することの重要性を説いている。

そして、衆議院の小選挙区や参議院の1人区で、

現政権に対峙する候補者を1人に絞り込むことの重要性を説いている。

必ずしも、直接民主主義の手法の重視を唱えていない。

これに対して、五つ星運動は、地域における直接民主主義の活用を唱え、

他の政治勢力との連携を重視しないとの方針を示しているように受け止められている。

その意義と問題点について率直な見解を伺いたくも思う。

いずれにせよ、世界の各地で、政治を刷新しようとする市民の活動が広がっている。

日本の政治刷新運動を実りあるものにするために有意義な対話が実現することを

期待したい。

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