★旧民進および連合内潜伏の「隠れ自公勢力」を斬るー(植草一秀氏)

今回総選挙の争点が忘れ去られている。

この選挙の第一の目的は、

もりかけ隠し・政治私物化安倍政治の存続を許さないことである。

通常国会で森友・加計疑惑が噴出した。

安倍政権が政治を私物化して、安倍首相の近親者に不正な便宜供与、

利益供与を行っていた疑惑が濃厚になった。

安倍首相は森友学園の籠池泰典前理事長夫妻について、

「籠池さんは詐欺を働く人間。昭恵も騙された」

と発言したが、内閣総理大臣として許されぬものだ。

検察は「法の支配」を踏みにじり、補助金適正化法違反を問わずに、

刑法の詐欺罪を適用した。

籠池夫妻の長期勾留が基本的人権を侵害していることも明らかである。

選挙期間中に籠池氏夫妻が発言することを封じるための国家権力の濫用

そのものである。

また、籠池氏夫妻は起訴されているが、犯罪は確定していない。

犯罪が確定するまでは、

無罪を推定することが基本的人権の尊重の視点からの鉄則である。

行政府のトップである安倍氏がこの原則を踏みにじる発言を示した。

本来ならば、この発言ひとつで総理辞任に追い込まれるべきものである。

憲法が規定する国会召集の義務を3ヵ月も踏みにじり、

臨時国会を召集しながら、審議を一切せずに、その冒頭で衆議院を解散した。

横暴極まる安倍政治に終止符を打つこと。

これが今回総選挙の第一の意味である。


小池国政新党が創設され、民進党の前原誠司氏が政党としての基本の基本さえ

無視して、基本政策を「転向」する希望の党への合流を強行した。

ここから、今回選挙の流れが逆流し始めた。

前原誠司氏は総選挙後に前原氏の代表解任などを検討するべきとした

小川敏夫参院議員会長の発言について、

「有権者を愚弄した話」

と批判したが、誰が有権者を愚弄したのかを考えてから発言するべきだ。

民進党は戦争法制の廃止を訴え、これを基軸に野党4党の共闘体制を展開してきた。

安倍一強を打破するための野党結集が必要と言うなら、希望の党との合流条件に、

「戦争法制の廃止」

を掲げるべきであった。

このてんで合意を形成できないなら、この点は棚上げして、

安倍政治打倒の「呉越同舟」を行うことを示すべきだった。

「戦争法制肯定」なら、これまでの基本路線の完全な「転向」である。

「転向」するなら、その前に、民進党内での民主的な議論、

手続きが必要であることは言うまでもない。

この手続きを踏まずに、戦争法制肯定の方向で希望の党との合流を強行したことで、

総選挙そのものの流れを破壊してしまったのだ。

前原誠司氏の行動は万死に値するものと言わざるを得ない。


立憲民主党が創設されたのは必然の流れだったが、

本来は民進党代表戦の時点で民進党を分離・分割しておくべきだった。

その上で、共産、社民、自由との強固な共闘体制を構築して、

289の選挙区のすべてで、野党統一候補を擁立するべきだった。

立憲民主、共産、社民および考えを共有する無所属候補で

289の選挙区のうちの249選挙区で候補者を一本化したが、

反安倍政治の主権者の投票を集約する状況が確立されている状況にはなっていない。

メディアは、自公圧勝予想を流布しているが、これは、

「勝ち馬に乗る行動」と「諦めて選挙を棄権する行動」を誘発することを

目的とした情報操作である。

自公が勝利するための絶対条件は、投票率を低下させることである。

投票率が上昇すればするほど、自公候補は厳しくなる。

したがって、すべての国民に、政治私物化・もりかけ隠しの安倍政治を

打倒するために、選挙に全員参加することを広く呼びかけるべきである。

そして、もうひとつ重要なことがある。

それは、選挙区情勢を十分に吟味して、「勝てる候補」に投票を集中させることだ。

希望に移籍した候補者は、政策協定書に署名するべきではなかったが、

最終的な政策協定書に「戦争法制を容認する」ことが明記されなかったことで、

戦争法制廃止の主張を維持して合流した議員も存在すると考えられる。

この意味では、希望の党の候補者を全員一律に切り捨てるべきではないかも知れない。

そのような候補者で、かつ、選挙区で自公候補と接戦している候補者に対しては、

主権者の投票を振り向けるとの選択はあり得る。

このような候補者は、当然のことながら、

希望の党が選挙後に戦争法制肯定の方針を示すなら、

希望の党からの離党を決断する必要がある。

選挙後には、リベラル勢力が結集して、

共産党を含む野党共闘の体制を再建しなければならない。

前原誠司氏の万死に値する行動を総括し、

安倍政治に対峙する野党共闘体制の再構築が必須の課題になる。


希望の党は完全に失速している。

その理由は二つある。

ひとつは、小池百合子氏に対する主権者の評価が急落したことである。

小池氏の行動の核心が、「安倍一強打破」ではなく、

「リベラル排除」にあったことが浮き彫りになってしまった。

「安部一強打破」での「呉越同舟体制構築」であれば、

ひとつの段階として、存在意義はあったかも知れない。

しかし、小池氏と前原氏は、この合流を用いて「戦争法制肯定」を基軸に

据えようとした。

小池氏側がこれを要求することは十分にあり得たことであるが、

前原氏がこれに同調したことが、すべてのぶち壊しの主因である。

民進党は戦争法制廃止を訴え続けてきた。

そして、これを基軸に野党4党の共闘に加わってきた。

これを全面的に破棄する暴走を正当化する論理は存在しない。


希望の党が失速した第二の理由は、戦争法制肯定に方向に進むなら、

この新勢力が自公と大差のない政治勢力になってしまうことだ。

2030年の原発ゼロを目指すというが、原発再稼動を容認するとしている。

原発再稼動を容認するなら、自公の政策と現実対応で差異はなくなってしまう。

2019年10月消費税増税凍結を打ち出したが、小池氏は

「一度立ち止まって考える」

と言った。

この言葉は、築地の豊洲移転に際して用いられた言葉である。

その時点の人気を取るためだけに使われた言葉であった疑いが濃厚なのである。


希望の党が立ち上げられてここに民進党を呼び寄せる。

そして、その新党が自公補完勢力であるとの正体を示す。

その結果、民進党の分裂が進行する。

結局、政治勢力が三つに分立する状況が生じるが、

そうなると、安倍自公が漁夫の利を得る可能性が高まる。

これらの筋書きが、あらかじめ用意されていた可能性がある。

すべては、「謀略」である疑いが存在するのだ。

「希望の党」の背後には、

CIA、CSIS、ジャパンハンドラーズの影

が見え隠れしており、この背後の指揮者と

その手先となっている日本人の工作者による共同作業として、

今回の一連の謀略が進行した疑いが強い。


状況を打破するには、

明確な反自公勢力の結集が必要不可欠である。

これまでの野党共闘、民進党には、「隠れ自公勢力」が数多く潜んでいた。

これが野党勢力の勢いをそぐ、最大の要因になっていた。

野党の主張が不明確になる。

共産党との共闘が妨害される。

野党共闘がすっきりしないから、主権者の支持が集まらない。

野党と市民の連合とは言いながら、この問題がまったく解決されずに残っていた。


この意味では、今回、民進党が分離・分割したことに大きな活路を

見出すことができる。

ようやく実現した民進党の分離・分割なのである

それでも、立憲民主党が共産党との連携に対して、全面肯定の発言を示さない。

まだ問題が残っているのだ。

共産党が候補者を取り下げて野党共闘に最大限の協力を示しているのに、

立憲民主党が政権協議の姿勢を示さないなど、

立憲民主党の身勝手さも随所に観察されている。

また、民進党から出馬せず、無所属で立候補した候補者のなかに、

自公や小池自公と通じる見られる人物も存在する。

総選挙後には、これらの問題をクリアにして、

主権者に分かりやすい野党体制を確立しなければならない。


この問題と表裏一体なのが労働組合の問題だ。

連合自体が水と油の混合物なのである。

連合内で支配権を有している

電力、電機、鉄鋼、自動車の労働組合の多くが御用組合である。

御用組合は労働者側、主権者側に立つ存在ではなく、

大資本、利権政治勢力の側に立つ存在である。

他方に、労働者側、主権者輪に立つ労働組合がある。

この二つが同居していることに大きな矛盾がある。

連合は御用組合連合と本来の意味の労働組合連合に分離、分割されるべきだ。

民進党の分離・分割をより発展させて、

労働組合の分離・分割を実現しなければならない。

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