★ICANのノーベル平和賞受賞が日本に与えた衝撃と落胆ー(天木直人氏)

ノーベル平和委員会がICAN(アイキャン)という国際団体に

2017年のノーベル平和賞を与えた。

 このニュースほど日本を驚かせ、落胆させたものはない。

 なぜか。

 それは唯一の被爆国である日本がその受賞にほとんど関与出来なかったからだ。

 ICANとは1985年に、やはりノーベル平和賞を受賞した、

核戦争防止国際医師会会議を母体とし、2007年にウィーンで発足し、

日本のピースボートなど101カ国に468のパートナー団体を持つ

組織であるという。

 日本の平和団体が含まれているといっても、

決してその活動の主役を果たして来たわけではない。

 そして、何といってもICANがノーベル平和賞を受賞した理由である。

 それはあの歴史的な核禁止条約採択に貢献したからだという。

 日本政府は戸惑っているという(10月7日朝日)

 いや、私に言わせれば不快感を持って受け止めたに違いない。

 なにしろ日本政府は米国の核抑止力に守られているからという理由で

あの核兵器禁止条約をボイコットしたからだ。

 だから官邸、外務省はコメントすら出さなかった、いや、出せなかったのだ。

 本来ならば、この受章に大きな貢献をしたはずの日本の被ばく者たちも、

複雑な思いを持って受け止めただろう。

 主役にはなれなかったからだ。

 ベアトリス・フィンICAN事務局長の被爆者に対する次の言葉が

精一杯のなぐさめというのであればあまりにも残念だ。

 「あなた方が与えてくれた証言に、取り組みに、そして条約実現への

あらゆる貢献に、感謝します」

 朝日新聞広島総局長の副島英樹氏が書いている次の言葉(10月7日「視点」)が

空しく聞こえる。

 「・・・これは被爆者たちへの授賞といっても過言ではない。

ヒロシマ、ナガサキと聞き、人類は核使用を踏みとどまってきたともいえる・・・

被爆者たちの証言にも、改めて光が当てられるだろう・・・」

 なぜ日本が主役になれなかったのか。

 それはもちろん、日本が米国に追従して本来の平和外交を放棄してきたからだ。

 この日本政府の誤った外交によって、

被ばく者と政府が一丸となって二度と核兵器を使ってはいけないという、

日本だけが世界に発信できる特権を発揮してこなかったからだ。

 かくなる上は、最後に残された日本の切り札に期待するしかない。

 それは、新党憲法9条を日本の政治の中に実現し、

憲法9条を国是として力強く世界に広め、

人類がいまだ到達できないでいる「戦争のない世界」に

少しでも近づく努力の先頭に立つことだ。

 実績を示す時だ。

 これしかない。

 そして、それを実行できれば、

間違いなくノーベル平和賞は向こうのほうからやって来る。

 すべては対米従属外交から日本を解き放つことである。

 そこから希望ある日本の未来が広がる。

 私は今度の選挙で、それだけを訴え続けるつもりである。

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