★民進党が招いた?臨時国会を逃げるための解散劇ー(田中良紹氏)

安倍総理が今月28日に召集される臨時国会冒頭で

衆議院を解散する見通しになったとメディアは報じている。

さもありなんとフーテンは思う。

このまま臨時国会が開かれれば再び「森友・加計問題」が国民の目にさらされ、

それらの問題から逃げ切るには局面転換を図る必要があったからである。

 臨時国会の召集は6月22日に野党が要求した。

憲法53条は「衆参いずれかの4分の1以上の議員から臨時国会召集の要求があれば

内閣はその召集を決定しなければならない」と定めている。

ただ要求から何日以内に召集しなければならないかは決められていない。

 それが8月23日に行われた自公幹事長会談で

9月25日の週に召集されるというニュースを聞きフーテンは「ほう」と思った。

しかも二階、井上両氏はその会談で補正予算の編成を行うことでも一致した

というからなおさら「ほほう」と思った。

 補正予算案を審議するには予算委員会の開催が必要である。

予算委員会は総理も出席してテレビ中継が行われる。

そして予算委員会は何を質問しても良いとの慣例がある。

当然野党はそこで「森友・加計問題」を追及する。

それを自公両幹事長が合意したというから「ほほう」なのである。

 すると内閣側から直ちに補正予算の編成は必要ないとの声が上がった。

茂木経済再生担当大臣や菅官房長官が補正予算編成を否定したのである。

安倍総理が臨時国会で「森友・加計問題」の追及を嫌がっていることが分かる。

本音では臨時国会の召集を望んでいない。

 しかし6月に要求が出された臨時国会召集を無視することも難しい。

「憲法違反」と大騒ぎになる。

だから9月の最終週に召集を決めたが「森友・加計問題」を目立たせないために

安倍官邸は腐心している。臨時国会召集を巡り官邸と与党には温度差がある。

安倍総理の退陣時期について政局が始まっている証左だとフーテンは思った。

 安倍政権は2年前の通常国会で安保法制を強行採決した後、

「国民に丁寧に説明する」と言いながら、

野党の臨時国会召集要求を無視してついに召集しなかったことがある。

菅官房長官は「前例がある」と弁明したが、

それは03年と05年の小泉政権時のことを指す。

それまで歴代政権が野党の要求を無視した例はなかった。

 その小泉政権の例では野党が臨時国会召集の要求を行ったのが

いずれも11月に入ってからで、1月に開かれる通常国会との期間は短く、

しかもいずれの年も衆議院解散があったため通常国会だけでなく

特別国会や臨時国会などが複数開催されていた。

 ところが2年前の安倍政権は10月21日に

野党から臨時国会召集の要求があったにもかかわらず召集を見送り、

その年は通常国会だけという前代未聞の事態を招いた。

安保法制の強行採決で支持率が急落し、

国論が二分する中で「国民に丁寧に説明する」どころか、

都合の悪いことには蓋をする体質が露骨に現れた事例だった。

 そのためフーテンは「森友・加計問題」で支持率を急落させた安倍政権が

この臨時国会をどうするかに大いに注目してきた。

臨時国会が開かれれば「森友・加計問題」の再燃は避けられない。

さらに10月22日に行われる衆議院のトリプル補選で

一つでも取りこぼせば退陣論が浮上する。

 それを避けるには臨時国会の冒頭解散が一つの選択肢になるのだが、

解散の大義があるのかと言われればそれも難しい。

噂としてはプーチン大統領に頼み込んで「北方領土問題の進展」を演出するとか、

消費税を減税して元に戻すとか、

あるいは田原総一朗氏の提案に乗って北朝鮮問題を解決するとか色々あった。

 しかしいずれも取ってつけたような話で解散の大義になるとは思えない。

そんなところに民進党の山尾志桜里衆議院議員の「不倫疑惑」と離党問題が出てきた。

それに相次ぐ民進党議員の離党の動きである。

これほどの「敵失」を見せつけられれば解散のチャンスに見えて不思議ではない。

 臨時国会の召集が迫る中で局面の転換に腐心していた安倍総理が

飛びつきたくなる状況が生まれた。

フーテンは10日夜に1時間半にわたり行われた麻生副総理との会談で

決断するに至ったと見る。

麻生氏にとっても愛媛3区の補欠選挙で自身の推す候補が敗れれば

政治生命に影響が出る。

トリプル補選をなくして責任論を免れるには総選挙に持ち込むしかない。

 そして11日午前に安倍総理は二階幹事長、公明党の山口代表と

相次いで会談し胸の内を伝えた。

「臨時国会中に解散に踏み切ることを排除しない」と語ったようだ。

それならば冒頭解散が最も合理的である。

臨時国会から逃げるために行う解散だから冒頭が最も望ましい。

 このように解散は積極的な意味があって行われる解散ではない。

「森友・加計問題」から逃げ、トリプル補選の結果から逃げ、

民進党の「敵失」に乗じて行われる解散である。

見方を変えれば民進党が安倍総理の最も欲していた解散の口実を与えた

と言っても良い。そのため解散の大義はないに等しい。

 北朝鮮の核ミサイル問題が注目され、

朝鮮戦争の当事者である韓国も行っていない空襲警報と避難訓練で

日本国民の理性が狂い始めている時期だから、

それと関連する大義を後付けで考えれば国民はついてくると考えているのだろう。

それは憲法改正にもプラスに働くという計算だ。

 ただしこれはフーテンの見るところ練りに練られた解散ではない。

民進党の体たらくを見て誘惑にかられた解散である。

それがどのような結果をもたらすか「一寸先は闇」である。

 はっきりしているのは自公選挙協力がなければ与党は負け、

共産党が独自に立候補すれば野党は負けるという東京都議会選挙と

茨城県知事選挙が見せた教訓である。

カギは公明党と共産党がにぎっている。

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