★北朝鮮が電磁パルス攻撃を手中にしたという衝撃ー(田中良紹氏)

北朝鮮の国営メディアは3日午後、

「大陸間弾道弾ICBMに装着する水素爆弾の実験を3日正午(現地時間)に行い

完全に成功した」と発表した。

北朝鮮の核実験は2006年以来6回目で爆発の規模は過去をはるかに上回る。

 この実験を行う前に朝鮮中央通信は、

大陸間弾道弾ICBMに搭載する水素爆弾を金正恩委員長が視察する様子を伝え、

「水素爆弾には電磁パルス攻撃(EMP)を行う能力も加えられた」と発表した。

 電磁パルス攻撃(EMP)は、

宇宙空間で核弾頭を爆発させることにより発生した電磁パルスが

地上数百キロから一千キロの範囲で電子機器の機能を麻痺させ、

あらゆるコンピューターを長期にわたり機能停止させることを可能にする。

 地上で爆発する核爆弾が人間や建物を破壊するのとは異なり、

人間や建物を破壊しない代わり放送や通信、産業機械、交通機関、

医療用コンピューター、金融機関のコンピューターを機能停止と情報喪失に追い込む。

首都圏の上空で爆発させれば国家機能は麻痺して収拾がつかなくなる。

 この攻撃は地上で爆発させないことから、

ミサイルを大気圏に再突入させる技術を必要とせず、

当然ながら相手国のミサイル防衛は何の役にも立たない。

その技術を北朝鮮が獲得したとなると問題は深刻である。

 これまで米国の専門家は北朝鮮が射程距離の長い大陸間弾道弾ICBMを

持ったとしても、大気圏に再突入させる技術はまだ不十分とみてきたが、

北朝鮮は再突入の技術がなくとも米国の軍事と経済を麻痺させる技術を

獲得したことになる。

 またせっせと米国のミサイル防衛兵器を買うことが

北朝鮮のミサイル攻撃から日本を守る唯一の手段だとしてきた日本政府は

バカを見ることになり、地面にうずくまるのが避難訓練だと教えられた国民もまた

何をしているのかということになる。

最近の北朝鮮が日本をからかうようになったのはそうしたことと

無縁でないかもしれない。

 フーテンが電磁パルス攻撃(EMP)を知ったのは冷戦末期である。

米国の雑誌「ニューヨーカー」に記事が掲載された。

著者は軍人だったと記憶している。当時は米ソ冷戦が終わっておらず、

ソ連の軍事的脅威を国民に教え込む一環として電磁パルス攻撃が紹介された。

 内容は、米国上空の宇宙空間でソ連が核を爆発させれば、

米国のコンピューターは機能が破壊され米国の経済はもちろん軍事関連施設も

すべて機能麻痺に陥る。

それを防ぐには銅線を使っていた通信回線をすべて光ファイバーに

換えなければならない。光ファイバーならば影響を受けずに済むという記事であった。

 その記事を受けて当時のアル・ゴア上院議員は全米に光ファイバーを張り巡らす

必要性を訴える。

後に副大統領となったゴアは

「ファイバー・トゥ・ザ・ホーム(家庭に光ファイバーを)」を主要政策に掲げた。

 ところが光ファイバーを作っているのは日本のメーカーであることが分かり、

また日本の電電公社は基幹通信網を既に光ファイバーにしていることが分かる。

当時は日米経済摩擦が最高潮に達していた頃で、

そのせいか「ファイバー・トゥ・ザ・ホーム」は下火になり、

代わって軍の要請で開発されたのがデジタル技術だった。

 デジタル通信は従来の銅線でもそれまでの何十倍もの通信量と通信速度が

可能となり、そのデジタル技術に飛びついたのが日本経済を追いかけていた

韓国や台湾である。それまで日本が優位にあった電話や家電の分野で日本を追い抜き、

世界は光ファイバーを敷設するより従来の銅線のままデジタル技術に頼るのが

普通になった。

 ところが現在、電磁パルス攻撃の防御対策として光ファイバー化を進めているのは、

米国、ロシア、中国、韓国、台湾で日本は遅れていると言われている。

かつて世界でいち早く光ファイバーの敷設に取り掛かった日本が

なぜ立ち遅れたのか不思議な話である。

米国に先んじていた日本がなぜ米国に後れを取るか。

米国の言いなりになったからである。

 米国を追い抜く勢いだった日本経済は、中曽根内閣時代に

米国の要請によってプラザ合意とルーブル合意を受け入れ、

円高と低金利がバブルを発生させた。

バブル経済は日本経済の「血管」である銀行を軒並み破たんさせ、

勤勉な国民にギャンブル経済の味を教えた。

 その頃から米国言いなりが顕著になる。

かつては国連と米国の二本柱であった安全保障政策が米国だけになり、

経済政策もまた日本型経済構造を解体されて新自由主義の色に染まる。

その過程で北朝鮮の存在が米国に都合の良い環境を作り出す。

 北朝鮮の脅威を温存しておくことは「平和ボケ」した日本国民を

米国の言いなりにさせる有効な方法だった。

ミサイルが日本の上空を飛ぶだけで日本人は恐怖に震え、

それまで「ピストルの弾をピストルで撃てるか」と言って

買わなかったミサイル防衛を買う。

 クリントンもブッシュ(子)大統領も一度は北朝鮮軍事攻撃を検討したが、

どう考えてもできないことが分かった。

しかしできるようなそぶりをすればまた日本に兵器を売り込むことが出来る。

米国の兵器ビジネスにとって北朝鮮はありがたい。

しかも北朝鮮が戦争する気のないことは十分に分かっているのだからなおさらだ。

 どんな制裁を課しても北朝鮮が核ミサイル開発をやめることはない。

金正恩委員長を抹殺するか、北朝鮮国家を地球上から消す以外に止める手立てはない。

しかしそれほどのことをして血を流すより、血を流さずに解決する方法を探る方が

誰にとっても得策である。

 問題は北朝鮮という脅威の温存を利益と考えてきた米国のマインドを

変えることである。

北朝鮮が電磁パルス攻撃(EMP)を手中にしたという発表が真実かどうか

分からないがそれを狙っていることは間違いない。

またこれまでの実験結果を見れば手中にする可能性はある。

 核兵器搭載の大陸間弾道弾ICBMがワシントンに届くより、

ニューヨークやワシントンがEMPの攻撃対象になる方が先に来る。

フーテンは米朝の秘密交渉がすでに行われていると推測するが、

日本は世界に先んじていた光ファイバー網の敷設で立ち遅れていると言われる

自身の足元を見つめ直すことが肝心である。

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