★「保保二大政党」か「保革二大政党」かが最大論点ー(植草一秀氏)

主権者のなかから湧き上がる「安倍やめろ!」、「安倍政治を許さない!」の声は

日増しに強まっているが、与党の内部からも、

「そろそろ潮時」との見方が浮上している。

主権者は「安倍政権打倒!」の旗を掲げて活動しているが、

その安倍政権が近い将来に倒れるとの見方が永田町および霞が関で広がり始めている。

次期総選挙に向けての戦略を各陣営が描き始めているが、

次期総選挙が実施される前に安倍政権自体が消滅している可能性も

念頭に入れておく必要がある。

むしろ、自民党サイドの戦略として、

この考え方が水面下で取り沙汰されているようである。

考えてみれば、第2次安倍内閣が発足して、今年の12月で丸5年になる。

第1次安倍内閣は2006年に発足しているが、

2006年から2012年までの7年間は、毎年政権交代があった。

安倍、福田、麻生、鳩山、菅、野田の6つの内閣は、

すべて在任期間が1年程度であったのだ。

それが、2012年に発足した第2次安倍内閣以降、5年の長期政権となっている。

2001年から2006年まで続いた小泉政権が例外的に長期政権になったが、

その後の6代政権はすべて1年程度の短命政権になった。

安倍内閣が長期政権になった最大の背景は2013年の参院選で

安倍自民が勝利したことにある。

メディアが「アベノミクス絶賛」の大キャンペーンを展開し、

「ねじれ解消」を誘導した。

伏線には、2010年の参院選で菅直人民主党が惨敗したことがある。

菅直人氏が突然消費税増税を提示したことにより、

2009年の政権交代実現の大業が水泡に帰したのである。


衆参で多数議席を確保し、さらに衆院で3分の2以上の議席を与党が占有すると、

国会が有名無実化してしまう。

衆院で予算案、法案を通過させることはたやすくなり、

参院で否決されることも基本的には生じないからだ。

大臣に対する問責決議案が可決されないから、

政権が行き詰まることが生じにくいのである。

このことから、安倍政権の永続がまことしやかに語られてきた。

安倍政権は2020年東京五輪招致を強行し、

2020年に東京オリンピックが開かれることになっている。

安倍首相が、この2020年まで首相の座に居座ろうとしているとの見方が

まことしやかにささやかれてきたのだ。

しかし、その状況が一変した。

森友、加計、山口の「アベ友三兄弟疑惑」、さらに自衛隊日報問題が一気に噴出した。

国会を閉じてしまったから、メディアが問題を取り上げる頻度が低下し、

このために信ぴょう性の低い世論調査で支持率のわずかな上昇が報じられているが、

最大の理由は国会が開かれていないことにある。

臨時国会が召集されて衆参の予算委員会審議がテレビで放映されれば、

状況は一変する。

森友・加計・山口疑惑は、何ひとつ解消していない。

むしろ、疑惑はもはや疑惑の域を越えつつあると言ってよい。

真相がすでに、ほぼ明らかになっているのである。


最大の特徴は、これらの巨大事案のすべてが、安倍晋三氏の直轄事案であることだ。

直接の責任が行政部局、あるいは与党の誰かにあり、

総理大臣が最終責任を負うということで責められている事案ではないことを

確認しておく必要がある。

すべてが、安倍晋三氏の個人に関わるスキャンダルなのだ。

最高責任者としてだけでなく、直接当事者として、

すべての事案が「安倍事案」なのだ。

この要因で支持率が急落し、

7月2日の東京都議選では自民党現職議員が大量落選した。

国会を開会し、再び、連日連夜、森友・加計・山口疑惑が厳しく追及されれば、

主権者国民の間の

「安倍やめろコール」

は、益々、燎原の火の如くに広がることになるだろう。

ここから先のストーリーは二通りある。

ひとつは、安倍晋三氏が9月末に召集されるであろう臨時国会冒頭で

衆院解散を断行することだ。

自民党は敗北するが、敗北を最小化するために早期に解散に踏み切るというものだ。

この可能性を全否定することはできない。

もう一つの可能性は、解散せずに、10月22日の三つの衆院補選と一つの知事選を

迎えるというものだ。

しかし、この場合、臨時国会で安倍首相は集中砲火を浴びることになる。

そしてその余韻が濃厚に残るなかで10月22日に選挙が行われる。

この選挙で自民党が敗北すればどうなるか。

自民党内から安倍降ろしの動きが一気に噴出することになる。

自民党が、実はこのストーリーを狙っているとの説が存在するのだ。

この場合、石破政権か岸田政権が誕生することになる。

そして、新しいイメージの下で次の総選挙が行われることになる。

こちらのシナリオに対する備えを準備し始めねばならない。


民進党が代表選を実施して、恐らく前原誠司氏を新代表に選出するのだろう。

しかし、この前原民進党に期待する国民はほとんど存在しないだろう。

民進党代表選で明らかになったことは、

民進党内には二つの政党が存在することであった。

原発・憲法・消費税、さらに基地、TPPについて、民進党内には水と油、

正反対の二つの政策主張が併存している。

これを政党と呼ぶべきではない。

どちらの候補者が選挙に勝利しても、党を分割するのが正しい。


さらに、代表選後に、民進党から集団離脱する議員も出現するかも知れない。

民進党最後の代表選になるのではないか。

問題は、今後の野党再編、政界再編の基本構図がどうなるのかである。

最重要の問題は、日本政治の二大勢力が

保保になるのか保革になるのかである。

「保保」を私は「二党独裁」と表現する。

米国の共和・民主二大政党体制が「保保」=「二党独裁」制である。

見かけは民主主義だが、よく見ると、どちらに転んでも同じという重大な欠陥がある。

米国を支配している巨大資本が、巨大資本による米国支配を半永久化するための

政治体制が共和・民主二大政党体制=二党独裁体制なのである。


英国の保守党・労働党の二大政党体制は、基本的には「保革」だが、

ブレアの労働党からは、米国の共和・民主二大政党体制にかなり接近した。

日本で確立するべき二大政党体制は、絶対に「保革」であるべきだ。

最重要の政治課題である

原発・憲法・消費税

についての主権者国民の判断が二分されている。

「安倍政治に対峙する」政策路線を掲げる政治勢力が二大勢力の一翼を担わなければ、

主権者国民の意思の半分が無視されるということになる。

日本の二大政党体制は、絶対に「保革」とするべきなのだ。


これから始まる戦後日本政治最大の闘争は、

保保二大政党体制に移行するのか、それとも保革二大政党体制に移行するのか、

の闘いになる。

米国を支配する巨大資本が当然のことながら日本も支配している。

この勢力が2008年から本格的に注力してきたのが、

「保保二大政党体制」の構築である。

民進党代表に前原誠司氏を選出し、

これと小池国政新党および維新勢力を一つにまとめて「第二自公」を創設する。

自公と第二自公による「保保二大政党体制」を構築しようとしていることは明らかだ。


しかし、これでは主権者国民の意思の約半分がすべて切り捨てられることになる。

したがって、革新勢力の塊を造るべきなのだ。

革新新党が創設され、これと共産党が全面的な選挙共闘を行う。

自公と第二自公がそれぞれ候補者を擁立する。

ここに革新陣営がただ一人の候補者を擁立する。

この選挙で誰が最も有利になるのかは明白だ。

いま、情緒的な空気、雰囲気は、「保保二大政党体制への移行」であるが、

ここで本質を見誤るべきでない。


主権者国民の約半分が、本当はもっと大きな比率であると思うが、

反安倍政治である以上、この声を吸収する政治勢力は絶対に滅びることはない

のである。

第二自公創設に走るよりは、本当の革新政党を創設する方が、

はるかに将来性、成長力は大きいのである。

敵は、安倍首相を退陣させて、新布陣で総選挙に臨んでくる可能性がある。

これに立ち向かうには、明確な「革新」の旗を掲げた政治勢力、

主権者の連帯確立である。

焦点は革新勢力がすべての選挙区にただ一人の候補者を擁立できるのかどうかだ。

第二自公に進むのか、それとも革新勢力結集に進むのか。

最重要の判断が迫られることになる。

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