★民進党の代表選挙は毎回理解不能なのだが今回はどうなるかー(田中良紹氏)

22日に日本記者クラブで民進党代表選の候補者討論会が開かれたので見に行った。

前原誠司氏と枝野幸男氏の論戦に期待したからではない。

民進党が落ちるところまで落ちたと本気で思っているかどうかを

確認しに行ったのである。

 民進党は昨年9月にも代表選を行った。

その選挙で蓮舫代表が誕生した時からフーテンは民進党に対する興味を失い、

直後10月の新潟県知事選挙と東京10区、

福岡6区の衆議院補欠選挙の結果を見て

「民進党がある限り二度と政権交代は起きない」とブログに書いた。

 蓮舫氏を代表に選んだ民進党の国会議員、地方議員、党員・サポーターが

何を考えているのかフーテンは理解できなかった。

舌鋒鋭く政権与党に迫る彼女が大衆受けする政治家であることは否定しない。

しかしそれが政治家の資質の全てであるわけではない。

 民主党政権時代に国会で舌鋒鋭く閣僚に迫ったのは

野党自民党の稲田朋美衆議院議員だった。

おそらく自民党支持者の多くはそれを見て留飲を下げたに違いない。

しかしそれだけのことでフーテンは稲田氏に政治家としての資質を感じたことは

なかった。

 攻める姿を見せることと政治家として優れていることは別物である。

ところが自民党が与党に返り咲いた後、安倍総理が稲田氏を次々要職に就けるのを

見てフーテンは不思議だった。

将来の総理候補とまで言ったから安倍総理の見る目のなさは天下一品である。

 蓮舫氏も同様である。民進党の国会議員、地方議員、党員・サポーターは

将来の総理候補と考えたのだろうが、こちらも見る目のなさは天下一品で、

その気になった本人に対しても何をかいわんやという気がする。

 冷静な判断を下せていれば間違いなく蓮舫東京都知事が誕生していた。

小池百合子氏は蓮舫人気を前に立候補できなかった。

落ち目の民進党は東京都を拠点に東京オリンピックや豊洲市場問題で

国民にアピールし反転攻勢が可能だった。

 その判断ができなかったところに政治の資質のなさがある。

こういう言い方は失礼だが知事職は青島幸男氏でも横山ノック氏でも東国原英夫氏でも

務まった。しかし総理になるにはそれだけでは足りない。

蓮舫氏はヒラリー・クリントンを自らに重ね合わせたが、

レベルが違い過ぎてとんでもない冗談だと思った。

 米国では舌鋒鋭く相手を追い詰める政治家が評価されることはない。

むしろ大衆を扇動するポピュリストと思われ評価を下げる。

最近ではトランプというポピュリストが大統領に選ばれたが、

それは米国が落ち目になった証拠で以前の米国ならポピュリストは評価されない。

 ところが日本は昔から舌鋒鋭い政治家が評価される。

おそらく「万年与党」と「万年野党」の時代が長く、

政権を奪取するより相手を攻めて国民の留飲を下げるのが野党だと

勘違いされてきたせいである。

政権交代可能な選挙制度になってもまだ国民も政治家もそれが抜け切れていない。

 政治家の資質は国民の声を聴いて国の進路をしっかり考えることである。

そして自分の考えを実現するために権力を握る。

権力を握らなければ何もできないのだから、権力を握るためには

どんな妥協もどんな策略も厭わない。それが政治家である。

奴隷解放を成し遂げたリンカーンなど見事に妥協と策略の政治家だった。

 それでは前原氏と枝野氏による討論会はどうであったか。

両者の主張はすでに報道されているのであまり繰り返さないが、

立候補した理由を枝野氏は「安倍政権の情報隠蔽体質に対する怒り」と言い、

前原氏は「政権の受け皿を作ること」だと言った。

枝野氏は「権力批判」で前原氏は「権力奪取」である。

つまり枝野氏は蓮舫型で前原氏はアンチ蓮舫型だ。

 そして二人ともアベノミクスを批判し分配に力点を置く経済にすると言うが、

その方法が前原氏は「消費増税」、枝野氏は「増税する環境にない」だった。

枝野氏にポピュリズムを感じるのでここでも枝野氏は蓮舫型である。

 次に枝野氏は岡田元代表の敷いた「野党共闘路線」を継続するが、

前原氏は「政権選択の選挙で理念の異なる政党と組むことは出来ない」と言った。

メディアは共産党との選挙協力に否定的と解説している。

 前原氏の経済政策の中心が消費増税である以上、

消費税に反対する共産党と組めないのは当然かもしれない。

ただ前原氏が主張するのはヨーロッパ型の政策でドイツと英国の中間の国民負担率に

引き上げ、その代わり税金を子供の教育費無償化や介護サービスの拡充に充て

国民の生活不安をなくすと言う。

 税の使い道をきちんと国民に納得させて実行出来れば共産党の賛同を得る

可能性はあると思う。

また前原氏の言い方は政権選択の選挙でなければ共闘は可能という意味にも聞こえる。

「権力奪取」を目標にするのならどんな妥協もどんな策略も厭わないのが政治家だと

思うので、前原氏が本気ならその姿を見せてほしいとフーテンは思った。

 それがこれまでの民進党に最も不足していたことである。

政権を鋭く批判するのは得意だが、戦略をもって批判しているとは思えない。

批判する議員が自分だけ目立とうとしてバラバラ感があった。

フーテンが戦略性を感じるのは共産党の方である。

民進党は共産党から戦略性のある攻撃方法を学ぶべきだ。

 そして両者が最も激しく対立したのは離党者に対する対応だった。

枝野氏は「許すべきでない」として選挙で対立候補を立てるという。

前原氏は「総合的に判断する」と政治的な表現をした。

これが両者の最も衝突したテーマだった。

 つまり蓮舫執行部を揺さぶった離党者に厳しく対応すると言う枝野氏は

蓮舫執行部側で、前原氏は揺さぶった側ということである。

従って前原氏は離党した議員と再び手を組む可能性があるかもしれない。

さらに小池氏と組む可能性も残している。

そこでこの問題を巡って民進党内部の対立が激しくなれば分裂ということもありうる。

 そこで想像を巡らせる。枝野氏が勝つのと前原氏が勝つのとどちらが民進党を

分裂させるか。前原氏が勝って枝野氏側が不満を募らせ党から出ていく可能性は、

枝野氏が勝って前原氏側が出ていく可能性より低い。

前原氏側はこれまでの蓮舫執行部に対する不満で出て行った離党者に近いのだから。

 枝野氏が代表になると民進党は分裂含みになるとフーテンは思うのだが、

しかし民進党の国会議員、地方議員、党員・サポーターの判断というのが

毎回フーテンには理解できない。

特に2010年の参院選に負けて「ねじれ」を作った菅直人氏を再選させた時には

本当に驚いた。

 選挙に負けた代表を続投させる政党など世界中にあるわけがない。

民主主義に対する冒とくである。

それを平然とやる政党であるから何が起きるか分からない。

そのつもりで選挙結果を見守ることにする。

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