★自公と第二自公の二大政党体制が究極の悪夢ー(植草一秀氏)

「安倍政治を許さない!」

と考える主権者は多いが、安倍政治の何を許さないのかを

はっきりさせなくてはならない。

2017年になって噴出した「森友」、「加計」、「山口」の

「アベ友三兄弟疑惑」は安倍政治の腐敗を示す象徴的な事案である。

19世紀イギリスの思想家・歴史家のジョン・アクトンは、

“Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.”

「権力は腐敗する傾向を持つ、そして絶対的権力は絶対的に腐敗する。」

と述べた。

「安倍一強」などともてはやされるなかで、

安倍政治が権力私物化、金権腐敗体質を鮮明に浮かび上がらせた。

政策以前の政治倫理、政治のモラルの面で、

もはや安倍首相に日本政治を委ねるわけにはいかなくなった。

内閣支持率が急落し、その不支持の最大の理由として

「安倍首相の人柄が信頼できない」

が挙げられている。

国会は、安倍政治腐敗問題を徹底的に追及し、

可及的速やかに安倍政権を退場させるべきである。

野党第一党民進党のもたつきにより、

安倍政権退場のタイミングが遅れていることが主権者にとっては

極めて大きな問題である。

森友疑惑、加計疑惑で安倍首相は、

「自分や妻が関わっていたら、総理大臣も国会議員も辞める」

「もし働きかけていたら責任を取る」

と明言しているのだから、国会はこの言葉に従い、

安倍首相に速やかな退陣を求めるべきである。


問題は、安倍政権退陣後にどのような政治を実現するのかである。

ここで問題になるのが「安倍政治を許さない!」の中身である。

安倍政権が実行してきた施策の柱は次の三つである。

1.日本を「戦争をする国」に変質させること

2.人権を制限すること=市民に対する弾圧を強化すること

3.弱肉強食の経済社会を推進すること

「戦争・弾圧・搾取」が安倍政治の基本である。

集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を強行した。

「憲法破壊行為」であり、「立憲主義」を根底から覆すものである。

特定秘密保護法制定、刑事訴訟法改悪、共謀罪創設を強行してきた。

国民の知る権利を奪い、国民の内心の自由を蹂躙する、これも憲法破壊行為である。

そして、経済政策では「アベノミクス」だの、「成長戦略」だのという「きれいごと」

を並べ立てながら、経済社会の弱肉強食化を強行に推進している。

この安倍政治「真・三本の矢」に全面的に反対する主権者が唱える言葉が

「安倍政治を許さない!」

なのだ。


民進党が代表選挙を行うが、

新しい民進党が「安倍政治を許さない!」主権者勢力の先頭に立つ状況が

まったく見えてこない。

すでに民進党は主権者国民の信頼を失った勢力に凋落しているのであり、

この勢力に日本政治刷新の先導役を期待するのが間違っているとも言える。

これからの日本政治を考えるときに、一番警戒しなければならないことは、

日本政治が、自公と第二自公の二つの勢力によって仕切られてしまうことだ。

戦後日本を支配してきた中核勢力は、

米国・官僚機構・大資本

の三者である。

米官業の三者が日本を実効支配し続けてきた。

この支配者の手先といえる存在が、御用メディアと利権政治集団である。

私は、この五者を「米官業政電の悪徳ペンタゴン」と表現してきた。

この勢力が目論んでいるのが、

自公と第二自公による二大政党体制の構築である。

自公と第二自公による二大政党体制を構築してしまえば、

どちらに転んでも大差がなくなる。

米官業による日本支配を半永久的に維持できる。

これを狙っているのだ。

民進党内の「隠れ自公勢力」と民進党をすでに離脱した勢力と小池国政新党が

連携して、「第二自公勢力」を構成する可能性が極めて高い。

このことを前提にして、本当の意味の野党勢力の確立を目指す必要がある。

民進党代表戦では、前原誠司氏が明確に「第二自公勢力」の構築の方向を

指向していることが分かる。


民進党内の「隠れ自公勢力」は、すでに民進党を離脱した者、

小池国政新党と早く合流するべきだ。

これらの人々が唱える政策は、自公とほとんど差がない。

原発を容認し、戦争法を肯定し、9条改正も容認し、消費税増税も容認する。

政策面で自公と何ら違いがない。

東京都議選で小池新党が大成功したから、

これにあやかろうというだけに過ぎないように見える。

しかし、私は、日本政治が自公と第二自公とによる二大政党体制に移行するとは

考えない。

なぜなら、日本の主権者の多数が、

「安倍政治を許さない!」

の考えを有しているからだ。


自公と第二自公とによる二大政党体制の下では、

「安倍政治を許さない!」と考える主権者がその意志を反映させる受け皿がない。

このような判断を持つ主権者が圧倒的少数であるなら、

自公と第二自公による二大政党体制も存立しえるだろう。

しかし、現実は違う。

自公と第二自公とは対極の政策路線を希求する主権者の数は、

自公と第二自公を支持する主権者の数に拮抗しているはずである。

具体的に考えれば、

原発稼動を容認する主権者と容認しない主権者が拮抗している。

戦争法を容認する主権者と容認しない主権者が拮抗している。

そして、消費税増税を容認する主権者と容認しない主権者が拮抗している。

したがって、

原発稼動を容認しない

戦争法を容認しない

消費税増税を容認しない

主権者が結集すれば、自公と第二自公を支持する主権者勢力と拮抗するはずなのだ。


このとき、自公、第二自公、そして上記の対峙勢力が、

衆議院総選挙の小選挙区にただ一人ずつ候補者を擁立したら、

いったい誰が勝利するのか。

「安倍政治を許さない!」と考える「対峙勢力」が勝利する可能性は

極めて高いと考えられる。

他方、民進党をすでに離脱した者、民進党内の「隠れ自公勢力」、

小池国政新党の人々が合流する姿を思い描いてみよう。

ここには、旧大阪維新や日本維新、

さらに、自民党を離脱した渡辺喜美氏や民主党を離脱した松沢成文氏なども

合流することになるだろう。

船頭になりたい人々の集団ということになり、船が山に登ってしまうことは

間違いない。


安倍政権が推進してきた経済政策を安倍首相は「アベノミクス」とか

「成長戦略」などと表現しているが、その骨格となる施策は次の五つである。

1.農業の自由化

2.医療の自由化

3.解雇の自由化=労働規制の撤廃

4.法人税減税=消費税増税

5.特区の創設

農業の自由化とは、日本農業を「農家による農業」から「大資本による農業」に

転換することである。

その際に、同時並行で進むのは、食の安全・安心の崩壊、食料自給率の

さらなる大幅低下、共同体社会の崩壊である。

医療の自由化は、日本の公的保険医療制度の崩壊を意味する。

病気になったときに必要十分な医療を受けられるのは

一握りの富裕層に限られる社会に移行することを意味する。

「働き方改革」などの言葉に騙される人が多いが、労働規制撤廃の目的は、

解雇の自由化、生涯非正規労働化、最低賃金撤廃、外国人労働力導入、

残業規制撤廃などである。

究極の目的は労働者の身分保障撤廃と労働コストの最小化である。

税制では企業と富裕者の税負担を軽減して、

大衆課税の消費税負担を激増させることが推進されている。

そして、「特区」は新型利権そのものである。

「特区諮問会議」の正式名称は「特区利権諮問会議」である。

加計疑惑は極めて分かりやすい事例だが、養父市の企業による農地取得を

認可されたのが竹中平蔵氏が社外取締役を務めるオリックス関連企業であり、

神奈川県や大阪府での家事代行サービス事業の実施企業に

竹中平蔵氏が会長を務めるパソナが選定されていることも、その氷山の一角である。


次の総選挙で国民が判断するべき対象は、

基本政策方針

である。

原発・戦争・消費税

についての基本政策路線を問う選挙。

これが次の衆院総選挙のテーマである。

「政策選択選挙」を実現するべきなのだ。

国会の多数勢力を取る「数合わせ」をやっても政治は変わらない。

面子が変わるだけで、政策が変わらなければ、国民生活も変わらない。


だから、基本政策を横において、共産党と共闘するかどうかを

論争していること自体がおかしいのだ。

反戦・反核・反格差

の旗を掲げ、

戦争法廃止・原発廃止・消費税減税廃止

の旗を掲げる主権者と政治勢力が大同団結するべきことは当然のことなのである。

共産党がこの方針を明示するなら、共産党を排除する理屈など

立ちようがないのである。

民進党は早く「隠れ自公勢力」と「反自公勢力」とに分離するべきだ。

次の選挙に向けて大事になるのは、

「反自公勢力」の結集、大同団結である。

「オールジャパン平和と共生」は、この基本方針を改めて明確に掲げて、

「安倍政治を許さない!」市民と政治勢力の結集を推進してゆきたい。

「政策連合」の構築がどうしても必要である。

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