★小池国政新党の致命的ともいえる弱点ー(植草一秀氏)

盆休みでものごとが停滞しているように見えるが、

自公は内閣改造を実行してしまった。

これに対して、民進党は宙吊り状態が続いている。

この宙吊り状態は9月1日まで続くのだから、

政権の責任追及が頓挫してしまう惧れは強い。

通常国会最終幕は、共謀罪の委員会採決をすっ飛ばしての本会議強行採決。

安倍暴政極まれりという結末だった。

7月2日の東京都議選では安倍自民党が歴史的な大惨敗。

7月25日の仙台市長選挙でも野党共闘候補が自公候補に勝利を収めた。

野党が要求する閉会中審査が7月10日に実施されたが、

肝心の安倍首相は外遊中で欠席した。

首相の外遊に合わせて閉会中審査が設定されたもので、

安倍首相の「逃げ腰」姿勢が改めて鮮明に浮かび上がった。

内閣支持率はとどまるところを知らず低下し続けたため、

安倍自民は対応を変更し、7月24、25日に安倍首相出席の下で

閉会中審査が実施された。

しかし、疑惑は深まるばかりで、核心人物の証人喚問が求められる局面に移行した。

憲法は議院の総議員の四分の一以上の要求がある場合、

臨時国会を召集しなければならないと定めているが、

安倍内閣は憲法の規定を無視して国会を召集していない。

一気呵成に安倍内閣を追い詰めるべき局面である。

ところが、このタイミングで安倍首相は内閣改造を実施。

他方で民進党は党首、幹事長が辞任した。


8月10日には衆院安全保障委員会が開かれたが、

核心の人物である稲田朋美前防衛相が欠席した。

安倍首相は会見で8秒間頭を下げたが、頭を下げて舌を出していたのだと思われる。

「丁寧な説明」

をすると言っているが、実態は、

「丁寧な口調で嘘を言い続けている」

だけで、国民に対する謙虚な姿勢は皆無である。

自分の理解者であり、支援者であると持ち上げて、

小学校新設を全面バックアップしてきた森友学園に国有地が不正に低い価格で

払い下げられた疑いが濃厚になり、安倍首相夫妻の責任が追及され始めると、

手のひらを返して、森友学園理事長の籠池泰典氏夫妻を切り捨てる。

挙句の果てには、国家権力を動員して籠池夫妻を不当逮捕、勾留して、

犯罪人に仕立て上げようとしている。

犯罪が疑われているのは、国有地を不正に払い下げたと見られている財務省、

近畿財務局である。

大阪地検特捜部は近畿財務局を家宅捜索して、

背任罪での立件を急がねばならないのに、こちらの捜査はまったく進展せず、

明らかな冤罪事件と思われる補助金不正の創作に全力を挙げている。

補助金不正を追及するなら、その対象は森友学園ではなく、加計学園であるはずだ。

新設獣医学部施設建設費が大幅に水増しされている疑いが濃厚なのだ。


森友学園の国有地不正払い下げ疑惑の核心にいる人物は安倍昭恵氏である。

安倍昭恵氏の証人喚問、参考人招致が必要であることは明白だ。

加計学園疑惑では、安倍首相が本年1月20日まで加計学園が

今治市で獣医学部を新設する意向を有していたことを知らなかったと述べたが、

この国会答弁は過去の国会答弁と矛盾する。

そして、2015年4月に今治市職員が首相官邸を訪問した際に、

加計学園幹部が同行していたとの新事実が明らかになった。

さらに、国家戦略特区諮問会議のヒアリングに今治市職員とともに

加計学園幹部が同席、発言していたことも明らかになった。

国家戦略特区諮問会議ぐるみで、

加計学園による獣医学部新設決定の便宜が供与された疑いが鮮明になっている。

この局面で内閣改造が行われたが、内閣改造などに何の意味も、何の効果もない。

野党は閉会中審査ではなく、臨時国会の召集を厳しく安倍内閣に求めるべき局面だ。

それにもかかわらず、民進党は代表戦に移行して、いまや「開店休業」状態である。

これでは、安倍暴政終焉のシナリオが狂ってしまう。

「安倍政治を許さない!」と考える主権者は、

主体的に、今後の政局変化を誘導するべきである。

その際、最優先の課題は「民進党の解体」になる。

代表戦を行う前に、「民進党を解党」し、矛盾を解消するべきである。


代表戦で前原氏が勝利しても、枝野氏が勝利しても、民進党躍進の未来図を描けない。

前回代表戦で蓮舫氏を代表に選出したのは、民進党のイメージを刷新するため

ではなかったのか。

2009年に誕生した鳩山由紀夫政権を民主党は内部から破壊した。

破壊した主導者を私は「悪徳10人衆」と表現してきた。

渡部恒三、藤井裕久、仙谷由人、菅直人、野田佳彦、

岡田克也、前原誠司、枝野幸男、安住淳、玄葉光一郎

の10名である。

対米従属からの脱却

天下りの根絶=消費税増税の封印

企業団体献金全面禁止

の基本公約を破壊した首謀者が上記の10名である。


2010年6月政変で鳩山内閣が破壊された。

権力を強奪したのが菅直人氏である。

爾来、悪徳10人衆は、小沢-鳩山氏が主導して実現した政権交代の果実とも言える

閣僚ポストだけを身内でたらい回しにし、基本政策をすべて破壊した上で、

政権を安倍自民に奉還した。

このことが民主党凋落、そして、その流れをそのまま引き継ぐ民進党の凋落の

主因なのである。

こうしたなかで、党の顔を蓮舫氏に変えたのが前回の代表戦だった。

しかし、蓮舫氏は幹事長に野田佳彦氏を据えた。

この瞬間に、この新体制が野田佳彦氏の傀儡体制であることが

誰の目にもはっきりと映し出されたのである。

蓮舫民進党が一度も浮上することなく、終焉したのは順当そのものであった。


民進党が主権者の支持を完全に失っているのは、民進党の基本政策路線が、

2009年の政権交代樹立時点とかけ離れているからである。

原発を推進し、

戦争法を容認し、

消費税増税を容認する。

これが上記「悪徳10人衆」の基本政策路線である。

2009年の民主党政権樹立を支えた主権者の圧倒的多数は、

原発廃止、

戦争法廃止、

消費税増税阻止

の考えを有している。


現在の民進党は、基本政策路線を明確に示さない。

その最大の理由は、民進党の中枢に位置する者たちが、

原発容認

戦争法容認

消費税増税容認

の考えを有しているからに他ならない。

この考えを持つ者たちの一部が民進党を離党し始めた。

長島明久氏、細野豪志氏などである。

さらに、松沢成文氏、渡辺喜美氏などが連携して小池国政新党に

合流しようとしている。

この行動の方がはるかに分かりやすく、主権者に対して誠実な行動である。


民進党のなかで、この立場にある者は、小池国政新党に合流すべきである。

他方、

原発廃止

戦争法廃止

消費税増税阻止

を明確に基本方針とする人々は、民進党から純化するべきだ。

党に蓄えられた政党交付金は、議員数に応じて比例配分して処理するべきだ。

基本政策方針を明確にして、その基本政策方針を共有する者が、

ひとつの政党として行動するべきである。

これが、主権者に対する誠実な行動であると言える。


そして、新たに主権者国民の強い支持を求めるなら、

党の顔には、フレッシュな人材を登用するべきだ。

クリントン(夫)が大統領に就任したのは46歳、

ブレアが首相に就任したのは43歳、

オバマが大統領に就任したのは47歳、

マクロンが大統領に就任したのは39歳である。

新しいリーダーを打ち立てて、次の総選挙に臨むべきである。

小池国政新党に注目が集まっているが、この新勢力には致命的な弱点がある。

それは、自公陣営と基本政策が同一であることだ。

「日本ファーストの会」を立ち上げた若狭勝氏が

テレビのインタビューでこの点を明確に述べた。

現在の安倍政権勢力の政策路線と、

日本ファーストの会の政策路線の違いを何も述べられなかったのである。


衆議院総選挙は小選挙区を軸に実施される。

小選挙区では当選者が一人しか生まれない。

そのときに、基本政策がほぼ同一の勢力から2人の候補者が擁立されるのである。

候補者がこの2人だけなら、どちらかが当選することになるが、

この2人が日本の主権者の意思を代表し切れるのかどうかを考えるべきだ。

「安倍政治を許さない!」と考える主権者が多数存在するなら、

この2人の候補者は、いずれも、その主権者の意思を代表しない。

このとき、「安倍政治を許さない!」勢力が、ただ一人の候補者を擁立すれば、

どの候補者が選挙に勝つ可能性がもっとも高いのか。

答えは明らかである。

ここは、小池国政新党が創設されるのを放置しつつ、

真に主権者に寄り添う政治勢力の結集を、主権者が主導して図るべきである。

民進党には、無理な結束を追求することをやめて、

早期に、政策路線の相違を基軸にした円満な解党・分党を強く求めたい。

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