★民進党は冷静に、そして真摯に党の分離図るべしー(植草一秀氏)

7月24、25日の両日、衆参予算委員会で集中審議が行われた。

加計疑惑が一段と強まるなかで、前川喜平前文部科学事務次官と和泉洋人首相補佐官、

さらに加戸守行元愛媛県知事が参考人招致され、まったく異なる供述を示した。

この閉会中審査で質問に立った民進党の蓮舫代表は、安倍首相の答弁に対して、

「口調だけ丁寧にするのはやめてください。

関係ないことを長々と話さないでいただきたい」

と安倍首相に詰め寄った。

そして、

「もはや全く信頼できない。総理。予定されている国会の日程は、

きのうの衆院予算委員会5時間、きょうの参院予算委員会5時間。

まさかこれで幕引きと思っていませんよね」

「いったん停止して誰と誰が言った言わないという混乱を生まないような仕組みに

改善して新たな規制改革を行うべきだという、そういう法案も出している。

そうした審議もしっかりさせていただきたいと思って、

野党4党で民進党は臨時国会の開催を憲法53条に基づいて要求しているが、

いつ答えていただけるのか」

「憲法53条で私たちが要求した場合には、内閣は召集を決定しなければならない。

いつ決定するか」

「安倍総理は国会では全く答えなくて外では答えているが、

『憲法を改正したい』といろんなところでおっしゃっている。

自民党の憲法草案では53条、臨時国会開催要求があったときは

20日以内に応えなければならない(と定めている)。

もう20日を超えていますよ。

『憲法を変えたい』と言っておきながら、

現行憲法を順守しないダブルスタンダードは絶対におかしいということは

強く指摘させていただきたいと思う。

引き続き臨時国会を開いていただきたいし、閉中審査も開いていただきたいし、

丁寧な説明をしていただきたい。

このことを強く申し上げ、私の質問を終わる」

と述べた。


森友問題の真相はほぼ明らかになったが、疑惑の核心にいる人物、安倍昭恵氏が

説明責任を放棄したまま、公の場で受け答えに応じない。

安倍昭恵氏の証人喚問が絶対に必要だ。

加計問題も経緯がほぼ明らかになり、安倍政権が行政権力を私物化して、

加計学園に便宜供与、利益供与した図式がくっきりと浮かび上がっている。

森友学園の補助金詐取を問題にするなら、加計学園の補助金詐取疑惑の方が

はるかに巨額で悪質であると考えられる。

森友学園の本丸は近畿財務局、財務省であるのに、

大阪地検特捜部は近畿財務局に対する家宅捜索すら実施していない。

大阪地検忖度部と名称を変更するべきだろう。

加計学園疑惑では、加計孝太郎氏の参考人招致あるいは証人喚問が必要不可欠だ。

また、今治市長の参考人招致も必要不可欠である。

一気呵成に安倍政権を追い詰めるべきところ、

「まさかこれで幕引きと思っていませんよね」

と問い詰めた民進党の側が完全に止まってしまっている。


民進党の蓮舫代表が代表辞任を表明して、新代表を選出することになったが、

その日程が9月1日というのだ。

これで、もりかけ疑惑を解明できるのか。

安倍首相は、

森友問題では、「自分や妻が関わっていたら、

総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい」と

繰り返した。

加計問題では、「働きかけていたら責任を取る」と明言した。

しかし、これまでに明らかになっている客観事実は、

「安倍昭恵氏が深く関わっていたこと」

「首相のご意向」で「加計学園の獣医学部新設」が決定されていった経過

を明確に浮かび上がらせている。

民進党の内紛、混乱が、明らかに安倍政権を支援している図式なのだ。

民進党代表戦では前原誠司氏や枝野幸男氏が名乗りを上げているが、

海外の例を見ても、新たな時代を切り開くときには、

フレッシュな人材が表に登場する。

クリントン(夫)が大統領に就任したのは46歳、

ブレアが首相に就任したのは43歳、

オバマが大統領に就任したのは47歳、

マクロンが大統領に就任したのは39歳である。

若ければいいというわけではないが、民進党を再生しようという気があるなら、

もっとフレッシュな人材の登用を図るべきである。


民進党が代表選を実施しているが、大事なことは、

今後の政治闘争をどのように展開するのかという基本方針を明らかにすることだ。

前原氏は、8月7日の出馬表明会見で、

「政策理念が一致しない政党と協力すること、連立を組むことは野合でしかない。

選挙互助会とみられても仕方ない」

と発言している。

また、以前、共産党について、

「シロアリみたいなもの」

と批判している。

これはこれでひとつの考え方であろう。

共産党とも連携して選挙協力、選挙共闘を行うべきであると考える者と、

共産党とは連携できないと考える者とが並存していてもおかしくはない。

しかし、政党として主権者に対して政権樹立への道筋を説明する必要があることを

踏まえれば、この両者がひとつの政党のなかに並存することは間違いである。


代表選を実施して、誰がお山の大将になるのかを競う前に、

政党としての道筋を定めることが優先されるべきではないのか。

安倍政権が崖っぷちにあり、本来は、この機会に安倍政権を一気に退場させるべき

局面であり、民進党が内部の問題でもたついていることは、

千載一遇のチャンスを無為にしてしまう惧れがあり、好ましくない。

しかし、野党第一党の方針が定まらないこと、あるいは、野党第一党が

水と油の混合物であることが本当の意味での与党追及を妨げているとすれば、

やはり、その根本的な問題を除去することが優先されるべきであろう。

誰が勝つか、誰がポストを取るのかが重要なのではなく、

民進党の基本方針を定めること、

そして、

基本方針について、まったく異なる路線が党内に並存しているなら,

その「矛盾」を取り除くこと、

が重要なのではないか。


小池国政新党が創設され、自公と政策はほぼ同一だが、

自公とは別の政治勢力の創設が目指されている。

民進党のなかで、自公とほぼ同一の政策方針を保持し、

共産党とは選挙共闘をできないと考える人々は、ここに合流するのが賢明である。

ただし、この集団は「お山の大将」になりたい者の集団であるように見えるから、

統率の取れた行動が示されるのかついては、大いなる疑問がある。

他方、自公政治に正面から対峙する基本政策路線を掲げる人々は、

自公路線の人々と行動を共にするのには無理がある。

民進党は基本政策路線によって、自発的に二つの勢力に分離するべきである。

原発稼動を容認しない

戦争法を容認しない

消費税増税を容認しない

基本政策を保持する人々が、ひとつの野党としてまとまるべきだ。

この基本政策路線は共産党と一致するわけだから、

この統一野党と共産党が確固たる選挙共闘体制を構築するべきだ。

これを私は

「政策連合」

と呼んでいる。


現在の野党共闘は、民進党の自公派を含んでいるために、

「野合連合」の側面を有してしまっている。

ここから、自公派を取り除くことによって、

純化した「政策連合」を構築することができる。

そのために、いまの民進党からでも、フレッシュな人材が前面に立つことが

望ましいと考える。

新しい力、フレッシュな発想で、本当の意味の野党勢力を結集するのだ。


日本支配を維持しようとする勢力は、

自公と第二自公による二大政党体制が望ましいと考えている。

自公勢力と小池国政新党などによってイメージされる第二自公勢力が

二大政党体制を構築することになれば、

米国の二大政党体制に近い状況が生まれると考える人は多いかも知れない。

しかし、これが、日本の主権者の意思を正しく反映する政治体制であるのか

については、大いなる疑問がある。

なぜなら、現在の自公政治の基本政策に反対する主権者の数が極めて多いことだ。

原発、戦争法、消費税の三つのテーマを考えてみただけでも、

原発廃止

戦争法廃止、

消費税増税反対

を求める主権者は極めて多い。


原発推進、戦争法容認、消費税増税=弱肉強食賛成という主張を掲げる

二つの政治勢力によって、主権者の意思が代弁されるとは考えられない。

この基本政策課題について、安倍政治に対峙する政策路線を掲げた政治勢力が、

来る衆院総選挙において、各選挙区にただ一人の候補者を擁立したとする。

この選挙区に、自公と第二自公がそれぞれ一人ずつ候補者を擁立して

選挙を戦う状況を想定してみよう。

仮に、現在の安倍政治に反対する主権者が多く存在して、

その主権者の多数が投票所に足を運べば、選挙結果はどうなるか。

自公と第二自公が票割れを起こして、安倍政治に対峙する勢力が、

多くの選挙区で勝利する可能性が高いのではないか。


日本の実効支配を維持しようとする支配勢力は、

何とかして、自公と第二自公による二大政党体制への移行を実現させようとしている

のだと思われるが、それでは、日本の民主主義は死を迎えてしまうことになる。

これを私は、「二党独裁体制」と呼んでいる。

政権を担う勢力は二つあるが、どちらに転んでも同じ政治が行われる。

同じ政治とは、主権者のための政治ではなく、大資本のための政治、

つまりハゲタカのための政治である。

小池国政新党が「日本ファーストの会」を名乗った。

「日本ファースト」=「ハゲタカファースト」である。

私たちが構築しなければならないのは、

「ハゲタカファースト」ではなく

「国民ファースト」

「主権者ファースト」

の政治である。

民進党に自ら党を分離する叡智が残されているのかどうか。

この点は不明だが、民進党の分離分割は絶対に避けて通れない課題である。

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