★自公・小池新党に対峙する「たしかな野党」確立をー(植草一秀氏)

民進党の蓮舫代表、野田佳彦幹事長が辞意を表明し、9月に代表選を実施するという。

この情勢を受けて、早くも前原誠司氏、枝野幸男氏が出馬の意向を表明していると

報じられている。

民主党は2009年に政権交代の偉業を成し遂げた。

偉業を牽引したのは、

小沢一郎氏と鳩山友紀夫氏である。

しかし、新政権はわずか8ヵ月余りで崩壊した。

政権崩壊の主因は、政権内部での妨害行為であった。

鳩山首相は沖縄の普天間基地の移設先を県外、国外にすることを目指した。

外務、防衛、沖縄担当相は鳩山首相の方針を実現するために尽力するべき存在で

あったが、真逆の行動を示した。

鳩山首相の意思に従うのではなく、米国の指令に沿って動いたのである。

普天間の県外・国外移設方針を妨害する行動を示し、

結果として鳩山首相は県外、国外移設断念に追い込まれた。

鳩山元首相が明言されているように、

鳩山首相は最後まで普天間の県外・国外移設を追求するべきであったが、

日本を実効支配している

日米合同委員会

の指揮の下で、外務、防衛、沖縄担当の各大臣は鳩山首相の県外・国外移設の実現に

向けて尽力するどころか、鳩山首相の意思に反する行動を示したと見られている。

この三大臣こそ、岡田克也氏、前原誠司氏、北沢俊美氏である。


鳩山首相の辞意表明の機会を捉えて権力を強奪したのが菅直人氏である。

菅氏は権力を強奪すると、

普天間基地の辺野古移設推進

企業団体献金全面禁止公約の廃棄

消費税大増税方針の提示

に突き進んだ。

民主党政権の基本政策方針を全面的に転覆したのである。

2010年6月17日、菅直人首相は参院選マニフェスト発表会見を実施。

この席で、消費税率を10%に引き上げる方針を明示したのである。

主権者はこの方針提示に反発し、民主党は2010年7月実施の参院選で大敗した。

衆参ねじれ状況が発生し、民主党政権は凋落の一途を辿ることになった。

このなかで、2011年3月11日に東日本大震災が発生した。

これに伴い、東京電力福島第一原子力発電所が完全な電源喪失の状態に陥った。

2011年3月11日には福島第一原発が非常事態に移行したことが

明らかになったのである。

原子炉の冷却が不能になれば、何が起こるのかは明白である。

燃料棒は溶解し、原子炉爆発を誘発する。

チェルノブイリ原発で発生した爆発が生じることは時間の問題になる。


菅直人内閣で福島原発事故を伝えた枝野幸男官房長官は、

3月11日19時42分、原子力緊急事態宣言発令を発表した。

しかし発表に先立って、

「発表に先立ち、これから申し上げることは、予防的措置でございますので、

くれぐれも落ち着いて対応していただきたいと思います」と注釈を付けた。

予防的措置であるなら、一度対応を取ればそれで措置は完了するはずである。

事態が進行しないなら、最初の予防的措置ですべては事足りるはずであるからだ。

ところが、この予防的措置が、時間の経過とともに追加されていった。

枝野氏が「予防的措置」を発表したわずかに2時間後の3月11日21時23分、

枝野氏は新たに原発から半径3キロ以内の住民に避難指示を、

半径3キロから10キロの住民には屋内での退避を指示したのである。

枝野氏は記者会見でこう述べた。

「これは念のための指示でございます。放射能は現在、炉の外には漏れておりません。

 今の時点では環境に危険は発生しておりません。」

念のための措置で原発事故が進行していないのなら、

そもそも避難など必要はなかったはずだ。

それが、緊急事態宣言を発令してわずか2時間後に、避難指示が発令された。

さらに、日付が変わった翌3月12日午前5時44分、菅政権は

新たに半径10キロ圏内の住民に対して圏外への避難指示を発令した。

何を言いたいのか。

枝野氏は3月11日夜の段階で、原発の半径20キロ、

米国基準では80キロ圏内の住民に避難命令を発令するべきだったのだ。

危険を把握しながら、事実を伝えず、必要な避難命令を発動しなかったのだ。

つまり、住民を見殺しにする選択を示したのである。

このような人物に、日本の政治を委ねるわけにはいかない。

現時点で代表選出馬意思を示している人物は、問題の本質を何ひとつ理解していない。

ただひたすら、自分の利益しか考えていない。

だからこそ、現在の民進党が崩壊の危機に直面しているのである。

このような民進党に明日はない。

民進党の解体、解党は不可避である。

無意味な代表選に突入するのは時間とエネルギーの無駄にしかならない。

無反省に代表選に突き進む前に、問題の本質を考察することが求められている。


私は鳩山政権を破壊した主犯を

悪徳10人衆

と表現してきた。

藤井裕久、渡部恒三、仙谷由人、菅直人、岡田克也、野田佳彦、前原誠司、

枝野幸男、安住淳、玄葉光一郎

の10名である。

鳩山首相が示した普天間の県外・国外移設を妨害し、

「シロアリ退治なき消費税大増税」に突き進み、

政権交代実現の最大の功労者である小沢一郎氏と鳩山友紀夫氏に弓を引いた。

この悪徳10人衆が民主党政権破壊の主犯であり、

その後の民主党、民進党凋落の主犯なのである。


その政権崩壊、民進党崩壊の主犯たちが、代表辞任の報を受けて、

代表ポストを巡って色めき立つ。

要するに、自分のポストのことしか考えていないのである。

代表選に名乗りを挙げる前に、民進党が主権者の信頼を完全に失っている原因が

どこにあるのかを考察するのが先である。

問題の本質を掴むこともせず、ポスト争いだけに血道を上げているから、

党は衰退の一途を辿っているのである。


結論を示そう。

民進党にいま求められていることはただひとつ。

政策方針を純化することである。

原発、憲法=戦争法、格差についての基本政策方針を明確にすること。

これを欠いているから民進党が完全没落しているのだ。

原発稼働を認めるのか、認めないのか。

戦争法を容認するのかしないのか。

消費税増税を認めるのか認めないのか。

この基本政策において、民進党には正反対の二つの勢力が同居している。

この状態を放置して、いくら執行部を変えたところで、何の意味もない。

この基本をまったく理解していないのだ。


上記の悪徳10人衆は、すべて、

原発容認

戦争法容認

消費税増税容認

の方針を有していると考えられる。

つまり、悪徳10人衆はそろって民進党を離れて自公サイドに移籍するべきである。

本来の民主党、民進党は、

原発稼働阻止

戦争法阻止

消費税増税阻止

の政策方針を明示する存在であるはずだ。

これが真正民主党、真正民進党である。

民進党は政策を基軸に、二つのグループに分離・分割されるべきである。


永田町でこれから加速すると予想される事態は、

小池国政新党

の創設である。

都議選で躍進した小池新党の国政バージョンを立ち上げる動きが急浮上するだろう。

民進党所属議員の多数が、民進党を離れて小池国政新党に流出する可能性がある。

しかし、政策を無視した新党への合流は主権者に対する背信行為である。

国政において、自公と小池国政新党が二大勢力を形成することは、

日本支配を強化しようとする支配者の究極の目標である。

自公と小池国政新党は、基本政策方針においてほとんど差異がない。

第一自公と第二自公ができるだけなのだ。

主権者にとって何よりも重要なことは、主権者の意思を反映する政党の存在である。

自公と小池国政新党が国会の二大勢力になれば、

原発稼働阻止、戦争法廃止、消費税増税阻止

を求める主権者の意思を反映する政治勢力が消えてしまう。


重要なことは、

原発稼働阻止、戦争法廃止、消費税増税阻止

の政党が創設され、この主権者政党が共産党と盤石の選挙協力を実現し、

総選挙に立ち向かうことである。

小選挙区に自公と第二自公と表現できる小池国政新党がそれぞれ候補者を

擁立する場合、政策で対峙する主権者勢力が、ただ一人の候補者を擁立すれば、

この主権者勢力の候補者が当選する可能性が著しく高くなる。

選挙で当選することだけを目指して、

自公と政策がほぼ同一の小池国政新党に雪崩を打つことは、

主権者に対する背信行為であり、愚の骨頂と言うほかない。

自公、小池国政新党に真正面から対峙する、

本当の意味の「第三極勢力」を確立すること強く求められている。

自公でも、小池国政新党でもない、

本当の意味の主権者新党の創設こそが求められている。

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