★二重国籍より党首としての資質欠落が問題ー(植草一秀氏)

民進党代表の蓮舫氏が二重国籍問題について記者会見を行った。

戸籍謄本の一部の複写を公開したことが話題となっているが、

問題の本質は二重国籍状態が存在したのかどうかである。

蓮舫氏は父親が台湾出身で母親が日本人であり、

1984年の国籍法改正まで日本国籍を取得できなかった。

1985年に改正国籍法が施行され、1985年に日本国籍を取得した。

蓮舫氏は、このときに父親が台湾籍の離脱手続きを行っていたと認識していた

とするが、実際には台湾籍の離脱手続きを行っていなかった。

2016年9月の民進党代表選期間中に台湾籍が残っているのではないかとの疑惑が

浮上し、蓮舫氏が台湾当局に確認したところ、籍が残っていることが明らかになった。

蓮舫氏の説明によると、2016年年9月6日に、台湾の駐日大使館にあたる

「代表処」に対して台湾籍離脱を申請。

これを受けて台湾当局は、台湾籍がなくなったことを示す「国籍喪失許可証書」を

9月13日付で発行した。

蓮舫氏はこの「証書」をつけて「外国国籍喪失届」を提出したが、

法務省は、日本が台湾と外交関係を有していないことから「外国国籍喪失届」を

受理しなかった。

蓮舫氏側が法務省に日本国籍の選択手続きについて確認した結果、法務省が、

「台湾出身者については、日本国籍の選択の宣言の手続き(国籍法第14条第2項後段)

により日本国籍を選択することとなる」

と回答。

蓮舫氏は2016年10月7日に日本国籍選択した。

この事実を客観的に証明する方法として、蓮舫氏は日本国籍選択を宣言した日が

記された戸籍謄本の一部、台湾当局が発行した台湾籍離脱証明書などを公開した。


戸籍の一部を公開することの是非については議論がある。

差別を助長しないこと、戸籍謄本を公表することを前例としないこと、

などを確認しておく必要がある。

この問題が、戸籍謄本の公表の是非問題として論議されている面があるが、

この問題と、二重国籍問題とを分離して考察することが必要である。

記者会見での質問でも指摘されたことであるが、

これらの事実関係から改めて明らかになったことがある。

それは、蓮舫氏が1985年の日本国籍取得から昨年、

2016年10月までの間、二重国籍状態にあったということである。

蓮舫氏自身は、台湾席を離脱していたとの認識であったと説明しているが、

事実としては、台湾籍は離脱していなかった。

蓮舫氏は2004年の参院選に立候補して国会議員になっているが、

このときの選挙公報には、

「1985年に台湾籍から帰化」

と表記している。

この表記が「台湾籍を離脱して日本国籍を選択した」ものと理解された可能性がある。

この表記が経歴詐称にあたるのかどうかは、司法判断に依るしかないが、

国籍問題についての管理が不行き届きであったことは否定できない。


この点に関して蓮舫氏は会見で、次のように述べた。

「国籍法に反して手続きを怠っていたことは事実ではありますが、

故意に怠っていたわけではなくて、17歳のときに日本国籍を取得してから、

私はずっと台湾籍は放棄したものだと思っていました。思ったままでした。

そのなかで2004年から、政治家にさせていただいたときの公報に

書かせていただいた部分では、まさにその台湾から日本人になったという部分で、

日本国籍取得を帰化、というかたちで使わせていただいた認識でありまして。

それ以上深いものでもなかったと思っていますので、

そこに故意性はないとご理解をいただければと思います。」

出生地主義を採る国で生まれた日本人は、出生地の国籍を自動的に取得することに

なるため、二重国籍という状態は広範に発生し得る。

日本の法律は、外国籍離脱を「努力義務」としているが強制はしていない。

したがって、多数の日本人が二重国籍状態にあるという現実が存在する。

この意味で、国会議員が二重国籍であるという可能性は常に存在し得るものである。

しかしながら、蓮舫氏に関しては、この問題が取り上げられた

昨年9月初の段階での全国紙やテレビのインタビューにおいて、

「二重国籍ではないのか」という問いに対して「意味がわからない」と回答、

「台湾国籍は放棄している」と断言していた。

ところが、その後の9月7日のインタビューでは、
「台湾に31年前の籍を放棄した書類の確認をしているが、

『時間がかかる』という対応をいただいた。いつまでに明らかになるかわからない」

として、あくまで「念のため」、台湾籍を放棄する書類を再び代表処に提出した」

と説明している。

国会で与党を追及する際に舌鋒鋭く、妥協の余地を残さない攻撃を行う

国会議員として、自分自身の問題についての説明が二転三転するのは問題である。

日本国籍選択を宣言した昨年10月の段階で、このことを説明しておく必要が

あったのではないかと考えられる。

いま、何よりも重要なことは

7月23日の仙台市長選と

7月30日の横浜知事選である。

このようなことで混乱している場合ではないのである。


今後の日本政治を考える際に、7月2日の東京都議選が投げかけたものは大きい。

都議選で安倍・下村自民党は歴史的な大敗を喫した。

間違いなく安倍政権退場のカウントダウンが始まったと言える。

主権者は安倍政治の政策以前の、安倍政治のモラルを問題にしている。

森友・加計・山口のアベ友三兄弟疑惑。

典型的な政治腐敗、政治私物化の現実が誰の目にもはっきり映し出されている。

安倍首相は森友問題について、

「自分や妻が関わっていたら、総理大臣も国会議員も辞める」

と明言した。

加計問題については、

「働きかけていたら責任を取る」

と明言した。

そして、その後の国会審議で明らかになったことは、

安倍昭恵氏が森友問題に深く深く関わっていたという事実

安倍首相官邸が加計問題に強く働きかけていたという事実

である。


当然のことながら、安倍首相は直ちに辞任するべきだ。

ところが、安倍首相は国会を横暴な運営で閉会し、

閉会中審査を自分の外遊中に設定し、

憲法が規定する国会召集の義務も果たさずにいる。

予算委員会で集中審議を行うことになったが、審議日程を1日に絞り、

与野党2対8が慣行である質問時間を5対5にすることを主張している。

往生際が悪すぎる。

これだけ主権者の不信が高まっているという現実を直視しようとしない。

心根がまったく座っていない。

器量が小さいのである。


これだけ主権者の不信が高まっているのだから、

その不信感を払拭するには、不信感を払拭しきるまで、真正面から向き合うしかない。

臨時国会を召集し、時間無制限で、不信感を払拭しきるまで審議を

し尽くすしか道はないのである。

この向き合い方をできないことが、すべてを物語っている。

つまり、真正面から向き合い、すべての疑問に答え切るなら、

森友、加計、山口の三疑惑の不正が明らかになってしまうのだ。

だから、堂々と、真正面から受け答えができないのだ。

本当に自信があるなら、安倍昭恵氏、加計孝太郎氏などの証人喚問を

堂々と行えばいいのだ。

それをできないところに、問題の本質がくっきりと表れている。


他方、民進党はどうなのか。

現在の執行部は表が蓮舫氏だが、裏が野田佳彦氏である。

蓮舫氏は傀儡で、本尊は野田佳彦氏であると言ってよいだろう。

野田氏が民進党の中枢に居座っていることが、最大の矛盾である。

野田氏こそ、2009年の政権交代の偉業を木っ端微塵に破壊した主犯者である。

民主党が信を失い、民進党が凋落の一途をたどっているその主因が野田佳彦氏にある。

蓮舫-野田執行部は東京都議選後に直ちに引責辞任するべきだった。

引責辞任せず、この局面で、二重国籍問題で騒動を起こしていることが、

仙台、横浜の市議選に影響を与えかねない。

7月25日には、民進党両院議員総会が開かれる予定である。

この総会で、執行部刷新を決め、

さらに、その後、政策を基軸に民進党を健全に分離・分割することを検討するべきだ。

同時に連合も政策を基軸に、分離・分割するべきだ。

民進党問題を解決しなければ、

日本政治刷新の大変革に滞りが生じてしまうことになる。

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