★7.25民進党両院議員総会で民進党執行部総退陣へー(植草一秀氏)

7月2日の東京都議選で大敗したのは安倍自民だけではない。

野党第一党の民進党はさらに大惨敗している。

都議会議席総数127に対して、自民党が獲得した議席は23。

議席総数の5分の1にも届かぬ議席数に激減した。

都議会第一党の地位は、公認、推薦合わせて55議席を獲得した

都民ファーストに譲った。

都民ファーストと選挙協力した公明党は23人の擁立候補者の全員当選を果たした。

自民党はこの公明党と同数にまで議席数を減らしたのである。

国政における自民党多数議席は公明党の全面支援に支えられて実現したものである。

小選挙区の選挙で公明党の支援なしに当選できる自民党議員は数えるほどしか

存在しない。

次の国政選挙で公明党が自民党以外の政党の支援に回れば、

自民党が一気に大敗する可能性が高いことが誰の目にも明らかになった。

しかし、この自民党よりも無残な敗北を喫した政党がある。

それが野党第一党の民進党である。

民進党の前身である民主党は、2009年の都議選で54議席を獲得して

都議会第一党の地位にあった。

これが2013年の選挙で15議席に激減、今回はその3分の1の勢力に収縮した。

民進党執行部はこの現実に対して責任を明らかにする必要がある。


民進党の蓮舫代表の国籍問題が取り沙汰されているが、

日本国籍を取得しても、出生地主義で国籍を付与している国で生まれた者などは、

本人の意思に反して二重国籍になってしまう場合などがある。

蓮舫氏が日本国籍を有せずに日本の国会議員に就任していたなら重大問題であるが、

そうでないなら、大きく騒ぎ立てるような問題ではない。

民進党の問題は国籍問題ではなく、民進党がもはや主権者国民に

まったく信頼されていない政党に陥ってしまっていることにある。

もっとも象徴的な事例は昨年10月に実施された新潟県知事選での

民進党の対応である。

新潟知事選で最大の争点になったのは原発再稼働の是非である。

民進党の次期衆院選候補者である米山隆一氏が民進党の推薦を得て

知事選に立候補する意向を示した。

ところが、民進党は米山氏の推薦を拒絶した。

民進党支持母体である連合新潟が、対立候補となった森民夫氏の推薦を

決めてしまっていたというのが表向きの理由だ。

森民夫氏は自民党が推薦する候補であり、原発再稼働容認のスタンスを

有しているとみなされていた。

連合新潟は原発容認の候補の支援に動いていたということになる。

この背景があるにもかかわらず、民進党は原発再稼働反対の方針を示す

米山隆一氏の推薦を拒絶した。

米山氏は民進党を離れて、完全無所属で新潟知事選に立候補し、

原発再稼働反対を訴えた。


自公が森民夫氏を支援し、民進党が実質的に森民夫氏の側面支援に回るなかでの

立候補となった。

ところが、結果は米山隆一氏の大勝となった。

政党の勢力図式に囚われずに

「政策を基軸に選挙を戦った」

「政策基軸選挙=政策選択選挙」

を実現した結果としての米山隆一氏の大勝利であった。

私はこの選挙の方式を「新潟メソッド」と称している。

(拙著『「国富」喪失』(詩想社新書)

https://goo.gl/s3NidA

参照)

特筆するべきことは、米山氏の支援を拒絶したのが、

新たに就任した蓮舫-野田佳彦の民進党新執行部であった。

民進党新代表に就任した蓮舫氏が米山氏の新潟県知事選出馬に際しての

民進党推薦を拒絶したのである。

もちろん、裏で糸を引いたのは野田佳彦氏である。

その蓮舫氏が、選挙戦中盤以降、米山氏支持が急伸すると態度を豹変させた。

米山氏の当選が確実になると、急遽新潟入りして米山氏の応援演説に応じたのである。

あまりにも醜い対応であった。

この民進党が主権者国民の支持を完全に失っている。

7月25日に開催される民進党両院議員総会では執行部の退陣を求める声が

優勢になることは間違いない。

民進党の解体が迫っているが、これが日本政治刷新を実現する第一歩になることは

間違いない。


2009年の衆院選で鳩山-小沢民主党が大勝した。

そして、日本の政治史上初めて、民衆の民衆による民衆のための政権が樹立された。

日本の主権者が自らの判断で政権交代を実現させたのである。

鳩山民主党は日本政治の本質を刷新する極めて大きな方針を明示した。

対米隷属からの脱却

官僚支配の打破

大資本支配の廃絶

これが鳩山新政権が示した基本方針だった。

具体的には、

普天間飛行場の県外・国外移設方針

官僚天下りの根絶

企業団体献金の全面禁止

の方針を打ち出したのである。

さらに財務省が強く求める消費税増税について、

「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」

と主張し、官僚天下り制度を根絶しない限り、消費税増税を認めない方針を明示した。


この方針を、民主党内でもっとも声高に訴えていたのが、野田佳彦氏である。

私がブログで紹介した野田佳彦氏の「シロアリ街頭演説」は

2012年の通常国会冒頭で大きく取り上げられた。

2009年8月15日野田佳彦氏街頭演説

http://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo

2009年7月14日野田佳彦氏衆院本会議討論演説

http://goo.gl/5OlF8

鳩山政権は日本政治を刷新する大方針を明示したが、

日本の既得権勢力から総攻撃を受けて破壊された。

小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏が分断されたことも極めて重大だった。

小沢氏と鳩山氏の両名は、いわゆる「人物破壊工作」の対象とされた。

既得権勢力の広報部隊であるメディアは、

この二人の指導者に対する集中攻撃を展開し続けた。

鳩山首相は普天間問題での対応を誤り、辞任に追い込まれた。

この情勢を真横で見ていた菅直人氏が、

すべての政策方針を転覆させて権力を強奪した。

2010年6月のことである。

この2010年6月政変を境に、

主権者の民主党に対する期待が失望に急変したのである。


菅直人氏は鳩山政権が既得権勢力から集中攻撃を受けた背景が、

普天間基地の県外・国外移設方針

官僚天下り根絶と消費税増税封印

企業団体献金全面禁止方針

にあると判断して、このすべての基本方針を転覆させたのである。

首相に就任した直後の2010年6月17日に、

7月に迫っていた参議院選挙の公約発表記者会見を行った。

この記者会見で、突然、民主党内の民主的な手続きを何ひとつ経ずに、

消費税率10%への引き上げ方針

を明示したのである。

その結果、7月参院選で民主党は大敗した。

民主党の凋落、没落は、2010年に菅直人氏が政治権力を強奪したとことに

原点がある。


そして、フクシマの原発事故がありながら、

原発廃止の判断を示せなかったのも菅直人政権である。

菅直人氏の次に首相に就任したのが野田佳彦氏である。

「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」

と声を張り上げた、あの人物である。

野田佳彦氏は2012年、消費税増税を確定する法律を強行制定した。

不幸を招く原因は「矛盾」にあると言われる。

「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」

と絶叫した人物が、

「シロアリを退治しないで消費税を上げる」

ことを強行した。

これ以上の「矛盾」はないと言える。


その野田佳彦氏が、2012年12月、

民主党が大敗することが明白な状況の下で衆院解散総選挙に打って出た。

安倍自民党に大政を奉還するための選挙だった。

同時に、民主党では、「シロアリ退治なき消費税増税」に反対する、

初志を貫く議員が、民主党を離党して新党を創設した。

小沢一郎氏が率いる「国民の生活が第一」である。

この新勢力は国会議員約50名を要する、まさに堂々たる「第三極」勢力だった。

ところが、偏向メディアはこの「第三極」勢力に一切光を当てずに、

超弱小勢力であった橋下徹新党を「第三極」として超大宣伝を展開し続けたのである。

解散総選挙が2013年に入って実施されていれば、

小沢新党にまとまった額の政党交付金が給付される。

野田佳彦氏が2012年12月に衆院選を実施した最大の目的は、

小沢新党への政党交付金給付を妨害することにあったと推察される。


菅直人氏と野田佳彦氏は2009年の政権交代の意義を水泡に帰す、

そして、民主党=民進党を壊滅させた、文字通りの第一級戦犯である。

現在の民進党執行部の蓮舫-野田佳彦-山井和則氏の体制の中核は

言うまでもなく野田佳彦氏である。

民主党政権、民主党を破滅させた第一級戦犯が現在の民進党のまさに中枢に

居座っているのである。

これで民進党が発展できるわけがない。

民進党の基本方針はすべてがあいまいである。

原発、戦争法=集団的自衛権、TPP、基地、格差

の主要政策課題について、現在の民進党執行部の基本方針は自公政権と大差がない。

それにもかかわらず、対自公政権の戦いの中心にこの民進党が居座ろうとする。

だから、野党共闘に大いなる力が沸き上がらない。

民進党支持母体の連合の中枢を電力・電機・自動車・鉄鋼の労組が占有している。

これらの労働組合の大半が、いわゆる御用組合であり、

連合の基本政策が自公の政策と重なっている。


民主党を解体し、親安倍政権勢力と反安倍政権勢力に分離する必要がある。

同時に連合を解体して、労働組合を親安倍政権勢力と

反安倍政権勢力に分離する必要がある。

7月25日の民進党両院議員総会で、

まずは現執行部の総退陣を決定することが強く求められている。

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