★原発・戦争法廃止・消費税率5%で総選挙を戦うー(植草一秀氏)

6月8日に実施された英国の総選挙でテリーザ・メイ首相が率いる

与党保守党が過半数割れに追い込まれた。

保守党は第一党の地位は維持するものの単独過半数を獲得できず、

政権を維持できるかどうかは微妙な情勢である。

英国下院の定数は650。

326議席が過半数だが、未確定議席が7になった段階での保守党獲得議席が

313で過半数に届かないことが確定した。

改選前議席数は330だった。

英国下院の任期は5年で任期満了は2020年だった。

メイ首相は昨年7月の首相就任以来、総選挙は2020年まで行わないとしてきたが、

4月18日に突然選挙の前倒しを表明した。

EU離脱交渉の開始を目前に控えて、

「この先数年にわたって確実に、安定した政権運営を保証する唯一の道だ」

として議会解散、総選挙の実施を選択した。

メイ首相は総選挙に大勝して、多数議席の力を背景に

EU離脱交渉に臨む方針を示していたが、この思惑が崩壊した。

最大野党の労働党コービン党首は、

今回の総選挙はメイ首相が基盤を強化するために解散したことに伴うものだった

と指摘したうえで、

「メイ首相は与党・保守党の議席を減らし、信頼を失った。辞任の十分な理由となる」

と述べて、メイ首相の辞任を求める考えを示した。

主要メディアは解散総選挙が打ち出された段階で、

与党保守党の圧勝を予測していたが、またしても現実がメディア予測を覆した。


英国でも民主主義が健全に機能していることが証明された。

お隣の韓国でも、大統領が政治を私物化しているとの疑惑が浮上したことに対して、

大統領を反対与党の代表者に交代させる意思を選挙によって実現した。

お隣韓国でも民主主義が健全に機能している。

これに対して、日本では、民主主義が一種の機能不全に陥っている。

森友・加計・山口の「アベ友三兄弟」に対する国家権力による便宜供与、

利益供与に関する疑惑が沸騰している。

この疑惑に対して、安倍首相は

「自分や妻が関かかわっていたなら総理も議員も辞職する」

「働きかけていたなら責任を取る」

などの発言を国会答弁で明示した。

その後、妻の昭恵夫人の関わりが客観的には明白になり、

加計事案では、中央省庁の内部文書において

「総理のご意向」

などと明記した文書が発見されている。

国会における発言に責任を持つなら、安倍首相は辞任し、

議員も辞職しなければならないことになるが、責任を取ることはおろか、

説明責任さえ果たさない状況が続いている。

国会会期末を目前に控えて、与野党の駆け引きが激化しているが、

政権の退陣、国会議席構成の抜本的な是正が実現する見通しはまだ見えてこない。


英国のEU離脱国民投票、米国でのトランプ大統領誕生、

韓国での文在寅大統領誕生、そして、今回の英国保守党の敗北は、

いずれも

反グローバリズムの旋風

によるものである。

グローバリズムとは

「大資本の利益を極大化するために、国境を超えて、経済社会を

市場原理のみによって動かすことを目指す」

「巨大資本による運動」

のことだと理解するが、このグローバリズムの本質を見抜いた主権者が、

世界各地で反グローバリズムの旗を掲げ始めている。

フランスでも市場原理ですべてを動かそうとするグローバリズムへの反発が

強まったが、結果における平等を重視する左派勢力が連帯せず、

グローバリズムの信奉者と見られるマクロン氏が新大統領に就任した。

グローバリズムは資本の利益極大化を目指すものであるから、

労働者の獲得できるパイは縮小する。

1%の資本家に所得と富が集中し、99%の労働者が下流に押し流される。

この流れに反対する主権者の声を、政治勢力が吸い上げられるかどうか。

これが政治刷新を実現する要件である。

英国で労働党が躍進したのは、グローバリズムに反対する主権者の声を

吸い上げることができたからであると思われる。

日本でもようやく安倍政権の政治私物化、腐敗政治に主権者が目を向け始めた。

メディアの「印象操作」によって、安倍暴政の現実に目を向けない主権者が

多数残存しているが、非常に緩慢ではあるが、真実に目覚める主権者は

増大しつつある。

問題は主権者の覚醒を促し、主権者の連帯を牽引する

「たしかな野党」

が確立されていないことだが、この条件をクリアすれば、

日本でも民主主義の機能を回復することが可能になると思われる。

明確な方針、戦略、戦術を構築して事態を打開するしかない。


米国、英国、韓国の主権者がそれぞれに民主主義を有効活用している.

日本でも2009年には民主主義を有効活用したことがあった。

フランスでは、似通った主張を持つ勢力が候補者を一本化せずに選挙に臨み、

両者の投票を無効にしてしまった。

選挙で民意を正しく選挙結果に反映させるためには、

選挙制度の特徴を踏まえた戦術、戦略が必要になる。

このこともしっかりと認識しておかねばならない。


安倍暴政が好きだという人も、広い日本だからいるかも知れない。

しかし、安倍暴政は許せないと考える主権者も数多い。

2014年の総選挙で安倍自民党の得票は全有権者の17.4%に過ぎなかった。

6人に1人程度しか安倍自民党には投票していない。

同じ政権与党の公明党への投票を合わせて24.7%だった。

当時の野党に投票した主権者が28.0%。

安倍政権与党ではない政党に投票した主権者の方が多かったのである。


この事実を踏まえると、全主権者の4分の1が結束して、

安倍政治に対峙する政治勢力に投票を集中させれば、

少なくとも互角の勝負をすることができる。

このことをまずはしっかりと確認しておきたい。

そして、選挙に際して、何よりも重視するべきは、新しい政権が実行する

政策

である。

党名などはどうでもよいことだ。

私たちの暮らし、私たちの政治において、何よりも大事なことは

政策

なのだ。

だから、選挙を

政策選択選挙

とするべきである。

選挙を通じて、主権者である国民が、自分たちが求める政策を実現させる。

「政策選択選挙」

を実現しなければならない。


それでは、どの政策を争点にするべきなのか。

あまり多岐にわたると選挙で国民が選択することが困難になる。

重要性を考慮して、何よりも重要な政策テーマを抽出することが必要だ。

私は次の三つを総選挙のテーマに掲げるべきだと思う。

第一は原発

原発の稼働を認めるのか認めないのか。

原発を認めないという選択は、当然のことながら、すべての原発の廃炉を
目指すということである。

そして、すべての原発の稼働をまずは止める。

これが第一。


第二は、日本を戦争をする国にするのかどうか。

安倍政権は憲法も変えずに、日本を戦争をする国にした。

そのための法律が「戦争法」と呼ばれる安保法制だ。

日本を戦争をする国にしない

選択肢を主権者の前に提示する。

戦争法制を廃止するのかどうかが第二だ。


第三は弱肉強食推進の経済政策を共生実現の経済政策に変えること。

そのための具体的提案として、

まず消費税率を5%に戻すことを掲げる。

消費税率を下げると社会保障が切り込まれると心配する人がいる。

その心配は、日本の財政制度をまったく理解していないことからくる間違った

心配である。

日本の財政制度では、税目と支出を直接結びつけてはならないこととされている。

財政法第14条および第13条は、総計予算主義の原則を定め、

「特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある
場合に限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする」

ことを定めており、この例外を除いて、すべての支出は予算総額のなかに含まれ、

また、すべての歳入も予算総額のなかに含まれる。

社会保障の財源は消費税によらなければならないという定めは存在しないのである。

支出の制約が厳しくなるなら、利権支出を切り、これをすべて社会保障支出に

切り替えればよいのである。

また、税の構造を改めて、「能力に応じた負担」を実現する税制を実現すれば

よいのである。

結論として、消費税率の5%への引き下げを政策選択選挙の三本柱のひとつにする。

原発廃止

戦争法廃止

消費税率5%

の三つの公約を必ず実現する候補者を、すべての選挙区にただ一人擁立して、

主権者が連帯してその候補者の支援を行う。

オールジャパン平和と共生

はこの実現のために、これから運動を展開してゆく。

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