★野党は昭恵夫人前川前次官招致に全面審議拒否で臨めー(植草一秀氏)

文部科学省の前事務次官である前川喜平氏が朝日新聞デジタルのインタビュー

(5月25日)で、次官を辞任したことについて、

省の違法な「天下り」問題を受けて

「引責辞任は自分の考えで申し出た」

「官邸からも大臣からも『辞めろ』とは言われていない」

と述べた。

このことについて、安倍内閣の菅義偉官房長官は5月25日午前の記者会見で、

次のように述べた。

「私の認識とまったく異なっている。

前川氏は天下り問題については、再就職等監視委員会の調査に対して、

問題を隠蔽した文科省の事務方の責任者で、

かつ本人もOB再就職のあっせんに直接関与していた」

さらに、

「そうした状況にもかかわらず、当初は責任者として自ら辞める意向を

まったく示さず、地位にレンメンとしがみついていた。

その後、天下り問題に対する世論からの極めて厳しい批判にさらされて、

最終的に辞任された方と承知している」

とも述べた。

細かいことだが、まずは、菅官房長官が述べた

「レンメンと」

である。

「レンメンと」

というのは

「連綿と」

のことであると思われるが、

「連綿と」の意味は

「切れ目がな連続しているさま、途切れることなく連なっているさま、などを

意味する表現。連綿。」(weblio 辞書)

である。

「地位にしがみついていた」

ということを踏まえると

「連綿と」

ではなく

「恋々と=レンレンと」

になるのではないか。

「恋々と」

となると

「諦め切れずにくすぶっているさま。
 未練がましく ・ 未練たらしく ・ ぐずぐずと ・ うじうじと」

という意味になる。

日本語は正しく使うべきだ。


これは「小さな誤り」だが、もっと「大きな誤り」があったのではないか。

菅官房長官の発言は前川次官に対するものではなく、

安倍首相に対するものだったのではないか。

「連綿と」を「恋々と」に置き換えて再現してみよう。

「そうした状況にもかかわらず、当初は責任者として自ら辞める意向を

まったく示さず、地位に恋々としがみついていた。

その後、天下り問題に対する世論からの極めて厳しい批判にさらされて、

最終的に辞任された方と承知している。」

安倍首相はまだ辞めていないが、常識で考えれば安倍首相の辞任は時間の問題だ。

このことについて、菅官房長官が近未来予測として発言したのではないか。

文科省の天下り問題

森友学園への国有地不正払下げ問題

加計学園に対する利益供与問題

のすべてについて、菅官房長官が、安倍晋三首相のことについて発言したと

理解すると、すべての筋が通る。


文科省の天下り問題にしろ、行政の最高責任者は文部科学省次官ではなく、

内閣総理大臣である。

行政トップの責任を脇に置いて、その部下である事務次官の責任だけを追及して、

「責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、地位に恋々としがみついていた」

と述べるのは喜劇でしかない。

菅氏の指摘は、そのまま安倍首相にあてはまるものである。

そして、前川喜平前次官が問題の本質を的確に指摘した。

「公平公正であるべき行政のあり方がゆがめられた」

これこそ、問題の本質である。

私は森友疑惑の本質は

公務員が「中立、公正、公平」の基準を踏み越えて行動したのかどうか

にあると主張してきた。

4月22日付ブログ記事

「公務員の「不正」を「忖度」にすり替えるな」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-0a94.html

前川氏の指摘が正論である。

安倍内閣、菅官房長官、松野文科相は、国会に対して虚偽答弁をしている。

国権の最高機関である国会に対する侮辱、冒涜行為である。

すなわち、主権者である国民に対する侮辱、冒涜行為なのだ。

野党は前川前次官、安倍昭恵氏の参考人招致に与党が応じるまで、

すべての国会審議を止めるべきだ。

主権者国民がその行動を全面支持する。


森友疑惑と加計疑惑は、典型的な政治腐敗問題である。

一部に、

「国会では議論するべき別の問題が数多くある」

との声があるが、それは、政治腐敗問題を明らかにされたくない安倍政権の意向を

「忖度」

した、御用聞きの主張でしかない。

政治権力が政治権力を用いて、近親者に便宜や利益を供与する。

まさに、典型的な政治腐敗事例なのだ。


日本政治を腐敗させない。

政官業の癒着を許さない。

政治の私物化を許さない。

これは民主主義政治の「いろはのい」である。

安倍首相夫人の安倍昭恵氏が深く関与して、国有地が法外に低い賃料で賃貸されたり、

法外に低い価格で払い下げられていた。

そして、安倍首相に極めて近い人物の事業に国が巨大な利益供与をしていたことが

明らかになった。

歴史の教科書に載せられる政治腐敗事案の典型的な事例が、

いま、いくつも噴出しているのである。

安倍首相が、これらの疑惑が事実無根で、潔白であると主張するなら、

速やかに疑惑を晴らすための行動を取るべきだ。


安倍昭恵氏が公の場で説明することが必要であることは明白である。

説明責任も果たさずに外遊に同行すること自体、許されるべきでない。

果たすべき説明責任も果たさずに、外遊に同行する姿をテレビカメラに映されて、

何の羞恥心も感じないのなら、もはや感覚が麻痺しているとしか言いようがない。

このような横暴を主権者は許すべきでないのだ。


文科省の天下り事案も、事務責任者の事務次官が責任を問われるのは

順当であるにせよ、行政の最高責任者が、これを他人事として扱うことは

常軌を逸している。

菅義偉氏が、

「責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、

地位にレンメンとしがみついていた」

と発言しながら、その最終責任者は前川喜平前事務次官ではなく、

安倍晋三内閣総理大臣である

ことに思いを馳せることもないなら、菅官房長官も直ちに辞任するべきだろう。

行政機構のガバナンスの基本の基本さえ理解していないということになるからだ。


これを

「天に唾する」

と言う。

「天に唾する」

とは、

「天(てん)に向(む)かって唾(つばき)を吐(は)く」

「《上を向いてつばを吐くと、それがそのまま自分の顔に落ちてくるところから》
人に害を与えようとして、かえって自分に災いを招くことのたとえ。
天を仰いでつばきする。天につばする。」

(出典:goo辞書)

である。

菅義偉氏は前川喜平前事務次官に唾を吐いたのだろうが、

その唾はそのまま菅義偉氏と安倍晋三氏の顔に落ちてくるのである。


安倍首相は森友疑惑について、自分や妻が関わっていたら、

総理も議員も辞めると明言している。

また、加計疑惑についても、

「働きかけているというのなら、私は責任をとりますよ。当たり前じゃないですか」

と明言している。

そして、森友疑惑では安倍昭恵夫人の深い関与が明らかになっている。

加計疑惑では「官邸からの圧力」が文書として残されている。

こうした状況のなかで、安倍首相が

「責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、地位にレンメンとしがみついて」

いるのであり、菅義偉官房長官の発言は、

安倍首相について言及したものであるとしか考えられないのだ。

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