★昭恵氏証言なくして安倍首相辞任回避できないー(植草一秀氏)

森友疑惑で安倍首相は絶体絶命の状況にある。

この危機を乗り越えるために、森友疑惑では、

悪いのは籠池夫妻であって

安倍夫妻ではない

という情報操作が、マスメディアを通じて実行されているが、

主権者国民は、このような権力の横暴、暴走を許してはならない。

安倍昭恵氏が森友学園の土地取得問題に「関与」したことは明白であり、

安倍首相は国会での答弁を踏まえて潔く辞任するべきである。

政治の私物化、道理の破壊は許されない。

日本は四季の変化が明確である。

その四季折々のさまざまな歳時記を節目に時が過ぎ去る。

政治の暦では予算委員会審議と予算成立、5月の連休、通常国会閉会、盆休み、

秋の連休、臨時国会、年末予算編成などが重要な節目になる。

通常国会では安倍政権の綻びが鮮明になった。

通常なら、政権が倒れていておかしくない。

ところが、安倍政権が存続を続けているのには二つの背景がある。

ひとつは、メディアが完全に大政翼賛会に変質し、情報を歪めて伝えていること。

内閣支持率が高いとする虚偽報道がその象徴である。

いまひとつは、野党第一党が安倍自民党以上に凋落していることだ。

この二つの要因で、倒れていなければならない政権が存続している。


安倍政権は件(くだん)の森友疑惑を5月連休で断ち切り、

逃げ得を狙ったが、連休明けに衆参両院の予算委員会で集中審議が行われることに

なり、目算が狂った。

マスメディアは、「籠池夫妻が悪い」との情報操作、印象操作を展開しているが、

問題の本質はここにはない。

国有財産が不正に低い価格で払い下げられた問題が核心であり、

その国有地不正売却に安倍昭恵氏が「関与」していたことが明白になっている。

安倍昭恵氏がこの疑惑を否定したいなら、説明することが必要不可欠である。

この問題に終止符が打たれないのは、

疑惑の中心にいる安倍昭恵氏が説明責任を完全に放棄しているからだ。

その責任は安倍晋三氏にある。

籠池泰典氏に対しては、「首相を侮辱した」との理由で証人喚問を行った。

その証言で浮上した重大な疑惑について、

安倍昭恵氏に説明をさせないようにしているのは安倍晋三氏である。

このような卑劣な姿勢に対して、主権者は怒りを表明する必要がある。

国有地が不正に低い価格で払い下げられたのは、

この問題に安倍昭恵氏が関与したからに他ならないと考えられる。

この問題について、

「忖度(そんたく)」

という表現が用いられているが、この表現が大々的に用いられている理由が、

首相の責任を排除する点にあることを、私たちは知っておかねばならない。


「忖度」

とは、

「他人の気持ちをおしはかること」

であり、この言葉を使うことにより、

「おしはかられた側の行動によって問題が生じたのではない」

「おしはかった側の行動によって問題が生じた」

ことが、暗黙のうちに主張されることになる。

つまり、

「忖度」によって国有地が払い下げられたのなら、

「おしはかられた側の安倍昭恵氏の側には責任がない」

という主張を展開しやすくなるのであり、この効果を狙って

「忖度」

という言葉が多用されている。

しかし、問題の本質は「忖度」自身にあるのではない。

「忖度」しようがしまいが、

公務員が「中立・公正・公平」に公務員の職務を遂行したのかどうかが問題なのだ。

「国有地を不正に低い価格で払い下げた」

ことは、

公務員の「中立・公正・公平」の基準に反する違法行為である。

この「違法行為」が問題の核心であって、この「違法行為」発生の経緯のなかに、

安倍昭恵氏の「関与」があったのかどうかが問われているのである。

そして、これまでに明らかになっている事実は、

「安倍昭恵氏の関与を強く示唆している」

のである。

「忖度」など枝葉末節の事項であり、問題は公務員の行動に不正があったのかどうか。

そして、その経緯に安倍昭恵氏の行動が関与したのかどうか、なのである。

国会で集中審議を行うなら、必ず、安倍昭恵氏による説明の機会を設定することを

実現する必要がある。

これが野党民進党が達成するべき最低限の課題である。


政治の腐敗とは、政治、行政が、中立・公平・公正に遂行されないという問題である。

行政機関が政治家の介在に対して、

「中立・公平・公正」

の基準の矩(のり)を超えずに、適正に職務を遂行することが求められる。

政治の腐敗とは、

政治家の介在によって、

「中立・公平・公正」

の矩を超えて公務員が行動してしまうことを意味する。


その基準は法律によって定められている。

国有地の売却については、

財政法第9条が

第九条 国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として
使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。

と定めている。

件の国有地が

「適正な対価なくしてこれを譲渡した」

ものであるのかどうか。

これが問題の本質である。


「忖度」があってもなくても、そんなことはどうでもいい。

国有地が適正な対価で譲渡されたのかどうか。

これが問題の核心なのだ。


森友学園が補助金を不正受給したとか、しなかったとか。

これは別の問題である。

それはそれで適正に対応すればよい。

国政上の重大問題は、

件の国有地が不正に低い価格で払い下げられたものなのかどうか。

もし、不正に払い下げられたものであれば重大事案なのだ。

そして、その不正売却が行われた背景に、

「安倍昭恵氏の関与」があったなら、

それは、安倍晋三氏が国会で何度も明言したように、

安倍首相が首相も議員も辞職するような話なのだ。


この意味では、安倍首相は、問題が発覚した当初から、

この問題の重大性を正確に認識していたと言える。

「森友事案にばかり時間をかけるのはけしからん」

と主張する自民党や維新の議員は、安倍首相が問題発覚当初に国会で明示した

「この問題の重大性」認識を

根底から否定しているということになる。

また、安倍首相は、問題発覚当初に、

「首相辞任や議員辞任に直結するほどの重大問題」

だと断じた姿勢に反する姿勢を示すべきでない。


その重大疑惑が濃厚に立ち込めているのだから、

安倍首相自身が、疑惑払しょくの先頭に立つべきであることは言うまでもない。

安倍首相は安倍昭恵氏が100万円の寄附をしたことを否定している。

しかし、籠池氏は証人喚問で、安倍昭恵氏が100万円の寄附をしたことを明言した。

これが事実に反するなら、直ちに議院証言法に基づいて、

籠池氏を「偽証」で告発するべきだろう。

そうなれば、真相は法廷の場で明らかにされる。

これこそ、安倍晋三氏にとって、望むべき事態であろう。

ところが、偽証で刑事告発もしないなら、主権者は、

100万円の寄附は真実である

と受け止める。

このことが、森友疑惑をさらに濃厚にすることになるのは言うまでもない。


安倍首相が国会答弁で示したように、この問題は極めて重大な国政上の問題である。

安倍首相が続投を望むなら、問題核心にいる安倍昭恵氏の説明責任の

回避、放棄は絶対に許されない。

民進党は党の存亡をかけて、安倍昭恵氏による説明責任を果たす場を設定するべきだ。

それを実現できないなら、民進党は終わりだ。

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