★ 国民ではなく大資本の利益を追求する安倍政権ー(植草一秀氏)

4月18日に日米経済対話が始動した。

「TPPを発効させない!全国共同行動」

https://nothankstpp.jimdo.com/

は4月17日に

参議院議員会館内で

日欧EPA緊急学習会

を開催し、

4月18日夕刻には、

首相官邸前で

「日米経済協議に異議あり!官邸前アクション」

を実施した。

世界政治はいま、

グローバリズム 対 反グローバリズム

の戦いの局面を迎えている。

グローバリズム 対 反グローバリズム

とは

資本主義 対 民主主義

の戦いと置き換えても良い。


拙著『「国富」喪失』(詩想社新書)

https://goo.gl/s3NidA



「資本主義対民主主義」

「資本主義の天敵としての民主主義」

について記述した。

「グローバリズム」

とは、

「大資本の利益を極大化するために、国境を超えて、市場原理のみによって

経済社会を動かすことを目指す運動」

のことだ。

安倍政権が推進するTPPは、国民の利益ではなく、

大資本の利益=グローバル巨大資本=ハゲタカの利益を追求するための枠組み

なのである。

これを民主主義の社会で押し通すには、民衆を騙すことが必要である。

騙すためにはツールが必要だ。

それがマスメディアである。

マスメディアに虚偽の情報を流布させて、

民衆を騙して大資本の利益を追求する政策を押し通す。

この策謀に打ち勝つ方法はただひとつ。

「民主主義」を活用することだ。

人々が賢くなり、権力者の策謀に騙されずに判断を下すことができれば、

権力者の策謀は挫折する。


グローバリズムでモノの値段は下がるかも知れないが、

所得の労働分配率は下がる。

ここが決定的に重要だ。

生産活動の果実=所得の分配において、

資本の分配が増大し、労働の分配が減少する。

圧倒的多数の低所得者層が生み出される。

これがグローバリズムの決定的な問題点なのだ。

そして、TPPは日本を収奪するための枠組みである。

とりわけ、米国が抜けるTPPは、日本に農産品を売るための枠組みに転換する。

日本が得るものが、より皆無になるのが米国抜きのTPPである。

安倍首相は国会答弁で、

「TPP最終合意文書は絶対に見直さない」

と繰り返した。

米国抜きのTPPを発効させるには、TPP最終合意文書の修正が必要になる。

国会答弁を覆すような変節が許されるわけがない。

また、米国との間でFTAを締結する場合、TPP以上に国益を献上することになる

可能性が高い。

そのようなFTA交渉に入ってはならない。

さらに、日米間の取り決めにISD条項を挿入することも許されない。

国益を守るどころか、国益を率先して売り渡す安倍政権に経済外交を

委ねることはできないのである。


欧州と米国との間の自由貿易協定である

TTIP

が協議されてきたが、欧州各地で

TTIP反対の運動が激化してきた。

5月17日の院内「日欧EPA緊急学習会」で講演した

ヨーロッパNGO:S2Bのルシルさんは、

TPPやTTIPが

「新世代の協定」

であると指摘した。

単純な関税率引き下げの自由貿易協定ではなく、

各国の制度や規制を改変する強制力を有する協定である

ことを強調した。


この点が重要なのである。

単に自由貿易を推進する枠組みではなく、

各国の制度や規制を統一化する強制力を有する枠組みなのだ。

この規制の改変、制度の改変により、

食の安全・安心

環境規制

労働規制

などが改変される。


そして、TPPやTTIPが内包する最大の問題点が

ISD条項

である。

ISD条項により、各国の規制や制度を決定する権限、権力を

大資本の側が握ってしまう。

単に国家主権が喪われるだけでなく、

国民主権も破壊されてしまうのである。


ところが、メディアがTPPなどの

「負の側面」

を一切伝えない。

単に自由貿易で、外国製品が安く買えるとしか伝えないのだ。

日本が安全で安心して食することのできる農産品を国内で自給することの大切さ

食の安全、安心の大切さ

現在の公的医療保険制度の重要性

環境問題の重要性

労働者の権利を守ることの重要性

を日本の国民に正しく伝えるのがメディアの本来の役割である。


ところが、安倍政権が日本国民の利益ではなく、

ハゲタカ巨大資本=強欲巨大資本の利益だけを追求する政策を提示しているなかで、

日本の御用メディアは、政権の意に反する事実を流布することを

完全に放棄してしまっている。

問題は、最終的に日本国民の良心の問題に帰着する。


「今だけ、金だけ、自分だけ」

の人間が増え過ぎている。

「日本の劣化」

の核心がこの問題だろう。

メディアに関わる人々のなかで、

良心を失わず、権力に媚びずに活動を続けている者が激減している。

人相と心根の歪んだ人物だけが跋扈している。

このことが、紛れもない

「日本の劣化」

なのである。


何よりも大事なことは、権力のトップに立つ人間の

人間力

である。

この人間が地に堕ちてしまったような人物であれば、

日本が浮上する可能性を持つわけがないのである。

日本の未来のために、

一刻も早い政権の刷新が必要不可欠である。

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