★安倍総理こそ日本を代表する「平和ボケ」ー(田中良紹氏)

13日、米軍がアフガニスタン東部に潜伏するIS(イスラム国)に対し、

トンネル施設を標的に大規模爆風爆弾GBU43Bを投下し、

アフガニスタン国防省はISの戦闘員とみられる36人が死亡したと発表した。

大規模爆風爆弾は核兵器以外の通常兵器の中で最大の破壊力を持つと言われ、

イラク戦争時に開発されたが実戦に使われたのはこれが初めてだ。

実験では爆発後に原爆と同じキノコ雲が確認されたという。

米国のトランプ大統領はこの作戦を「成功」と言ったが、

アフガニスタンのカルザイ元大統領はツイッターで、

「これはテロとの戦いではない。新しい危険な兵器の実験場として

我が国を悪用した非人間的で最も残酷な行為」と非難した。

2001年の9・11後に米国は、

オサマ・ビン・ラディン引き渡しを求めてアフガニスタンのタリバン政権と

戦争を始め、その時も新型兵器を次々に投入して米国製兵器ショーを見せつけ

親米政権を誕生させたが、しかし16年後の今も米国はアフガニスタンを

制圧できていない。

だから米国に協力しタリバン政権を打倒して大統領に就任したカルザイ氏の

トランプ批判には重みがある。

何が「成功」なのかをトランプ大統領は分かっていない。

強力な新型兵器を見せつけることに「成功」しても、

それが軍事的成功を意味するわけではないからだ。

ところが日本には米国の新型兵器に目を奪われ、米国の軍事技術力に圧倒され、

米国が後ろ盾になれば日本は安全だと考える妙な「信仰」がある。

これは平和憲法を守っていれば日本は平和でいられると考える「信仰」と全く同じで、

これを「平和ボケ」と言う。

特に米軍の最強爆弾投下は北朝鮮をけん制するのが目的で、

米軍がその気になれば北朝鮮を軍事力で制圧できるかのようなメディア報道を見ると

「平和ボケ」もここに極まれりと思う。

米国が最強爆弾で威嚇すれば北朝鮮はそうはさせない軍事戦略を考えるだけの話で

ある。力の競争には限りがない。

現にアフガニスタンに投下した爆弾を米軍は「すべての爆弾の母親」と呼んで

史上最強と言うが、ロシアにはこれに対抗して「すべての爆弾の父親」と名付けた

爆弾がある。米国の大規模爆風爆弾の4倍の威力を有すると言われる。

北朝鮮はもっと安上がりな核戦力に磨きをかけることになる。

戦争は軍事力ではない。知恵の勝負である。

そして困ったことだが軍事力を盲信する国には知恵を軽視する傾向がある。

その結果、戦争に勝てない。

勝てないとますます軍事力に頼りその強化のため知恵に力が向かわなくなる。

それが今の米国だとフーテンは思っている。

しかし米国が日本と違うのは少なくも「平和ボケ」はしていない。

日本と違って常に戦争をし続けるところに国益を見出しているから

「平和ボケ」する暇がない。

米軍がアフガニスタンに新型爆弾を投下した13日、

安倍総理は参議院外交防衛委員会で

「北朝鮮はサリンをミサイルの弾頭につけて着弾させる能力をすでに保有している

可能性がある」と述べた。

どのような根拠に基づくのかを明らかにしなかったが、

おそらくシリアの化学兵器使用が疑われ、米国がミサイル攻撃を行った後でもあり、

しかも北朝鮮情勢が緊迫しているとメディアが騒いでいるから、

国民に危機感を煽れば森友問題の苦しい現状から目をそらすことが出来ると

思ったのかもしれない。

同じ日に産経新聞は元オウム信者の中川智正死刑囚が

「北朝鮮はオウムを真似た」という記事を掲載した。

世界的な毒物研究の権威であるコロラド州立大学のアントニー・トゥー名誉教授が

講演で語ったというのである。

トゥー氏は現在も中川死刑囚と連絡を取り合っているが、

マレーシアで毒殺された金正男氏について、

VXガスを使ったことのある中川死刑囚は「VXと考えて矛盾はない」と

手記で明らかにしたという。

トゥー氏は「VXを中国人民解放軍は使わないが米陸軍は使う」としたうえで

「北朝鮮の化学兵器はかなり進歩している」と警鐘を鳴らした。

オウムは世界で初めて都市部でサリンを散布し無差別殺人を行ったテロ集団である。

それは世界の軍事史を変える出来事だった。

「平和ボケ」していない米国はそう考える。

そのため連邦議会上院は3日間にわたり「オウム問題」の公聴会を開いた。

議会調査局の調査員をオウムの支部があったロシア、オーストラリアなど

世界各地に派遣して情報を集め、米国のニューヨークにも支部があったことから

FBI,CIAなども議会に証人喚問された。

その問題意識はこれこそが「21世紀の戦争」というものである。

核は使えない兵器である。

核兵器を各国が保有することになれば国家間の戦争は可能性が限りなく小さくなる。

しかしそれに代わって生物化学兵器による戦争の時代が到来する。

しかもこの兵器は国家ではなく個人でも作れる。

それを世界で初めて証明したのが日本のオウム事件なのだ。

だから上院の軍事委員会は最重要課題として取り上げた。

同じ頃、日本の国会でもオウムのサリン事件は取り上げられた。

フーテンは両方の議論を見ていたが、日本の国会は警察庁幹部が

「捜査中につき答弁はできない」との繰り返しで

メディアの報道以上の内容が出てこない。

そのメディアの報道に安全保障上の問題という視点はない。

カルト教団内部の人間関係にしか日本人の興味はなかった。

一方の連邦議会でFBIやCIAに答弁拒否は認められない。

また議会調査局の世界を股に掛けた取材から日本人のフーテンも知らない

オウムの内幕話がどんどん出てきた。

そして米国はこの議会審議をベースに新たな部隊を作る。

海兵隊に所属する「シーバーフ(CBIRF)」と呼ばれる専門部隊である。

「シーバーフ」は生物化学兵器と核兵器の攻撃に対処し、

汚染地域の検知、偵察、死傷者の搬出、除染作業などを行う。

その部隊が初めて汚染現場に出動したのは2011年の福島原発事故である。

150人が米国から日本に派遣されてきた。

しかし何を行ったのか日本のメディアは全く報道しない。

オウム事件から生み出された専門部隊の行動を誰もフォローしていない。

報道されたのは日米同盟を強調する「トモダチ作戦」ばかりである。

そしてフーテンは原発事故発生直後から日本の自衛隊にも同じ専門部隊があるはずだ

と思っていたが、原発に対応する軍事組織のないことが分かった。

3・11はフーテンにこの国の統治構造の脆弱さを再認識させると同時に、

「平和ボケ」の深刻さも思い知らせた。

安倍総理は13日の国会で北朝鮮のサリン攻撃の可能性を語り、

国民の恐怖を煽ったが、ただ恐怖を煽るのは政治家のやることではない。

政治家ならば、だから我々はこういう方法で国民を守ると言わなければならない。

それを言えなければそんな話をする必要もない。

何でもかんでも米国に守って貰おうとする安倍総理こそ

日本を代表する「平和ボケ」だと改めて思った。

Reply · Report Post