★今村復興相激高会見正当化が目的の日経「世論調査」ー(植草一秀氏)

日本経済新聞元経済部長でテレビ東京副社長の池内正人氏は、

2010年9月14日に実施された民主党代表選に関して、

インターネット上のサイト「あらたにす」に、

次のように記述した。

「大新聞が得意の世論調査をやればいい」

「これが国政選挙の場合だったら、この種の世論調査は不可能だ。

選挙法に触れるかもしれない。

しかし一政党内の選挙ならば、規制する法律はないと思う」

2010年9月14日の民主党代表選は小沢一郎氏と菅直人氏による

一騎打ちの代表選で、この選挙で小沢一郎氏が当選していれば、

小沢一郎政権が誕生していた。

日本の歴史の分岐点になった選挙である。

池内氏の主張は、大新聞が得意の世論調査を実施して小沢一郎氏の落選を

誘導するべきだと解釈できるものだった。

池内氏は記事のなかで民主党の小沢一郎氏の出馬について、

「仮に小沢氏あるいは鳩山氏が立候補するとすれば、

重大な問題を引き起こす可能性がある。

この両氏は「政治とカネ」の問題で、民主党の代表と幹事長の職を辞したばかりだ。

もし当選すれば、そのまま総理大臣に選出される。

特に小沢氏の場合は、首相になってしまうと検察審査会の権限も及ばなくなるという。

国民は民主党の規約に口出しはできない。

その間隙を縫って、一国の最高首脳が国民の手が届かないところで誕生する形になる。

これは議会制民主主義の盲点かもしれない。」


池内氏は小沢氏を当選させないために、

「大新聞が得意の世論調査をやればいい」

と述べたと推察される。

これが「大新聞」とされるメディアの最高幹部の主張なのである。

その日本経済新聞が、今村雅弘復興相の激高会見についての「世論調査」を

実施している。

「復興相、怒鳴るべきではなかった? 」

http://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1804348.html

日経の「手口」を鮮明に際立たせる好事例であるので紹介したい。

日経「調査」は次のくだりで始まる。

「第317回は、記者会見で東京電力福島第1原子力発電所の事故を巡る質問をした記者を

怒鳴った今村雅弘復興相に関して、皆さんのご意見をお伺いします。

今村復興相が4日の閣議後の記者会見で、

記者の質問に腹を立て「出て行きなさい」と怒鳴る一幕がありました。

発端は、東日本大震災や福島第1原発事故に伴い全国に自主避難した人らへの住宅の

無償提供が3月末に打ち切られたことについて、

記者が「路頭に迷う家族が出てくる」とした上で、

国の責任を問いただしたことでした。

今村氏は「国がどうこう言うよりも、基本的にはご本人が判断されること」

「福島県が中心になって寄り添ってやっていく方がいいだろう」

「それをしっかりと国としてもサポートする」などと応じました。

この発言に納得しない記者は

「福島県の内実とか、なぜ(自宅に)帰れないのかという実情を、

大臣自身がご存じないからじゃないでしょうか。

それを人のせいにするのは、僕はそれは……」と、たたみかけました。」


紙幅の関係で結論を先に示しておく。

日経調査は、中立を装っているが、細部において事実を不正確に伝えたうえで

調査を行うものである。

これが、大新聞が「得意」の「世論調査」の実態である。

つまり、事実関係の説明において現実を「粉飾」して、

回答を特定の方向に誘導するのである。

上記の部分で言えば、

今村雅弘氏が激高した部分は、

「こんなね、人を誹謗するようなことは許さんよ、絶対」

「うるさい!!!!!」

と発言した部分である。

静かに「出ていきなさい」と言ったわけではない。

また、記者の質問について、上記表記は、

「と、たたみかけました。」

としている。

「たたみかける」の表現に「恣意」が込められている。

つまり、今村復興相の良識ある対応に対して、

記者が良識のない対応を示したために今村復興相が激高することになったとの

「印象操作」

を行っているのである。

以下に、より詳細に、その理由を示すが、

これが日本のマスメディアの実態なのである。

安倍内閣の支持率が5割や6割も存在するはずもなく、

これらの数値はメディアが「創作」、「捏造」しているものであると

断じて間違いはないと言える。


日経新聞の「世論調査」の文言をさらに紹介する。

上記掲載部分に続いて、日経調査は以下のように続ける。

「その後のやり取りは、以下の通りです(復興庁のホームページの会見録から、
一部省略)。

今村復興相(復興相)「人のせいになんかしてないじゃないですか。

誰がそんなことをしたんですか。ご本人が要するにどうするんだということを

言っています」

記者「実際に帰れないから、避難生活をしているわけです」

復興相「帰っている人もいるじゃないですか」

記者「帰っている人ももちろんいます。ただ、帰れない人もいらっしゃいます」

復興相「それはね、帰っている人だっていろんな難しい問題を抱えながらも、

やっぱり帰ってもらってるんですよ」

記者「福島県だけではありません。栃木からも群馬からも避難されています」

「千葉からも避難されています」

「それについては、どう考えていらっしゃるのか」

復興相「それはそれぞれの人が、さっき言ったように判断でやれれば

いいわけであります」

記者「判断ができないんだから、帰れないから避難生活を続けなければいけない。

それは国が責任をとるべきじゃないでしょうか」

復興相「いや、だから、国はそういった方たちに、いろんな形で対応している

じゃないですか。現に帰っている人もいるじゃないですか、

こうやっていろんな問題をね……」


記者「帰れない人はどうなんでしょう」

復興相「どうするって、それは本人の責任でしょう。本人の判断でしょう」

記者「自己責任ですか」

復興相「それは基本はそうだと思いますよ」

記者「そうですか。分かりました。国はそういう姿勢なわけですね。

責任をとらないと」

復興相「だって、そういう一応の線引きをして、そしてこういうルールでのっとって

今まで進んできたわけだから、そこの経過は分かってもらわなきゃいけない」

「だから、それはさっきあなたが言われたように、裁判だ何だでも

そこのところはやればいいじゃない。またやったじゃないですか。

それなりに国の責任もありますねといった。

しかし、現実に問題としては、補償の金額だってご存じのとおりの状況でしょう」

「だから、そこはある程度これらの大災害が起きた後の対応として、

国としてはできるだけのことはやったつもりでありますし、

まだまだ足りないということがあれば、

今言ったように福島県なり一番身近に寄り添う人を中心にして、

そして、国が支援をするという仕組みでこれはやっていきます」

記者「自主避難の人にはお金は出ていません」

復興相「ちょっと待ってください。あなたはどういう意味でこういう、

こうやってやるのか知らないけど、

そういうふうにここは論争の場ではありませんから、後で来てください。

そんなことを言うんなら」

記者「責任を持った回答をしてください」

復興相「責任持ってやってるじゃないですか。何ていう君は無礼なことを言うんだ。

ここは公式の場なんだよ」

こう続いたところで、今村氏は無責任な回答をしたと断定されたことで

「撤回しなさい」と感情的になり、これに対し記者は「撤回しません」と応酬。

最後は今村氏が「出ていきなさい。もう二度と来ないでください」と

声を荒らげたというのが一部始終です。」(引用終わり)


この日経「調査」は、今村雅弘氏が激高した、

一番重要な部分を正確に紹介していない。

正確に紹介しておかずに、

「最後は今村氏が「出ていきなさい。もう二度と来ないでください」と

声を荒らげたというのが一部始終です。」

と締め括っているのである。

「一部始終」

と表現するなら、激高した部分の詳細を示す必要がある。

その部分を示さずに「一部始終」と表現するところに、極めて悪質な欺瞞がある。

今村復興相の「責任持ってやってるじゃないですか。

何ていう君は無礼なことを言うんだ。ここは公式の場なんだよ」

のあとに、実は多くのやり取りが続いている。

この部分こそ、「激高」の直接的な該当部分である。

この部分を紹介せずに、「一部始終」だとして、

激高したことの是非を尋ねているのが、日経の「手口」なのである。

つまり、記者が執拗に質問を繰り返したから、

今村復興相が「出ていきなさい」と発言するのはやむを得ないことだった

のではないか、との

「印象操作」

を行っているのである。


今村復興相「責任持ってやってるじゃないですか。

何ていう君は無礼なことを言うんだ。ここは公式の場なんだよ」

のあとに続くやり取りは以下のものである。

今村「責任もってやっているじゃないですか、君は何て無礼なことを言うんだ!

ここは公式の場なんだよ」

記者「そうです」

今村「だからなんで無責任だと言うんだよ!」

記者「ですからちゃんと…」

今村「撤回しなさい!!!」

記者「撤回しません」

今村「しなさい!出て行きなさい!!もう二度とこないでくださいあなたは!!」

記者「はい、これはちゃんと記述に残してください」

今村「はいどうぞ!こんなね、人を誹謗するようなことは許さんよ、絶対」

記者「避難者を困らせてるのはあなたです」

今村「うるさい!!!!」

記者「路頭に迷わせないでください」


今村氏の激高部分を正確に取り出すと、以下の事実が鮮明に浮かび上がる。

記者は最後の最後まで冷静沈着に質問を続けている。

これに対して、今村氏だけが意味不明の言葉を発して激高しているのである。

この事実を伝えたうえで、今村氏が激高したことの是非を問わなければ、

公正な「調査」にはなりようがない。

自主避難している市民に責任はない。

原発事故は東電と国に責任がある。

市民は純粋な被害者である。

放射能汚染されている現実は厳然と存在し、

その被害を回避するために避難しているのである。

その避難者に対する住宅費補助等の支援を打ち切ったことについて、

記者が質問している。

納得のゆく説明を求めるのは記者としての責務である。

それに答える責任が復興相にはある。

会見の場で、時間的な制約があるなら、その記者に対して、

あとで個別に対応するための時間を確保することを伝えることもできる。

激高する必要はない。


日経「調査」の文章にも微細な細工がある。

日経「調査」は、

「発端は、東日本大震災や福島第1原発事故に伴い全国に自主避難した人らへの

住宅の無償提供が3月末に打ち切られたことについて、」

と表現するが、これも事実関係を正確に表現していない。

正しく表現すれば、

「発端は、東日本大震災や福島第1原発事故に伴い全国に自主避難した人らへの

住宅の無償提供を国が3月末に打ち切ったことについて、」

なのである。

自主避難者に対する支援打ち切りは国の措置であって、

国が関与しない第三者の行為による措置ではないのである。

このような「世論調査」の「創作」によって、

世論を誘導しているのが現実であることを私たちは十分に認識しておく必要がある。

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