★翁長知事は直ちに埋立承認を撤回するべきだー(植草一秀氏)

今日から新しい年度が始まる。

今年度こそ、日本政治の刷新を実現しなければならない。

安倍首相がせっかく

「私や妻が関係していたということになれば、まさにこれは、もう私は総理大臣も、

そりゃもう、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと

申し上げておきたい」

と明言し、

安倍昭恵氏が森友学園の土地取得問題に深く関与しているとの事実が

判明したのであるから、野党は安倍昭恵氏の国会証人喚問を求めて、

安倍昭恵氏に事実関係を質すべきである。

安倍昭恵氏が事実に基づいて証言すれば、

恐らく、安倍首相は辞任せざるを得なくなるだろう。

このような状況が生まれているにもかかわらず、野党の姿勢は極めてあいまいである。

とりわけ野党第一党の民進党の姿勢があいまいである。

この機会に安倍昭恵氏の証人喚問を実現できないなら、

民進党には消滅してもらうほかに道はない。

安倍首相は正々堂々と生きるより、ただひたすら権力の椅子にしがみつくという、

さもしい道を選んでいると見られるから、国会での堂々とした説明など

求めようもない。

このような現実がある以上、

野党が不退転の決意で真相を明らかにしようとしないなら、

目の前に巨大な不正があろうとも、その不正を正すことはできない。

野党の「不作為の罪」は計り知れなく大きい。


森友事案は、安倍首相夫人が深く関与しているということを背景に、

国有財産が著しく低い価格で民間事業者に払い下げられた事案であり、

財政法第9条に反する

法令違反事案である疑いが極めて濃厚である。

国有財産を適正な対価なくして譲渡したのは財務省であり、

財務省の法令違反が厳しく問われなければならない。

そして、この法令違反行為が行われた主因は、

内閣総理大臣夫人の関与にあると考えられる。

政治腐敗、政治私物化の典型事例であり、極めて重大な事案である。

単に8億円の損失が国民に与えられた以上の重大性がある。

これこそが、現代日本政治の歪みそのものなのである。

政治活動の根幹は財政活動である。

財政活動とは予算配分そのものであるが、政治的な利害で予算配分が歪められる。

社会保障支出が冷酷に削減されて、利権支出だけが膨張する。

その理由は、社会保障支出の支出先が与党支持者でなく、

利権支出の支出先が与党支持者であるからだ。

これが政治の私物化、政治腐敗の基本構図である。

森友事案は、首相夫人関与の案件であるから、

財務省が法令を駆使=悪用して森友学園に激安価格で国有地を払い下げたものであり、

財務省の行為が国民に対する「背任」にあたるとの市民の訴えは正鵠を射ている。

この事案を国会が適正に追及できないなら、

国会は存在意義を失っていると言っても過言ではない。


さて、沖縄では、辺野古米軍基地建設が着実に進行している。

辺野古米軍基地建設が着実に進行している主因は、

沖縄県が辺野古米軍基地建設本体工事の事前協議書を受理したためである。

沖縄県の翁長知事は、2014年11月の知事選で当選し、12月に知事に就任した。

翁長知事は知事就任後、直ちに埋立承認の取消に進むべきだった。

国はこれを違法だと訴えるだろう。

法廷闘争を経て、行政権力の番人と化している裁判所が、

国勝訴の判決を示すことは想像に難くない。

最高裁が国勝訴の判断を示したなら、間髪を入れずに、

今度は埋立承認撤回の判断を示す。

これに対しても国が法廷闘争に持ち込むことが想定される。

これも織り込み済みである。

しかし、埋立承認の撤回の根拠が、沖縄県民の判断ということになると、

裁判所といえども、これを否定することは容易ではない。

このようなプロセスで、

「あらゆる手法を駆使して辺野古米軍基地建設を阻止する」

ことが求められてきたわけだが、現実は大きく異なっている。

翁長知事の対応があまりにも遅く、

そのために、辺野古米軍基地建設が着実に、そして大幅に進展してきたのが

現実なのである。

その翁長知事が、ようやく「埋立承認撤回」を改めて明言した。

沖縄の地方紙はこの発言を歓迎しているが、

辺野古米軍基地建設阻止に向けての意思はまったく伝わってこない。

辺野古米軍基地建設を阻止するための最速、

最大の行動が示されてこなかったことに対する冷静な評価が欠けているからである。

ものごとを本当に達成しようとするためには、「本気の対応」が必要不可欠である。

「本気の対応」がなければ、ものごとは成就しない。

単なるパフォーマンスに終わってしまうのだ。


沖縄県の翁長雄志知事は3月25日の「辺野古県民集会」に初めて参加した。

これまで一度も参加していないことが異常である。

この集会で翁長氏は、

「あらゆる手法をもって(埋め立て承認の)撤回を、力強く、必ずやる」

と述べた。

このことを琉球新報は、

「屈しない決意の表明」

として

「高く評価」

した。

この「評価」自体が見当外れである。


「辺野古に基地を造らせない」

ために、何よりも重要な要素は

「時間」

である。

辺野古米軍基地建設の進捗

という現実が、

「辺野古に基地を造らせない」

ことへの最大の障害になる。

「埋立承認撤回」

を決定して、国が法廷闘争に持ち込む。

その際の裁判所判断で、「辺野古に基地を造らせない」側の最大の弱点になることは、

「辺野古米軍基地建設の進捗」

なのである。

実際に工事が進捗してしまうと、裁判所は、

「訴えに利益なし」

の判断を示す。

したがって、

「辺野古に基地を造る」

側の最重要戦術は、

「あらゆる手法を駆使して」

「辺野古米軍基地建設を進捗させる」

ことになる。


翁長沖縄県政は、埋めてて承認取消を2015年10月まで先送りした。

そのために、2015年8月に、辺野古米軍基地建設本体工事着手のために必要な

「事前協議書」

を受理してしまったのである。

これを受理したために、国は辺野古米軍基地建設の本体工事に着手した。

逆に言えば、翁長知事は、事前協議書を受理するまで、

埋立承認取消を先送りしたのだとも言える。


2015年5月に「撤回問題法的検討会」(弁護士・新垣勉氏、沖縄大学長・
仲地博氏ら5人)が翁長氏に提出した「意見書」には以下の通り記載されている。

「アリの一言」さまブログ記事

「翁長知事はなぜ今すぐ「撤回」しないのか」

https://goo.gl/y2zOYt

は「意見書」の要点として次の点を指摘されている。

☆「撤回」とは…「埋立承認後の事由を理由に、埋立承認の効力を消滅させる行政行為」

☆「埋立承認後の事由」とは…「『埋立承認後の事由』には、埋立承認後に就任した
知事(以下、新知事)のなす新たな公益判断も含まれ、新知事は、埋立承認が撤回に
より生じる国の不利益を考慮しても、撤回により生じる沖縄県の公益が高いと
認められるときには、新たな公益判断に基づき、埋立承認を撤回することができる」

☆「公益」とは…「撤回されることにより生じる公益の中核は、新基地建設を断念する
ことにより、辺野古の埋立海域の豊かな自然が保全される利益及び沖縄に長期間に
わたって機能を強化された海兵隊基地が存続しないこととなる利益である。
…沖縄における豊かな自然の多様性を保全することは、沖縄県の諸施策の中核をなす
ものであり、公益判断の重要な柱をなすものである」

☆結論…「沖縄県知事が行う埋立承認の撤回が公益適合性を有すること、撤回以外に
沖縄県民の公益を保全する道がないことは、明白であるから、沖縄県知事が撤回判断をなすことにつき、法的障害は何ら存しない」

「アリの一言」主宰者は、

「つまり、承認後に就任した新知事が、新基地の断念によって沖縄の自然を保全し、

海兵隊基地を存続させないことが県民の利益に合致するという公益判断を行えば、

撤回は法的に可能だ」

と指摘されている。

まさに正論である。


また、翁長雄志氏自身、知事選の過程で、

「撤回は、法的な瑕疵がなくても、その後の新たな事象で撤回するということですが、

知事の埋め立て承認に対して、県民がノーという意思を強く示すことが、

新たな事象になる」(2014年10月21日の知事選政策発表記者会見)

と述べている。

又、知事当選後の県議会でも、

「知事選で示された民意は埋め立て承認を撤回する事由になる」
(2014年12月17日の県議会答弁)

と明言している。

つまり、県知事選で「辺野古に基地を造らせない」という県民の意思が確認された

こと自体が、埋立承認撤回の正当な理由になることを、

翁長雄志知事が明言してきているのである。


繰り返しになるが、翁長知事は知事就任直後に、まずは

「埋立承認取消」

を行い、

これに関する法廷闘争の結果、

国が勝訴するという事態が生じれば、

間髪を入れずに

「埋立承認撤回」

に進むべきであった。

こうすることにより、辺野古米軍基地建設の「進捗」を大幅に遅らせることができる。


辺野古米軍基地建設「進捗」を大幅に遅らせ、

その間に、

政権の刷新を図る。

これが

「辺野古に基地を造らせない」

ための現実的な戦術になる。

この戦術を念頭に置くならば、翁長知事の対応は、むしろ

「辺野古に基地を造らせる」

ことを側面支援するものになってきたことを否定できないものである。


こうした現実を踏まえ、

「辺野古に基地を造らせない」

ことを求める人々は、翁長氏に対して迅速な対応を強く求めるべきである。

事態はすでに、抜き差しならぬ段階に移行していることを

はっきりと認識するべきである。

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