★「トカゲのしっぽ」が反撃に出て「窮鼠猫を噛む」の幕が上がるー(田中良紹氏)

「しっぽ」の反撃が国民の目を問題の本質に向けさせることになるのだろうか。

森友学園の国有地払い下げ問題は「しっぽ切り」の対象とされた籠池理事長が

反撃に出たことで疑惑は膨らむ一方だ。

この問題が国会で取り上げられた時、安倍総理、稲田防衛大臣、財務省、国土交通省、

大阪府知事は揃って普通ではない反応を見せた。

安倍総理は野党の質問に異様なほど気色ばみ、

稲田防衛大臣も否定の仕方が強すぎて尋常ではない。

そして財務省は記録をすべて破棄したと言い、知らぬ存ぜぬを貫き通そうとする。

何かがなければありえない反応で、政権が吹っ飛ぶほどの深刻な問題だと

わざわざ告白しているようなものだった。

であるならば安倍政権はどんな手段を使ってでも

この問題を国民の目から遠ざけようとするだろう。

そのやり口をとくと拝見させてもらい、

そのどこにスキがあるかを見極めようと最初の段階でフーテンは思った。

安倍政権が最初に言い出したのは会計検査院に調査をさせる方針である。

しかしすべての記録を破棄したのだから満足な調査などできるはずはない。

時間を稼いで国民の目から遠ざけうやむやにする手口が丸見えである。

フーテンは行政府ではなく立法府が国政調査権に基き調査を行うのが

一番良いと思ったが、立法府は巨大与党に支配され、

籠池理事長の参考人招致は自公によって拒否され続けた。

その理由が噴飯もので「違法行為が明確でなく民間人だから」というが、

ロッキード事件でもリクルート事件でも

国会は違法行為が明確でない民間人を証人喚問した。

そして検察は国会での偽証を理由に民間人を逮捕した。

ところが今回はできないというのだ。

ただフーテンは籠池理事長を逮捕させれば良いと考えている訳ではない。

検察も警察も官邸の意向通りになる捜査機関だから、

むしろ口封じに利用される可能性がある。

そう思っていると「日本維新の会」が参考人招致に前向きな姿勢を示し始めた。

なるほど「日本維新の会」代表の松井大阪府知事はこの問題の疑惑の本丸にいる。

それを考えると「日本維新の会」が籠池理事長を「しっぽ切り」したいのは分かる。

大阪から籠池理事長に対する刑事告発の声が出てくるのもそうした事情だろう。

一方で安倍政権も「しっぽ切り」をしたい。

鴻池参議院議員が暴露したのはその流れだとフーテンは思う。

悪いのは籠池夫妻で安倍夫妻は被害者という印象操作である。

しかしそれよりもフーテンは安倍政権が籠池氏になにがしかの利益を与え、

その代わりすべての責めを負うことを約束させるとばかり思っていたのだが

その形跡がない。

それどころか籠池氏は思想的に同志である稲田防衛大臣、安倍総理、

松井大阪府知事を批判する動画をネット上に投稿し、

また保守派の人間は誰も助けてくれないと不満を漏らすようになった。

そしてこれまで批判の対象としてきたTBSや作家の菅野完氏らの独占取材に

応ずるようになる。

そして籠池氏は15日午後2時半から外国特派員協会で記者会見することを発表した。

これは籠池氏が安倍政権を相手に揺さぶりをかけ始めたとフーテンは思った。

この問題が外国に大きく報道されれば安倍政権に対する外国の見方が変わる。

しかも安倍総理は来週ドイツ、フランスなど欧州を歴訪する外遊計画があり、

その直前の記者会見は何としても避けてもらいたいはずだ。

そこでなにがしかの譲歩が得られれば記者会見を中止にする。

そう思っていると籠池氏はやはり記者会見延期を申し出たが、

しかし上京して向かった先は菅野完氏のマンションだった。

今や『日本会議の研究』(扶桑社)の著者である菅野完氏が

籠池氏のスポークスマンを務めるようになった。

そこで菅野氏が紹介したのは、

迫田国税庁長官(前財務省理財局長)の単独インタビューを取ってきたメディアに

籠池氏は取材を受けるという内容だった。

つまり今度の問題の張本人は迫田国税庁長官だと籠池氏が言わせているのである。

またもう一人の張本人として小学校の認可を行った松井大阪府知事の名をあげ、

国会で喚問されるべきは民間人の籠池氏より公人である国税庁長官と

大阪府知事であると訴えた。

「トカゲのしっぽ」が「窮鼠猫を噛む」になった。

こうなると稲田防衛大臣の辞任程度では済まない話になってきた。

一方で15日発売の「週刊新潮」は

「文科省に圧力電話する『安倍昭恵』は私人か!」という記事を掲載し、

安倍総理の支援者の息子で遠縁の若者のため昭恵夫人が文科省に圧力をかけ、

若者が主催する会議への後援を依頼、

また地方創生担当大臣賞や総務大臣賞を出すよう働きかけを行った事例が

紹介されている。

一方、安倍総理のブレーンであり「日本教育再生機構」理事長を務める麗澤大学の

八木秀次教授は、安倍総理が総理に返り咲く前に

「日本教育再生機構」の大阪シンポジウムで松井大阪府知事に引き合わせたことが

あり、森友問題はそこから始まったと一部で報道されている。

その八木氏は3月14日の「夕刊フジ」で森友問題を

「有名人との関係を誇示して自分を大きく見せるタイプの人間による喜劇」と

籠池氏を切り捨てた。

八木氏は塚本幼稚園で講演したこともあり籠池夫妻と食事をしたこともあるという。

籠池氏は問題が発覚してから思想信条が近い人間ほど自分に背を向け冷たくなった

ことを痛感し、それが反撃に出る覚悟を固めさせたように思える。

稲田朋美防衛大臣の籠池夫妻に対する憎悪にも近い発言を聞かされると、

近い立場の人間ほど憎しみも倍加するのだなと思わせる。

森友問題は右派陣営内部の愛憎劇をこれでもかと見せつけてくれるようになった。

さてこの先行きがどうなるか、疑惑は横に広がり縦に深まるばかりである。

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