★ やましいことがないなら参考人招致認めるべきー(植草一秀氏)

安倍首相は国会で逆切れ答弁を繰り返している。

「アベ友事案」で厳しい追及を受けて追い込まれている証左である。

問題の本質は、国有地が不当に低い価格で払い下げられたとの疑いである。

財政法第9条は

「国の財産は、適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」

と定めている。

隣接する9492平米の国有地は豊中市が2010年3月に14億円で購入している。

問題になっている土地は豊中市が購入した土地に隣接する8770平米の国有地で、

鑑定評価額が9億5600万円とされた。

この国有地が昨年6月に埋設物撤去費用8億2000万円を控除した1億3400万円で

森友学園に払い下げられた。

しかも、その代金決済は、頭金と10年にわたる10回の分割払いとされた。

森友学園が異例の優遇をされたことは一目瞭然である。

最大の問題は8億2000万円の値引き販売である。

財務省の佐川宣寿理財局長は、学校の開校時期が迫っており、

国が埋設物の撤去費用を控除して払い下げたもので、法的問題がないとしている。

しかし、埋設物撤去費用の控除が過大であるなら、この売却は

「適正な対価での国有資産の譲渡」

ではなく、財政法に抵触する法令違反事案ということになる。


地中に埋設物が存在していただけで、埋設物撤去費用が過大に見積もられ、

これを控除して国有地が払い下げらるなら、

全国の国有地のうち、埋設物が存在する土地に買い手が殺到することになるだろう。

国有地は二束三文の安値で払い下げられ、国および国民は巨大な損失を蒙ることになる。

航空写真による歴史経過検証でも、

当該不動産の地中深くに埋設物が存在すると考えられる箇所は限定的であると推察される。

「航空写真で確認するアベ友事案国有地の深層」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-e2a8.html

「適正な対価での譲渡」

を行い、国が損失を蒙らないようにするには、鑑定評価額で当該国有地を売却し、この売却に際して

「瑕疵担保特約」

を付せばよいだけのことだ。

財務省の佐川宣寿理財局長は、

「国が埋設物撤去費用を控除して迅速に売却していなければ、

森友学園から開校に間に合わないとの理由で、損害賠償の訴訟を起こされるリスクがあった」

と主張するが、この主張にも正当性がない。

そのような訴訟提起を許すような契約を締結したこと自体が財務省の責任であり、

自分の責任を棚の上に置いて、国有地激安払い下げを正当化することは間違っている。


価格交渉を含めて、国と森友学園の交渉に関する経緯は、

財務省文書管理規則

https://goo.gl/MYTJ5F

が定める、

「国有財産の管理及び処分の実施に関する事項」

に該当し、

「国有財産の管理(取得、維持、保存及び運用 をいう。)及び処分の実施に関する重要な経緯」

「③国有財産の管理及び処分(①及び②に掲げるものを除く。)に関する
決裁文書又は管理及び処分に関する重要な実績が記録された文書」

であるから、10年の保存期間が定められている。

財務省は交渉経過を記録した行政文書を開示するべきである。

これを廃棄したとなると、文書管理規則に抵触する疑いも生じる。

国会は国有財産が不当に安い価格が売却された疑いのある事案について、

真相を解明する責務を負っており、

交渉記録を記載した行政文書を財務省が廃棄したと主張する以上、

関係者を参考人として招致して、真相を明らかにする責務を負う。

安倍政権がこれを拒絶するのは、事実の隠蔽以外の何者でもない。

会計検査院が調査することは当然としても、

行政機関の会計検査院が適正な調査を行う可能性は皆無に近い。

財務省の主張をそのまま踏襲するだけのことになることは目に見えている。

だからこそ、安倍首相は当初から「会計検査院の調査」と主張しているのである。

籠池泰典氏が参考人として招致され、

事実をありのままに証言することを安倍首相は心底恐れているのだろう。

野党はすべての審議を拒絶するとの強い姿勢で籠池氏等の参考人招致を求めるべきだ。

野党の姿勢が問われていると言える。


「アベ友事案」の本丸は森友学園ではない。

「加計学園」

という本丸が控えている。

「民営化」



「国家戦略特区」

あるいは

「国有財産払い下げ」

などは、新しいタイプの

「利権」

そのものである。


「かんぽの宿」

不正売却未遂事案を思い起こしていただきたい。

郵政民営化法のなかに、

「かんぽの宿売却の条文」

が潜り込まされていた。

この条文をもとに、かんぽの宿関連79施設が109億円の安値で売却されようとした。

売却先に決定されたのはオリックス不動産であった。

見かけ上は「競争入札」の形態を取ったが、

実態上は、オリックス不動産への売却が当初から目論まれていたものと考えられる。

最終的に残った3社のうち、住友不動産には、別の物件が提供されて、入札事態となった。

もう1社のHMI社に対しては、

同社の主たる入札動機になったと見られる世田谷レクレーション施設が売却対象から外され、

同社も入札を辞退した。

こうして、オリックス不動産への売却が決定されたのである。


鳩山邦夫総務相(当時)が、

「出来レースの疑いがある」

と問題を提起したために、事実が発覚し、オリックス不動産への激安払い下げが阻止されたが、

鳩山総務相による問題提起がなければ、そのまま激安払い下げが実行されていたはずだ。

このケースでも、国は

「売却価格決定が法令に違反するものでない」

と主張したが、不動産鑑定評価額の決定に際して、不動産の時価評価ではなく、

不動産を用いて行われている事業の営業収支等の計数をもとに、

極めて低い鑑定評価額を算出していたのである。


「民営化」

という言葉には、プラスのイメージが存在するが、現実には

「民営化」

という名の下で、巨大な利権漁りが発生している。

国有地の法外に低い価格での払い下げは、もちろん巨大な利権になる。

明治維新以降、長州藩閥を中心にした汚職事案は枚挙に暇がなかった。

山城屋事件

尾去沢銅山事件

など、

枚挙に暇はない。


今回事案の闇を明らかにするには、まずは、

籠池泰典氏を国会に招致し、疑問点を明らかにすることが適正である。

日本の主権者の多くが今回の国有地払い下げに強い疑念を抱いている。

国有財産が不当に低い価格で払い下げられたのなら、これは国民が損害を蒙ったということになる。

主権者である国民が、籠池氏の参考人招致を求めるのは当然のことだ。

このような状況になって、なお、安倍首相が参考人招致に逃げ腰であるのは、

籠池氏が国会に招致されて証言されては、よほど困ることが安倍首相にあるのだと推察せざるを得ない。

このような推察をすると、安倍首相はまた、

「印象操作」

だと逆切れするのだろうが、その逆切れがさらに疑惑を強める原因になっている。

「李下に冠を正さず」

という言葉がある。

主権者の圧倒的多数が求めていると思われる参考人招致を、安倍首相が頑なに拒むなら、

安倍首相に対する疑惑は強まりこそすれ、小さくなることがない。

安倍首相が、

「あらぬ疑いをかけられたくない」

と思うなら、籠池氏の参考人招致を堂々と認めるべきである。

それを拒むから益々疑われるのだ。

やましいことが何もないなら、参考人招致を認めるべきである。

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