★古来から「將を射んと欲すれば馬を射よ」で権力者夫人は狙われるー(田中良紹氏)

「將を射んと欲すればまず馬を射よ」。古来から言われてきた「攻め方」の鉄則である。

敵の大将を屈服させるにはまず大将を支える「周辺から攻めろ」という意味だが、

永田町ではしばしば権力者の妻が馬に例えられてきた。

権力者は寄ってくる者を容易には近づけさせない。近づけさせないから権力者でいられる。

しかも日々闘争に明け暮れるのが権力者だから他人を見る目は厳しい。

普通の人間が権力者と知り合うことも懐に入り込むことも簡単ではない。

しかし権力者の妻はいわば「門前の小僧」で、夫から話を聞かされたり、夫のやることを横で見ているが、

自分が直接やった訳ではないから、見方は表面的で物事の裏表を知る経験に欠けるところがある。

ところが権力者の妻であるから下にも置かぬ扱いを受ける。

様々な人間がひれ伏してくるので自分に力があると実感する。

そのうち自分の貢献で権力の座を掴むことが出来たと錯覚することもある。

権力者を篭絡させようと考える側は権力者の妻を篭絡する方が容易だと考える。

そこで権力者の妻は狙われる。

正確に言うと最も狙われやすいのは妻だが、親兄弟や親せきもターゲットにされる。

相手は甘言を弄して接近し、喜ばせて貸しを作り、それを利用して権力者に取り入っていくのである。

フーテンはこれまでそうした事例を数多く見てきた。そして権力者の失墜につながった例も数多く知っている。

将来の総理候補と目された自民党議員に取り入ろうとしたゴルフ場経営者は、

議員の妻がゴルフを始めたことを知り、自分のゴルフ場のコンペにその妻を招待する。

初めてコースに出た妻はプロに囲まれプレイしてスコアもプロ任せ、

終わってみたらハンデのおかげで優勝した。妻は感激し議員の後援会でそれを語る。

こうしてゴルフ場経営者と議員との関係が生まれ、

議員はその後「政治と金」の問題で議員辞職に追い込まれた。

政界実力者の17歳年下の妻は、先に夫が死ぬと思い、夫に内緒で老後の蓄財に励んだ。

実力者の妻には銀行や証券会社が日参して蓄財方法を教える。

ところが先に妻が死んでしまい、

国税が遺産相続の税務調査に入ったことから実力者の脱税疑惑に発展し、

実力者は逮捕され晩節を汚した。

2日の参議院予算委員会で自由党の山本太郎参議院議員は、

森友学園の国有地払い下げ問題を「巷ではアッキード事件と呼ばれている」と発言した。

「アッキー」こと安倍昭恵夫人と「ロッキード事件」を掛け合わせた表現だが、

安倍昭恵夫人が森友学園の理事長と知り合い名誉校長を引き受けていなければ、

このスキャンダルは起きなかったとの見方である。

まだ真相は不明で疑惑だらけだが、財務省や国土交通省、それに大阪府が示した対応を見ると、

それらにまたがった権力の存在がなければ今度の事件は起きなかったと思わせる。

自民党の鴻池参議院議員が森友学園から口利き依頼があったことを明らかにし、

「週刊文春」には近畿財務局に働きかけしたという人物の記事が出たが、

そんなレベルで動く話ではないとフーテンは思う。

財務省が言う通り「政治家の圧力が一切なかった」という結果になれば、

財務省、国土交通省、大阪府が森友学園に有利な行政行為をしたのは、

安倍昭恵夫人が名誉会長を引き受け、

「主人が賛同している」と公言していた事実が最大要因だったと考えざるを得ない。

総理からの指示はなくとも、夫人が力を入れている案件だから何とかしようと官僚が考える可能性はある。

『文芸春秋』3月号の「安倍昭恵『家庭内野党』の真実」を読むと、

昭恵夫人の行動に最も大きな影響を与えたのは「スピリチュアル・マスター」と自称した故・江本勝氏だという。

それが昭恵夫人を神道的な世界に目を開かせ、

「反原発」、「反防潮堤」、「大麻擁護」などを主張させているという。

フーテンは新党改革から立候補した高樹沙耶候補が「医療用大麻解禁」を訴えた時点で

安倍昭恵夫人の影響を感じていた。

新党改革を率いていた荒井広幸代表は安倍総理と親密な関係で知られている。

福島県選出議員であることから「反原発」の立場を取り、また「医療用大麻解禁」を訴えていた。

昭恵夫人と近い思想を持っていた。

厚生省の麻薬取締局が高樹沙耶を逮捕し、

また鳥取県や長野県でも大麻を栽培していた若者たちが次々に逮捕されたのは、

総理夫人が「大麻解禁」を叫ぶことに当局が神経をとがらせ、

安倍総理に警告を発しているのではないかと思ったりした。

しかし本人は自らの思想を安倍総理と同じ「日本を取り戻す」思想だと考えて揺らぎがないという。

G7サミットを伊勢神宮のある三重県でやるよう安倍総理に提言し、

男系天皇の維持にこだわっているのも昭恵夫人だという。

だから日本初の神道系小学校「瑞穂の國記念小学院」の建設に協力し、

名誉校長に就任することになった。

その基には「スピリチュアル」な世界に対する信仰があるのである。

「スピリチュアル」な世界を信仰したファースト・レディにレーガン大統領夫人ナンシー・レーガンがいる。

彼女は占星術に傾倒し、星占いで大統領の行動を決めるようになり、

それが大統領の日程を混乱させ、大統領補佐官がナンシー夫人と対立して辞職する騒ぎになった。

キリスト教は「スピリチュアル」な信仰を認めない。

フーテンの記憶では大統領夫人が「スピリチュアル」な世界に傾倒することに

当時のアメリカは否定的だったと思う。

今回の森友学園の問題はまだ全容が分からないので断定はできないが、

夫と同じ目的である「日本を取り戻す」ため、「スピリチュアル」な信仰に傾倒した昭恵夫人と、

その信仰にぴったり合う教育を行っていた森友学園とが、

総理辞任という安倍夫妻にとっては「どん底」の時期に出会ったことからすべては始まった。

安倍総理は昭恵夫人を「私人」だとして責任追及を逃れ、

また名誉校長を無理やり押し付けられたかのように言って被害者の顔をするが、

選挙で選ばれ権力闘争を戦って権力者に上り詰めた人間と、

選挙で選ばれたわけでも権力闘争に勝利したわけでもないその妻とはおのずと立場が異なる。

妻の言うことを信じてそれに影響されてしまう権力者は墓穴を掘る。

それが古来からの鉄則であることを安倍総理は思い起こす必要があるのではないか。

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