★北朝鮮の金正男暗殺に思う(国交断絶は必至だ)-(天木直人氏)

きのうの夜にテレ朝から今度の北朝鮮の金正男暗殺事件に関して電話取材を受けた。

 一つはマレーシアが北朝鮮大使館員に逮捕状を出したが、

外交特権との関係でマレーシアはこの外交官を逮捕できるか、であり、

二つはVXを巧妙に隠して持ち込んだとされるが、これを事前に開封して阻止できるか、である。

 私は要旨次のように答えた。

 いずれも外交特権の関係で出来ない、本来は外交上の目的で認められる外交特権であるが

濫用されることがあり、濫用は外交信義上やってはいけないが現実には防げない、

今回の場合はVXを使用した究極の犯罪であり、本来の外交特権の枠外ではあるが、

北朝鮮がここまで強硬に疑惑を否定している以上、

マレーシアが強行手段に訴えれば北朝鮮とマレーシアの国交断絶は避けられない、そう答えた。

 果たしてどこまで今朝のテレ朝が報じるかわからないが、私はあえてその場で言及しなかった事がある。

 それは、国交断絶に自らを追い込んだマレーシアの外交的対応のまずさである。

 どこがまずかったのか。

 それは今回の暗殺事件について、

マレーシア政府がはじめからあまりにも詳しくその捜査情報を逐一公開したことだ。

 金正男暗殺、しかも毒殺という衝撃的なニュースだからメディアは飛びつき、

マレーシア政府としても説明責任を果たさざるを得ない面はあっただろう。

 それでも外交的観点から、その説明は慎重、周到であるべきだった。

 いくら金正恩の北朝鮮が独裁国家、テロ支援国家と言えども、

ここまで世界に悪者扱いされては反発するしかない。

 いやしくもマレーシアは北朝鮮と長年にわたって国交を維持してきた国だ。

 すべてを公開する前に、北朝鮮との水面下の外交交渉があってしかるべきだ。

 それとも、あらゆる交渉を重ねた結果、北朝鮮の対応があまりにも不合理だったから、

その一部始終を発表せざるを得なかったということなのか。

 いずれにしても、ここまでくればマレーシアは北朝鮮と外交関係断絶に行き着くしかない。

 そして外交断絶は、戦争でもしないかぎり限り、やはり外交的失敗である。

 ここまで来てもし北朝鮮とマレーシアが国交断絶しないなら、

北朝鮮とマレーシアの外交合戦は北朝鮮の勝ちになる。

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