★「隠蔽」と言われて気色ばみ逆に「隠蔽工作」を感じさせた安倍総理-(田中良紹氏)

24日の衆議院予算委員会で、

安倍総理は夫人が名誉会長を務めていた小学校のホームページから夫人の「ごあいさつ」が

削除されたことについて、野党議員が「隠蔽」という言葉を使ったことに気色ばみ、

声を荒げて謝罪と撤回を求めた。

人間が気色ばむのは痛いところを突かれた時に多い。

総理の対応にフーテンは国民の疑惑はますます深まるだろうと思った。

痛いところがなければ「ごあいさつ」を削除する必要も、「隠蔽」という言葉に気色ばむ必要もない。

そしてこの日の審議は、先週から今週にかけて「ある種の隠蔽工作」が施されたことを思わせた。

先週の委員会で民進党の福島伸享議員が問題にしたのは3点ある。

第一が国有地払い下げに関する疑惑。第二が小学校認可に関わる疑惑。

第三に安倍総理夫人が名誉会長となり、安倍総理の名前が使われて寄付が募られた疑惑である。

第一の疑惑は不動産鑑定士が9億5千6百万円と鑑定した国有地を学校法人森友学園はごみの処理費用に

8億円余かかるとして1億3千4百万円で購入し、財務省はその金額を非公開にしていた。

売却に関わったのは近畿財務局と大阪交通局だが、

先週の審議で財務省はあいまいな答弁を繰り返すだけだった。

第二の疑惑はその土地に建てられる予定の小学校が大阪府の認可基準を満たしていないにもかかわらず

2年前に認可されたという事実である。これに対する文科省の答弁も要領を得ないものだった。

そして第三の疑惑について安倍総理は、昭恵夫人が名誉会長を務めている事実を認め、

「妻から森友学園の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」と述べ、

「払い下げや認可に妻も私も事務所も一切関わっていない。もし関わっているなら総理大臣を辞める」と断言した。

本人は「強い否定」を示し問題に終止符を打とうとしたのだと思う。

それまでメディアでこの問題を報道していたのは朝日新聞だけで、他のメディアはさほど注目をしていなかった。

金正男暗殺のニュースが大きかったし、国内政治でも南スーダンに派遣された陸上自衛隊の「日報」の

「隠蔽問題」に焦点が当てられていた。

しかし安倍総理の「総理を辞める」発言がメディアの目を振り向かせる効果を生んだとフーテンは思う。

週明けの20日に森友学園の理事長がTBSラジオに電話出演したことも注目度を上げ。

テレビも相次いで理事長の発言を取り上げるようになった。

それによって安倍総理と理事長の共通項として右翼組織「日本会議」の存在が浮かび上がり、

国有地払い下げや学校の認可だけでなく、憲法改正やヘイトスピーチが絡む問題に拡大し、

政府としては「ある種の隠蔽工作」をする必要に迫られた。

これまでの報道からフーテンが見る問題の構図は次のようなものである。

安倍総理の発言から理事長との関係は第一次政権の総理を辞めた頃からであることがわかる。

自身の最もつらい時期に愛国教育で有名な幼稚園の経営者である理事長が

「安倍晋三」を冠した小学校の建設を安倍氏に働きかけ、昭恵夫人も共鳴して交流が始まった。

安倍総理は第二次政権で総理に復帰するまで「安倍晋三記念小学校」の建設を拒否してはいない。

一方で小学校建設を認可するのは大阪府知事だが、松井一郎大阪府知事は

就任直後の2012年4月に認可基準を緩和して森友学園が小学校を設立することを可能にした。

この認可基準緩和は、その後の申請者が森友学園以外にないことから森友学園のためだという指摘もある。

その年の12月に自民党が政権を奪還し第二次安倍政権が誕生する。

安倍氏は現職総理の名を小学校に冠することは不適切と考えるが、

しかし家族ぐるみの交流は続き、昭恵夫人が小学校の名誉会長になることを了承する。

総理退陣後には「安倍晋三記念小学校」となる含みがあったとみられる。

安倍政権誕生直後、2013年4月に森友学園は国有地取得に乗り出す。当初は賃貸契約である。

そして翌14年10月に大阪府に対し小学校の認可申請を行い、

15年1月に大阪府から「認可適当」の答申を受ける。

すると16年3月に近畿財務局に国有地の購入を申請し、6月に随意契約で格安の土地を購入するのである。

共通の思想を持った安倍総理と松井大阪府知事と森友学園理事長の構図が明らかになってくると、

先週は理事長を「自分の考えに共鳴してくれる」と同志的存在であることを認めていた安倍総理が

24日の委員会で答弁を一転させた。

昭恵夫人が名誉校長になったのも無理矢理だったと言い出し、

自分の名前を冠した小学校についても「不適切でありえない」と全否定する。

そこにフーテンは「ある種の隠蔽工作」を感じた。

まず安倍総理と夫人をこの問題から切り離し、財務省や国土交通省にあいまい答弁をさせ、

会計検査院の調査というふれ込みで時間を稼ぎ、あいまいなまま終わらせるのである。

しかし共産党議員の質問で森友学園と近畿財務局との交渉記録は破棄されたことが明らかにされた。

会計検査院の調査を待っていても意味はないのである。

すべての関係者を国会に呼んで国政調査権に基づく調査を行うしか方法はない。

それを野党がやり切れるかどうかである。

そして問題の構図を見れば安倍総理が直接に関わっていなくとも、

日本維新の会を率いる松井大阪府知事がこの問題に深く関わっていること、

日本維新の会は憲法改正の目玉として幼児教育からの教育費の無償化を掲げていること、

また私学支援に力を入れていることなどがあり、

一方で大阪交通局を監督する国土交通省は公明党議員の閣僚指定席である。

安倍総理は24日の委員会で「自分と妻と事務所は一切関係がない」と答弁したが、

政治家の関与について問われると、誰か他の者に答弁させようという仕草をしながら口ごもり、

「私にわかるわけはない」と否定をしなかった。

場合によってはトカゲのしっぽ切りを想定しているのかもしれない。

その後に夫人の「ごあいさつ」がホームページから消えたことを、

野党議員が「一瞬隠蔽かと思った」と発言したことに敏感に反応し、

気色ばんで謝罪と撤回を求めたのである。その異様な反応に見ているこちらも驚いたが、

この問題は自民党内の力学や今後の政局に思っている以上の影響を与える可能性がある。

「ある種の隠蔽工作」は始まったばかりだから変幻万化する。

どう着地させるかは誰も予想がつかないだけにこの問題の先行きは大注目である。

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