★「火に油」になった安倍小学校疑惑での首相答弁-(植草一秀氏)

「私や妻がですね、この認可あるいはこの国有地払い下げにですね、

もちろん事務所を含めて一切関わってはいないことを明確にさせていただきたい。

もし関わっていたらそれはもう、私が総理大臣を辞めるということですから、それははっきりと申し上げたい」

安倍晋三首相は国会答弁でこう述べた。

「認可あるいは国有地払い下げに関わっていたら、私が総理大臣を辞めるということです」

と述べている。

この答弁から読み取れる安倍首相の判断は以下の二つである。

「認可や国有地払い下げに関わることは総理大臣を辞めるに値する事由である」

「私や妻は認可や国有地払い下げに一切関わっていない」

安倍首相は「認可や国有地払い下げ」には関わっていないが、当該学校法人には深く関わっている。

安倍昭恵氏が学校法人森友学園が新設する予定の「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長に就任しており、

安倍首相は国会答弁で、

「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」

と答弁している。

その、安倍首相が「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしい」と述べた

森友学園が運営する塚本幼稚園の園長である籠池泰典氏は、

公式サイトに上に

「インターネット上での当園に対する誹謗・中傷記事について」

と題する記事を掲載。

「昨今、インターネット上で、当園に対する不当な誹謗・中傷記事が書かれたブログが立ち上げられ、

園及び保護者に対する悪口や嘘が投稿されております。

これらの内容は全くの事実無根であり、保護者間の分裂を図り、当園の教育活動を著しく害するものです。

専門機関による調査の結果、

投稿者は、巧妙に潜り込んだ韓国・中華人民共和国人等の元不良保護者であることがわかりました。」

などと記述していた。


国は2010年に今回問題になっている土地の東側にある国有地(9492平方メートル)を、

公共随契により約14億2300万円で豊中市に売却している。

そして、2011年に今回問題になっている土地(当時は国有地)の取得希望を国に伝えていた

別の学校法人は、2012年4月に国交省から「大量の埋設物がある」と知らされた。

その学校法人は地下埋設物撤去費の見積もりをゼネコンに依頼し、

7億~8億円だった購入希望額を、

地下埋設物撤去費として約2億5千万円を控除した約5億8千万円に引き下げたが財務局から低いと指摘され、

購入を断念したと伝えられている。

その後に名乗りを上げたのが森友学園である。

森友学園は2015年5月29日、

近畿財務局との間で当該土地の買受け特約を付した有償貸付契約を締結した。

月額賃料は227万5000円だった。

国有財産は払い下げが基本だが、公用や公共の用に供する場合、

将来の買受けが確実ならば貸し付けとすることができる。

森友学園は純資産が4億2000万円しかなく、

10億円以上の小学校校舎建設費用を賄えないため、

経営が安定するまで貸し付けで利用したい旨の申し出があったという。

この契約では、森友学園が売買予約完結権を10年後に行使する場合、

10年間賃料総額2億7300万円支払ったうえで、土地代金(更地として評価額)を支払うことになる。

森友学園側は2015年7月29日から12月15日まで土壌改良、埋設物撤去工事等を実施した。

このための費用1億3176万円は国から森友学園に支払われている。

事態が急変したのは2016年3月のこと。

2016年3月11日に、小学校建設工事現場の地中深くから新たに廃材やプラスチック、

家庭ごみなどが見つかった。

3月14日には近畿財務局、大阪航空局、現地関係者が現場を視察している。

そして、その直後の3月30日に森友学園が財務局に土地購入を申し入れた。

財務局は不動産鑑定評価額(更地価格)である9億5600万円から、

地下埋設物撤去及び処理費用として8億1974万円を控除し、1億3400万円で当該国有地を払い下げた。

しかも、この1億3400万円は2016年5月から2017年5月までの分割払いをされたのである。

当初契約の賃料は年額2730万円だったが、新たな購入代金は年額1120万円に半減している。

そして、最大の問題は、地下埋設物撤去及び処理費用として計上された8億1974万円が

実際に地下埋設物撤去及び処理費用として支払われていない疑いが浮上していることである。

安倍晋三氏は国会答弁で、内容を精査することなく、

「国有地払い下げと学校認可に関わっていたなら総理を辞任する」

と即座に断言した。

このことは、安倍首相が、この「国有地払い下げと学校認可」が

「首相辞任に値する重大問題事案」であることを明確に認識していることを示唆している。

テレビは清水富美加事案や金正男事案ではなく、豊中国有地激安払下げ事案を徹底報道するべきである。

土壌汚染の東西両横綱事案として、東の豊洲と西の豊中をセットで集中報道するべきだ。


2016年3月の工事中に、地下深くから埋設物が発見され、森友学園は突如、

当該不動産の購入の意思を財務局に伝えた。

財務局は9億6000万円の土地から地下埋設物撤去費用8億2000万円を差し引いて

1億3400万円で当該不動産を森友学園に払い下げた。

しかし、地下埋設物撤去費用として8億2000万円が実際に支払われたのかどうかを確認していない。

衆議院予算委員会で質問した民進党の福島のぶゆき議員は、

ゴミと共に搬出した土の量は1万110平米になり、

これを搬出して新しい土に入れ替えるためには約4千台のダンプカーの往来が

必要になるとの試算数値を示した。


現地を取材した田中龍作氏は、近隣住民が

「見たことがない」

「覚えていない」

と異口同音に答えたと伝えている。

http://blogos.com/article/210844/

また、

「学校を見下ろすマンションに住む主婦は、建設工事が気になるので、ずっと観察していたという。

「9mも掘っていない。大きな石ころを2つ運び出しただけ」ときっぱり」

と伝えている。

国有財産が8億円も安く売却されたとなると、これは実質的な「公金横領」である。

2016年3月の地下埋設物発見から、

埋設物撤去費用控除による国有地激安払い下げの経緯と、

その後の地下埋設物撤去関連事実の事実確認が急務である。


他方、小学校設置認可の疑惑も解明しなければならない。

大阪府下の小学校の設置認可権限は大阪府にある。

大阪府私立学校審議会は2014年12月18日の定例会で

「申請内容等において確認すべき点があるため、継続案件とする。臨時の審議会で審議する」

と議論繰り延べを決めた。

そして、翌2015年1月27日の臨時会で以下の条件を付して答申を示した。

http://toyokeizai.net/articles/-/159289?page=3

・申請者には財務・会計状況やカリキュラム、または校舎建設など小学校設置までのプロセスを

さらに明らかにしていただくとともに、今後の本審議会において、その内容を事務局から必ず報告をいただくこと。

・カリキュラムについては小学校の学びが充実されるようさらに内容を詰めていただきたい。

・私立学校には特色ある教育が求められる側面があるが、
 懸念のある点については本審議会が今後も確認を進めるべき。


「財務・会計状況」

「カリキュラム」

に問題があり、

「懸念のある点」

が存在することが示唆されている。

興味深いのは、産経新聞が、森友学園による「瑞穂の國記念小學院」に関する

「提灯記事」

と呼ぶべき記事を掲載した日付が

2015年1月8日であることだ。

産経WEST2015年1月8日記事

「安倍首相夫人・アッキーも感涙
 …園児に教育勅語教える“愛国”幼稚園
「卒園後、子供たちが潰される」と小学校も運営へ」

http://www.sankei.com/west/news/150108/wst1501080001-n1.html


記事には次のような記述がある。

「「教育勅語」や「五箇条の御誓文」の朗唱、伊勢神宮への参拝・宿泊…。

大阪市淀川区に超ユニークな教育を園児に施している幼稚園がある。

塚本幼稚園幼児教育学園。

安倍晋三首相夫人が同園を訪れたとき、園児らのかわいらしくもりりしい姿を見て、感涙にむせんだという。」

「「夫婦相和し、朋友相信じ、恭倹(きょうけん)己を持(じ)し、博愛衆に及ぼし、学を修め、業を習ひ…」。

園庭に2~5歳の園児約150人の大きな声が響く。

教育勅語(正式には「教育ニ関スル勅語」)は、明治23(1890)年に発布され、

第2次世界大戦前の日本政府の教育方針の根幹となった文書。

あどけない幼児が大きく口をあけ、難しい言葉を朗唱する姿を初めて見た人は一様に驚き、感動する。

安倍首相の昭恵夫人もそのひとりだ。」

「籠池園長は現在、大阪府豊中市に私立小学校「瑞穂の國記念小學院」の建設を進めている。

開校は平成29年4月を予定。目指すのは「礼節を尊び、愛国心と誇りを育てる」教育だ。

新設する小学校は木造2階(一部3階)建て。

敷地面積は約8700平方メートルで、教室にはそれぞれ6・6平方メートルの畳敷きのバルコニーを設ける。」


安倍首相が「総理大臣を辞めるということ」だと断言した重大性を有する事案である。

安倍首相の国会答弁は「火消し」答弁ではなく、「火に油を注ぐ」答弁である。

国会における徹底的な真相解明が必要不可欠である。

国会とメディアがこの問題を適正に取り扱わないなら、そのような国会とメディアに存在意義はなくなる。

正しい国会とメディアを創設しなければならなくなる。

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