realismo_1978

S.Iwata · @realismo_1978

14th Feb 2017 from TwitLonger

いわゆる「自由出家」について鎌倉幕府追加法から


『鎌倉遺文』第5965号
仁治2年(1241)11月17日「関東評定事書」(『新編追加』)

  不蒙御免許、企遁世後、猶知行所領事、〈仁治二十一 十七〉
右、或及老耄、或依病患、以所領所職、譲与子孫、給身暇企
遁世者、普通之法也、而未及老年、無指病悩、不蒙御免、無
左右令出家、猶知行所領事、甚自由之所行也、自今以後、如
此之輩、処于不忠之科、可被召所領也、但兼日以子孫并養子
為代官、於致奉公者、不及子細歟、為遁世、俄称養子、至令
吹挙者、不能敍用、兼又乍浴関東之御恩、居住京都并他所、
不致官仕者、同以不可領知其所、抑本自祇候京都之輩、預関
東之御恩者、非沙汰之限、

・通常の出家(遁世)は、年齢や病気の問題によって自身は身を引いて、所領・所職を子孫に譲与すること。
・ところが、老齢でもなく大した病気もないのに、許可なくただちに出家し、しかも所領はなお保持し続けることは「自由之所行」である。この場合の「自由」は「じゆ」とでも読ませたうえで、わがまま、勝手に、といった意味で取るべきでしょう。また、許可のない出家そのものが「自由」だというよりも、許可なく出家を遂げた上でなお所領を保持し続けていることに注意が向けられているといえるでしょう。
・「無左右令出家、猶知行所領」するような者は不忠の罪に問われて所領を没収される。ただしその場合にも、子孫や養子を代官として奉公させていれば、罪には問わない。
・しかし、遁世するといって急に養子を取りたいと申請しても受け付けられない。
・「兼又乍浴関東之御恩、居住京都并他所、不致官仕者、同以不可領知其所」というのは、後に続く「抑本自祇候京都之輩、預関東之御恩者、非沙汰之限」との組み合わせで、出家(遁世)したいという人物の後継者について、幕府側が定めた条件とみられる。すなわち、たとえ幕府から所領を与えられて(安堵されて)いるのみならず、さまざまな御家人役を務めている者でなければいけない、ということ。
 もともと、幕府御家人の所領(「武家領」)は大番役をはじめとする軍役を果たすための経済基盤であると認識されているため、そこを知行する者も軍役を勤め上げることのできる人物(=「器量」を備えた人)であることが求められた。婚姻や相続、あるいは一時的なきっかけで幕府から所領を与えられた(安堵された)という名ばかりの御家人ではなく、継続的に軍役を勤め上げることができる武士としての御家人が知行すべきである、ということ。

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